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35話 守る背中に託す声

 地上で、衰弱した唯火(ゆいか)を追い詰め。

 俺が初めて相対した『名持(ネームド)』。


 配下を的確に、知略を巡らせ、俺自身もまた追い詰められ、それをきっかけに戦う意思を見つめなおすきっかけとなった戦い。


 斬り捨て、俺自身の糧としたはずのモンスター。



「ソウ、我ガ名ハ。()()()()



 どういうことだ……

『王』が出現してしまったという事だけでも想定外なのに。


 目の前に立つ圧倒的存在感の『ゴブリンキング』。

 そいつの名は、かつて俺が下したはずのモンスター……


「ナ、ナナシさん……ゴレイドって、もしかして……」

「ああ、唯火を襲っていた『ゴブリンジェネラル(あいつ)』と同じ名だ」


「ジェネラル……ソウ、ワレハ()()()()()


 ふつふつと思いだすように言葉を紡ぐ『(キング)』。

 思慮を思わせる表情のようなものが、その凶暴な面構えに浮かぶ。

 まるで、人間のようだ。


「一体どういう……それに、『王』が出現するまで速すぎる」


 唯火の疑問の声に奴は顔を向けると、意外なことを口走る。



「人間ノメス。貴様ノ武勇ニ敬意ヲ表シ、教エテヤロウ……貴様タチガコノ『迷宮デ』倒シテキタ我ガ同胞タチ。ソレラヲ全テ我ガ進化ノ()()トスルノガ、我ガチカラ」



 ダンジョン内で倒された同種を贄に自らの成長を早める、ってことか。

 多分、固有スキルとかいうやつの能力か……


「ソノ進化ハ、イマサッキ。貴様ガ葬ッタ軍勢ニヨッテ、成ッタ」

「そ、そんな……」


 なるほど、罠を跳ねのけ軍勢を倒したと思ったら、それは敵に塩を送っていたと同議だったのか。

 思った以上に罠のドツボにはまっていたらしい。


 ここまで見事にはめられるといっそ清々しいな。



「お前は……一体何なんだ?」



 今まで遭遇した中で最も知性を感じるモンスターの出現に、思わず疑問をぶつけてしまう。


「『ジェネラル(ソレ)』ダッタ我ガ、ナゼ今ココニイルノカハ分カラヌ」

「……」


 聞いておきながら、こちらの会話に応じてきたのは意外だった。

 随分とおしゃべり好きみたいだ。


「我ガコノ『迷宮』ノ()()トナッタ今モ、我ノ中ヲ支配スルノハ・・・()()()

(たぎ)り?」

「戦イノ記憶。小サキ者トノ……強者トノ、戦イ」


 記憶……ジェネラルとして、俺と戦い、敗れた記憶……?


「貴様ナノダ。コノ滾リヲ、貴様ニブツケルタメダケニ、我ハココニ存在スル」

「……」


 こいつの言う記憶が『ジェネラル(前世)』のモノなのか、

 ダンジョンの鍵となった魔石が起因しているのか。


 はっきり言って分からないことだらけだ。

 この世界は、毎度毎度俺の前に理解不能な仕様を示してくる。



 俺に今わかるのは―――




 勝たなきゃ全部失う。

 この世界で目が覚めてから、何度も突き付けられた真実だ。



「ナナシさん……」



 背負った唯火を下ろすべくその場に屈む。



「……戦うんですか?」

「ああ。どうやら、俺に因縁があるみたいだしな」

「あいつのレベルは……」

「……75。だった」


 背中越しに息を呑むのが分かる。

 当然だ、もし彼女が万全だったとしても敗色は濃く。

 まして、その自分より格下の俺が挑もうとしているのだから。


 無謀だと。

 あるいは逃げようと。

 そんな風に俺を責め立てても不思議じゃない。


 だが彼女は―――



「ナナシさん。あなたはこのダンジョンに入ってからずっと逆境の中でした」

「……」

「自覚はないでしょうけど、あなたのレベルで、あんな数相手に、あんな戦い方出来ません。ありえないんですよ」



 それこそ、2階層の湧き場(スポット)で死んでてもおかしくありません。

 と、なかなか怖いことをを言い。


 ふと、

 全身の力を抜いてもたれかかってきたのか、背中の重みが増す。



「これ、使ってください」



 俺の前に回された手には一度だけ見覚えのあるものが握られていた。


「これは……『回復薬』ってやつか?」

「はい。公園にいる職人さんの中に【薬剤師(やくざいし)】の職業(ジョブ)の方がいたので、何とか一個作ってもらいました。本当に危ない時のためにとっておいたんです……体力と傷は回復できますが、MPまでは回復できません」


