105話 魔核。存在の由来
「多分それ、『魔核』ってやつね」
俺の胸元、外套に取り付けられた台座で輝く琥珀色の石を指さし、朱音が言う。
「『魔核』・・・」
「モンスターが魔石を落とすこと自体稀なんだけど、『魔核』は更に希少な事例でね。長く生きてるモンスターや強力な個体がたまに落とすらしいわよ」
地竜を倒し、現場を後にした後。
ギルドに戻り回復魔法を使えるメンバーから治療を受け、再び朱音の部屋へと集まり地竜戦の戦果の確認をしていた。
「あたしも見たことないし聞いた話で難しいことはわからないけど、普通の魔石よりも純度が高い魔石って感じかな?」
「・・・・長く生きてる、って言うと。どういう事なんだろうな」
「? どういうことですか?」
「大昔の恐竜がいつ滅んだか分かるぐらい文明が発展してんだから。それくらいわかるわよ」
「いや、そうじゃなくてな・・・・」
モンスター。
半年前からステータスなどの異能と共に出現した、異形の存在。
どこからともなく現れ、ダンジョンと呼ばれる迷宮にも巣食う。
俺の関心は、件の『魔核』よりモンスターという存在そのものに向いた。
「モンスターも生きているんだ。そりゃ年月の経過でそう言う事もあるんだろうけど・・・・改めてそうゆう事聞くと、無からパッと出てきたわけじゃないんだよな。ってことを思うというか」
今まで対峙してきた彼らにも、それまでの歴史があったわけで。
俺が戦ってきたモンスターも、生まれてからの成長過程があったはず。
つまり何が言いたいかというと・・・・
「モンスターって、どこから来ているんだろうな?」
思わずそんな漠然とした疑問を抱いてしまう。
「答えの出なさそうな問答ね。けど色々説はあるわ。ダンジョンは入口が出現していないだけで常に地中にあって、そこから転移されてくるとか。元居た動物が種族変化した突然変異体だとか。あとは・・・別の世界から来てる、とか」
「こんな世界ですからね、どれもあり得なさそうな話ですけど。あり得てもおかしくなさそうです」
「眉唾には違いないけどね。今そんなこと気にしてても仕方ないでしょ」
目の前の情報を処理する方が優先だ、という風に魔核を指さす。
「そうだな、悪い。話が逸れた」
「それ、取れないの?」
「ああ。びくともしない」
二人の前で指先で取ろうと試みるも全く外れる気配が無かった。
相当力を込めてるはずなんだが・・・・
「竜種を相手取ってる今、装備ひとつで命取りになりかねない。今回、魔核がドロップしたことはギルドの誰にも報告しないわ」
「そうだな」
俺もその意見に賛成だった。
まぁ訳を話せばそうはならないだろうが、万一外套ごと回収されても困る。
何せ魔石よりもさらに希少ときてるからな。
猫ババするようでうしろめたさはあるが、そもそも言ってしまえば俺たちが命懸けで戦って手に入れたもの。
響さんやユニオンの皆に何を思う事もないが、このくらい罰は当たらないだろう。
「それにしても、外套にくっついたのはどういう事なんだろうな」
まるで設えたようにぴったりとはまっている。
「・・・・あんた、ゲームやったことある?」
「ん?なんだ藪から棒に。まぁ、人並みにはあると思うが」
だからこそ、この世界をゲームみたいだと思う感性があるわけだからな。
「こういうのってお約束じゃない?不思議な力を秘めたアイテムを装備品に装着すると・・・・」
「宿された力が反映される、ってか?」
「そういうもの、ですか?」
唯火はいまいちピンと来ていないようだったが、確かにあり得る話だ。
もしそうだとしたら、俺たちにとって強い追い風になるはず。
「・・・『限突支援』の反動は正直予想以上だった」
「そう、ね。『超加速』の時とは勝手が違うみたいね」
「まだ、痛みますか?」
そう言って唯火は心配してくれる。
回復魔法を施されたといっても完全に傷が癒えるわけではない。
傷跡残る腕の中には鈍い痛みが微かにくすぶっているようだった。
「ほんの少しだけさ」
この反動のデカさは速めに知れて良かったと考えるべきだ。
ますます使いどころが限られてくるわけだが――――
「なにも、暗いニュースばかりじゃない」
地竜の鉄壁の岩塊を砕いた新しい職業(力)。
【壊し屋】
そして、地竜の魔核。
であれば、なににおいても――――
「『目利き』」
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《首尾はどうなのかしら?》
《・・・・》
《だんまりかよ》
《ルール違反。ダメ》
《全くだ。イレギュラーなんだろ?フェアじゃぁない・・・・消しちまえば済む話さ》
《こーら。そんな乱暴なこと――――》
《そんなこと、絶対に許さない》
《へぇ・・・そんな顔もできるんだな》
《二人とも待つ。そもそも、まだどこに属してるのかもわからない》
《は?今やってる事は『攻略勢』と変わらないだろう?だからそいつのお気に入りなんだろうが》
《その子はそのつもりかもしれない。けど、どうにでも転ぶ》
《さっきルール違反だどうだといったのはお前だろ?》
《それは共有すべき情報を黙秘したこと。イレギュラーの存在は、あってもいいと思う・・・・誰が手駒にするかは恨みっこなし。反則級が一人くらいいた方が面白い》
《はっ。あんたもあのガキがお気に入りかい。冗談じゃないよ。こっちにとっちゃ相容れない存在なんだ。あたしだけが割を食うじゃないか》
《まぁ、そうねぇ。それが生存本能だものねぇ》
《彼は、そんなに単純じゃない・・・・異形との戦いの中で、意思を通わせることができる》
《だからなんだ?そんな奴がゼロじゃないのは分かってるんだよ。それにそれは、言語形態がかち合った相手だけじゃねぇか》
《・・・いずれ分かる》
《てめぇ・・・》
《はいはいはい。そこまでにしましょう?せっかく公平に事が進んでるのに、あなたたちがぶつかったら全部無に帰しちゃうじゃない》
《イレギュラーのせいでその公平ってのが崩れてるから――――》
《竜種のエンカウント。操作した》
《・・・・ちっ》
《一番ルール破ってるのはそっち。協議したら多数決で脱落かもね》
《わーかったよ!・・・今はまだちょっかい掛けないでやる》
《そのちょっかいすらも、彼にとっては恩恵でしかないかもしれないわね》
《あ゛?》
《はいはいはい。じゃあ、これで解散ね。皆くれぐれも、我が子可愛さにルールから逸脱した行動をとらないようにね?》
《あなたに一番言われたくない》
《ちっ。同感だね》
《分かってる。『公平なる戦いを』》
新職業『壊し屋』は、文字はそのままにルビを『デストラクタ』、としました。
解体師との言葉遊びみたいな感じですね。
作者はどうしても横文字にしたかったようです。
ご意見頂きありがとうございました!




