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47話 圧倒

「先ほどの炎よりも高出力の魔法(こいつ)で死ね!」

「・・・」


 そう言いながら杖を掲げ、宣言通りさらに巨大な火球を作り出そうとする、が。


「ぐべっ!?」


 一足で距離をゼロにし顔面を掴んで後頭部から地面へと叩きつける。

 死んではいないだろうが嫌な感触がガントレット越しに伝わる。

 それは、半ば八つ当たりみたいなものだった。


「殺しはしない、主義じゃないからな」


 まず一人を沈め、残った連中を睨みつけながら立ち上がる。


「っ! 全員で一斉にかかるんだ!魔力を高めろ!」


 どうやら残りの十人程度の奴らも全員魔法使い職らしく。


「ぐばっ!」

「がほっ!?」


 呑気に魔法が発動するまで突っ立っていたので隊列順に前の奴らから殴り倒す。

 すると。


「「「切り裂け!スラスト!」」」


 複数の術者によって不可視の風の刃が放たれる。


 だがそんなものは―――


「見えなくても、それが攻撃なら避けられる」


 お決まりの『洞察眼』で、放たれた風の刃が俺のどの部位を切り裂こうと狙いを付けたか容易に予測できる。

 そして『直感反応』は迫りくる魔法にも反応してくれることが分かった。


 退かず留まらず、風の隙間を掻い潜り、その術者たち三人の杖と体に斬撃を与える。



「・・・」



 杖は両断。

 身体には致命傷は避け、かつ確実に行動不能になるよう『弱点直観』を使い最適部位を剣先で切り裂く。

 はじめて人間の肉体に刃を立てるその手応えは。

 ゴブリンとの初戦闘の時と同じように、大した感慨も嫌悪も後悔も無かった。


 その精神の在り方にも、俺自身何も思う事はない。


「つ、突き上げろ!ストーンゲイザー!」

「射貫け!ウッドアロー!」


 隆起した岩の槍を魔鉄の拳と腕力で砕き。

 迫る木の矢は剣で叩き落とし。


「「「「降らせ!ライトニング!」」」」


 踏み込む足は地に沈み。

 蹴り出すそれは土をえぐり。

 駆ける脚は奴らの認識などに捕らわれることなどなく。


 降り注ぎ、大地を砕き爆ぜさせる数多の雷光さえ、()()()()にする―――



「【剣聖(けんせい)】スキル―――」



 達した超速。

 奴らが自ら発した稲光に、瞼を一瞬開閉させる瞬きという名の極小の綻びを。



「『瞬動必斬(オキザリノタチ)』」



 一閃のもと斬り抜ける。


 レベルアップの恩恵か、以前使った時よりは幾分マシな負荷を体に感じつつ。

 背後では意識を刈られ倒れこむ複数の気配。


 一太刀で全てを切り伏せた。


「・・・残るはお前だけだ」

「ひ、ひぃっ!?」


 一人を残して。


「質問に答えろ。そのためにお前だけ斬らなかったんだ」

「し、質問・・・?」

「答えれば命は助ける。他の連中も死んではいない。けど、答えなければお前は殺す」


 スキルの『合わせ技』は加減が難しい。

 普通に斬撃をもってして振り抜いていたら、人間の体なんて真っ二つに斬ってしまっていたことだろう。

 直前に剣を鞘に納め、その状態で剣撃を与えた最大限の手加減だ。


 ・・・手加減なんてできない、なんて言っておきながら我ながら甘いことだ。

 結局最初から最後まで手加減しているじゃないか。


「まず最初の質問だ、さっき『ダンジョン攻略』だの『先遣の捜索隊』がどうの言っていたが、どういうことだ」

「・・・言葉通りの意味だ。そんな力を持っているならお前も存在は知っているだろ、この公園にてその入り口が確認された、そのダンジョンを攻略するべく先遣隊の部隊と合流し作戦を開始する手筈だ」