 だから、俺に託す、と。


「普通は押しつぶされて飲み込まれてしまう状況を全部切り伏せてきた。そんなナナシさんが一緒に戦ってくれていたから、私もこの最下層まで、大群を全滅させる力をなんとか温存出来てたんです……」


 背中に伝わる重みと温もりが、より重く、熱く感じた。


「ナナシさんは、予想の外の事をやってのけています。私はこの短い期間で、何度もそれを『目撃』してきました。その力がどこからくるものなのか、何にも分からなくてすこし怖いくらい……だから、『王』を倒しちゃっても、今更不思議じゃありません」


 残った力を振り絞るように外套を力いっぱい握り締める唯火。


「なんにせよ、私はもう動けません。それはもう、一歩もです」

「……唯火」


 ゆっくりと、彼女を床へおろす。



「……なるほどな。罠にもはめられて。敵は格上。後ろには身動きのできない守らなきゃなんない奴もいる……悪夢みたいな状況だな」

「ほんとですね」

「ああ……でも」



 こんな状況、もう経験済みだ。



「なんてことない、今回も見飽きた悪夢だ」



『回復薬』の口を割る。

 見る見るうちに失った力が満ちていくのが分かる。



「……済ンダカ?ニンゲン」



 唯火の激励、回復薬の使用。

 それらすべてを見届けると、ヤツは口を開く。


「おとなしく待っててくれるなんて、『ジェネラル(将軍)』から『キング()』に出世した余裕か?」


 まぁ、実際ヤツの数字はそれだけ圧倒的なんだが。


「言ッタ筈ダ。滾リヲブツケルト……満身創痍ノ貴様ト対峙シタトコロデ意味ハナイ、マシテ、()()()ガ萎エタ者ナドツマラン」

「それ。自分がどんだけ格上か知ってて言ってるのか?」



 ダンジョンに入る前より幾分か軽く感じる、愛剣を抜き放つ。



(力が戻った……いや、溢れる……?なんだ、この感覚。重きが軽く。遠くが近く。高見が低く。深みが浅く……うまく表現できない)



 かつてない感覚を、体の内側に感じながら。



「格?ソンナモノ、勝負ノアトニシカ存在シナイ……ドウシテモ、格ヲツケタイノナラ……示セ」



 チカラヲ。

 そう言い放つと、奴も背中に差した一振りの刃こぼれが激しい長剣を抜く。



「ユクゾ、ワルイガ=ナナシ」



 その言葉に応じ、張り詰め搾り上げた弓弦のような裂帛の闘志を体現するように構えをとり。



「いくぞ!ゴレイドォ!!」




 名:ワルイガ=ナナシ

 レベル:43

 種族:人間

 性別:男

 職業:

逃亡者(とうぼうしゃ)

精神掌握者(メンタリスト)

鑑定士(かんていし)

解体師(かいたいし)

斥候(スカウト)

 上級

剣闘士(グラディアトル)


 武器:ショートソードC+(無名)

 防具:レザーマント(改)

 防具(左腕):アイアンガントレット(スロット:●)


 攻撃力:583

 防御力:455

 素早さ:431

 知力:357

 精神力:475

 器用:784

 運:129

 状態:ふつう

 称号:無し


 所有スキル:

 《平面走行LV.10》

 《立体走行LV.10》

 《走破製図LV.5》

 《洞察眼LV.9》

 《読心術LV.7》

 《精神耐性LV.10》

 《目利きLV.7》

 《弱点直勘LV.10》

 《弱点特攻LV.10》

 《ドロップ率上昇LV.5》

 《近距離剣術LV.10》 

 《体術LV.10》 

 《直感反応LV.10》 

 《武具投擲LV.8》 

 《索敵LV.5》

 《隠密LV.3》

 《五感強化LV.5》



 ユニークスキル:《 用 乏 (き  ん う)

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― 新着の感想 ―
[一言] モンスターが片言の言葉で話すのを、全てカタカナで書くのは只々読み難いだけです。
[一言] ステータスに斥候と関連スキルの 索敵、隠密、五感強化が無いのはわざとでしょうか?
[良い点] 面白いです [気になる点] 斥候の能力消えてません?
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