31話 少女の逆鱗
「見てくれ、こんなところに扉があるんだ」
2階層以降岩肌むき出しといった部屋や通路ばかりだったが、いきなり文明めいた見た目の扉が姿を現した。
ずっとモンスターの巣窟に潜っていると、こういう人工物っぽいものを見るとホッとするな。
「ふむ……多分、階層主の部屋ですね」
「階層主?」
「はい。必ずいるとは限らないんですが、各階層に稀に出現する強力な個体です。階層主が現れたら基本的に、その部屋を通らないと次の階層へは進めないんです」
「中ボスってとこか?そんな奴がいるんだな」
ていうか、稀っていう事例起き過ぎじゃないか?
隣の唯火を見ても同じことを思っているらしく。
「全体のレベルが高くなさそうなダンジョンだからまだ大丈夫ですけど・・・こうも立て続けにレアケースに遭遇するのも、なんだかダンジョン全体が私たちに敵意を向けているようで怖いですね」
「そうだな……けど、このダンジョンを攻略しないと山さん達の居場所を守れない。避けられないなら進むしかないな」
そうですね、と言う唯火の言葉を背に扉に両腕を添え力を込める。
「……」
……開かない。
ていうか重すぎる。
「どうしたんですか?」
「いや、開かないというか……これも鍵とか必要なのかな?」
「? いえ、今少し動いてたので普通に開くと思いますよ?」
小首をかしげ不思議そうな様子の唯火。
「……なるほど。俺の力じゃ開けられなさそうだ」
扉から手を離すと。
「唯火。開けてくれないか?俺より力の強い唯火なら余裕だろう」
一瞬呆けたように瞬きをすると、どこか影を指したような表情になりジト目を送ってくる。
心なしかふくれっ面だ。
「……ナナシさんって」
「ん?なんだ?」
「絶対私の事女の子としてみてないですよね」
「……どういうことだ?」
礼儀正しい彼女にしては珍しく、ツーンと聞こえてきそうな風にそっぽを向き扉の前に立つと。
……間違いない、怒ってる
「ナナシさんは絶対女の子にモテないってことですっ!!」
俺を呪う言葉を吐きながら蹴りを放つと、重々しい扉は開くどころか吹き飛んでしまった。
「「ゴガアァ!?」」
入室者を待ち構えていたのであろう、中央にいる何かを守るように両脇に控えていた巨体のモンスター2体に両の扉が突き刺さる。
「……唯、火さん?」
ていうかあのでかいのオークじゃないのか?肌の色が魔物使いのやつとは違うみたいだけど。
目利きを使用する前に、唯火のフットインザドア(今名付けた)に巻き込まれ消滅してしまったから確かめる術はないが。
そのまま唯火は部屋のど真ん中を突っ切って歩いていく。
「あ、ちょ、階層主がいるんだろ!?」
慌てて部屋の主に『目利き』をかけると。
名:ゴルノー
レベル:44
種族:ゴブリンシャーマン
性別:男
職業:なし
武器:人骨錫杖
防具:血濡れのローブ
攻撃力:226
防御力:277
素早―――
「邪魔!!」
ステータスを見終わる前に唯火の放った魔石がゴブリンシャーマンをズタズタに引き裂いてしまった。
しかも、名持だったけど。
「……」
「……」
破壊の限りを尽くして少し溜飲が下がったのか、こちらを振り向く。
何の羞恥か分からないが、頬がきれいに色づいていた。
「は、早く行きましょう……」
「……はい」
下層へと降りる階段でひたすら謝罪し、7階層は元通りに挑むことができたのだった。