 先遣隊・・・


「その先遣隊ってのは、他の役割は与えられていなかったのか?」

「・・・我らの『施設』から脱走した、『希少検体(きしょうけんたい)』の捜索が本来の目的だったと聞く」

「その『希少検体』ってのは何だ?」

「『人間』ではない異種族・・・『ハーフエルフ』の女だ」


 確定だ。


 こいつらは唯火を攫ったあいつらと同じ組織のようなものに属している。

 そしてその先遣隊は俺がすべて戦闘不能にした、殺してはいないからそのうち目覚めるだろうけど。


「その施設とやらに『ハーフエルフ』を囲ってお前らは何をしている?」

「・・・」


 重要な情報なのか急にだんまりを決め込んでしまう。

 その反応に、感情を表に出さないまま剣に手をかけると。


「っわ、わかった!話す!でも俺みたいな一隊員は細かいことまでは知らされていないんだ・・・」

「それで構わない、話せ」

「・・・半年前、世界中が人間が声を聞き、変わった。そん時に、極少数の人間が『異種族』・・・つまり()()()()()()()()()

「・・・」


 胸に突っかかりを覚える言い回しだ。


「そいつらは、俺たち『人間』とは異なった様々な特性を持ち合わせているらしい・・・そいつに目を付けた上の連中が、『我が国にとって有益な存在』と睨んで利用しようとしている、らしい・・・何がどう役に立って利用するのかは知らないが」


 全ては国益のため、そう言って話を切った。


(やっぱり、唯火の『種族』が関係していたか・・・)


 こいつの話を信じるなら、種族が変化した人たちはかなり少ないらしい。

 なら、その扱いもそれなりに丁重・・・と今のところは思いたい。

 もっとも、彼女がそこから逃げ出したくなる何かがあるのは事実だが。


「・・・なるほどな。わかった・・・お前に仕事を全うさせてやる。その『施設』だか何だかの元締めの所に帰って公園での状況を報告しろ」

「?」

「先遣隊全て一人の男の手によって戦闘不能。同人物によって後続の自分たちも壊滅状態・・・そして、目標のダンジョンは既にその男によって攻略されている、と」

「!? 何をバカな!先遣隊はレベル30越えの20名の精鋭で構成されているんだぞ!?挙句、ダンジョンを攻略しただと!?それこそ我々のような規模の編成でパーティーを組まなければ、いや、それでも困難なんだ。出鱈目をぬかすな!」


 ぺらぺらと聞きもしない情報をしゃべる。


「関係、ないんだよ」

「・・・は?」

「お前らの組織の規模だのダンジョンがどうだの・・・そんな問答する段階じゃないんだよ、もう」


 さんざん踏み散らかしたんだ、俺の中の一線を。

 公園の皆を殺そうとした。

 唯火を攫った。

 そして、それを許した自分への怒りが、

 いい加減腹の中で爆発しそうなんだ。


 身体の痛みも忘れるほどに。


「ひっ・・・!」


 胸ぐらをつかみ立たせると。


「走れ。そして伝えろ、殺し損ねた男に邪魔されたと」


 投げ捨てるように解放すると、乱れた足取りで森の中へと走り去っていく。


「こんだけ発破かければ一度元締めの所に帰るだろ」


 となれば、『隠密』で悟られないように後を追うだけ。

 きっとその先に唯火がいる。



「・・・皆。説明している暇はない、俺は行く。カタを付けたら一度戻るから・・・それまでこいつらの目が覚めても身動きできないようにしてくれ」


 一度こっちに牙をむけた魔法使い職の連中と、失念していたが先遣隊の連中。

 この場に置いていく以上ここではいさようならというわけにもいかない。

 もう戻らないつもりでいたが事が事だ。


(片付くまで、こいつらの拘束は公園の皆に頼るしかない・・・)


 突然の襲撃者、目の前で繰り広げられた大立ち回り。

 皆呆気にとられた様子で俺を見ていた。


「に、兄さん・・・」


 あまりに手短な頼みに我ながら薄情だとは思うが、ゆっくりしていて見失ってもつまらない。

 俺を呼ぶその声に応えることなく、今度こそ公園を後にした。






「やれやれ、詰めが甘いね()()()・・・そんなんじゃ守れないよ。世話が焼けるねぇ」


 森に潜み、戦いの行方を一人窺っていた老人の陰に、


 気づくものは居なかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 国営に関わる人間が容赦無くホームレス焼き殺そうとするの治安どころか公共倫理観世紀末すぎる……やべぇ……
[一言] 殺せよ
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