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第93話 ルップア王国

我はゴーレムなり。


黒いドラゴンのおかげでルップア王国まで1日で来ることが出来た。さすがはドラゴンだ。伊達にでかい身体をしていないね。


黒いドラゴンの背中でセーラー服とブレザーから話を聞いたところ、残り4人の召喚者は全員王都にいるらしい。しかも、王城からはあまり出ないそうなので、おそらく王城内にいるのではということだった。



1人目は、男子高校生で、タブロイド紙にも載っていたイケメンの勇者だ。コイツはパーティーメンバーを美女で固めているらしい。イケメンだからか、能力的にもバランスがよくコイツが一番強かったそうだ。セーラー服曰く、いやなヤツだそうだが。


パーティーメンバーにはルップア王国の王女様も入っているのだと。ブレザーが言うには、召喚された者たちの中で一番好き放題しているのが、イケメンだそうだ。ブレザーのやっかみではない、と信じたい。



2人目は、女子大生でイケメン勇者のパーティーメンバーの一人だそうだ。魔法が得意な巨乳らしい。ブレザーが胸がでかかったと言うと、すかさずセーラー服が頭を叩いていた。うん、まぁ、若いからね。仕方ないよね。胸に目が行くのは。



3人目は、女子中学生で、回復魔法が得意らしい。逆ハー狙いの聖女かと思ったが、違うとのこと。逆ハー狙いの聖女は帝国で生まれて育ったこの世界の人間だそうだ。この女子中学生は王城内で一部屋借りて、回復魔法を使って無償で民衆の治療をしているそうだ。


へぇ、良い子じゃんと思ったが、この子が治療をするのは、貴族や商人など富裕層が多く、本当にお金が払えない貧民層の治療はしていないとセーラー服が言っていた。誰でも無償で直すとはいえ、王城内に入れる者限定らしい。貧民は王城には入れないからね。


セーラー服が貧民街で無償で治療をしたらと注意すると、回復魔法を使えないからってひがまないでくれますかと言い返されたらしい。セーラー服はその時の事を思い出したのか、むきーっと怒りをあらわにしていた。


女子中学生が無償で治療を開始したので、富裕層の中には今まで教会に寄進していたお金を取り止める者が出始めたみたいだとブレザーが付け加えて教えてくれた。そのため、教会の活動に色々と支障が出始めているらしい。教会の運営している地方の孤児院は死活問題よ、とセーラー服が怒ったまま呟いていた。


4人目は、イケメン勇者のおこぼれをもらおうとする筋肉バカだそうだ。イケメン勇者が取り巻きの一人として良いように使っていると、ブレザーが忌々しそうに呟く。王女がちょっと色目を使って、お願いするとホイホイということを聞くようなやつらしい。コイツはイケメン勇者と同い年とのこと。



我はふむふむと頷き、ノートにメッセージを書いて見せる。


<召喚者、ろくなヤツがいないな>


セーラー服とブレザーがそれを見て、「「私(俺)は違う!」」と声をそろえて反論してくる。相変わらず、息は合っている。





ルップア王国の王都から少し離れた森の中に黒いドラゴンに降りてもらい、そのまま森の中で隠れておいてもらうことにした。ちなみに魔国からここまで【姿隠し】を使っていたので、おそらく誰にも見つかっていないと思う。


ふっふっふ、我に抜かりはないのだ。


黒いドラゴンには、巨大なラインライトを空に打ち上げたら、迎えに来てと頼んでおいた。「了解しました!」と黒いドラゴンは、快く引き受けてくれた。


「それでどうするの?」

「ああ、これからどうするのか考えているのか?」


我はもちろんだと頷く。

我はノートに作戦を書いて、セーラー服とブレザーに見せる。


<ブレザーがセーラー服を捕まえたということにして王城に入る>

<我とハクは【姿隠し】で見えなくなってその後についていく>

<残りの4人の召喚者に一緒に帰るように説得する>

<召喚石を壊して、王城を出る>

<黒いドラゴンに乗って、魔国に戻る>


我はどうだ、完璧だろと胸を張る。しかし、セーラー服とブレザーは、ノートを見て大丈夫かと呟いている。何を心配することがあるのだろう。


「ゴーレムさん、この姿隠しってなんなの?」


あれ、説明してなかったか。黒いドラゴンに触れて、みんなに【姿隠し】の効果が発動してたから、気づかないのも当然か。


我はハクの手を取り、【姿隠し】を発動させる。


「えっ」とセーラー服は驚き、ブレザーは首をかしげている。


「なぁ、ゴーレムさん、ハクちゃんと手をつないでどうかしたのか?」とブレザーが質問してくる。

「なに、ヒデキ、あんたゴーレムさんとハクちゃんの姿が見えるの!?」

「え? ああ、別にそこに立っているだけじゃん?」

「私には、見えないわよ!?」


なるほどな、ブレザーはちょっとチャラいのかと思っていたけど、心はきれいだったんだな。一方、我らが見えないと言うことはセーラー服は心がきれいではなかったようだ。


<心がきれいだと見える>

<心がきれいじゃないと見えない>


我はノートに見える見えないの基準を書いて二人に教える。ブレザーはへぇとつぶやき、そして、にやにやしてセーラー服を見る。セーラー服はブレザーの視線に気づき、「なによ!」とパシと頭を叩いていた。


我はそういうところが原因ではないかと思い、セーラー服に生暖かい視線を送った。


「いざとなったら、ゴーレムさんがごり押しでなんとかしてくれるから、ゴーレムさんのいうようにやってみましょ!」

「いいのか、こんな適当で?」

「いいわよ。なんとでもなるわよ」


我はうむと頷く。さぁ、とっとと行って片をつけよう。


セーラー服の手を後ろに縛り、ブレザーがそのヒモの先を持つ。セーラー服、ブレザー、姿隠しを発動中の我とハクという順番で、王城を目指す。





ふっふっふ。さすがは我。完璧な作戦だった。


今、我らはルップア王国の王城の中にいる。しかも、国王をはじめとしたこの国の大臣や騎士隊長など、そうそうたるメンバーが集まった王の間にいるのだ。もちろん4人の召喚者も王の側にいる。


ふっふっふ、ここまで順調にいくとは自分が怖くなるな。


我は、ブレザーにどうよって視線を送る。ブレザーは「マジかよ。バカじゃないの、この国のやつら」と言って、すこし現実逃避気味だ。セーラー服には我とハクの姿が見えないので、王と他の召喚者達を睨んでいる。



「ご苦労だったな、ヒデキよ。じゃじゃ馬を捕まえるのは骨が折れたであろう」

「誰がじゃじゃ馬よ! このブタ王!」

「ユウキ、王様に失礼だぞ!」

「そうよ、ユウキちゃん、そんな汚い言葉を使っちゃダメよ」

「ユウキお姉ちゃんはバカだから仕方ないよ」

「セーラー服はやっぱりいいな」


我とハクは王たちとセーラー服の間で腰を下ろす。何をしてるんだというブレザーの視線は気にしない。特等席で召喚者たちの人となりを観察するのだ。


「ふん、じゃじゃ馬には言葉も通じぬか。タカシはどうしたのだ?」

「タカシはユウキを捕まえる時に少しケガをしたので、途中の町で休ませている」

「えっ、それじゃアイコが行って治してあげたほうがいい?」

「いや、そこまでのケガじゃないから大丈夫だ」


回復魔法が得意な女子中学生はアイコっていうのか。自分のことを名前で呼ぶお年頃なんだね。


「それより、ブタ王! あんた、私たちに嘘を教えてたでしょ! 帰還石で帰るには大量の魔力が必要だなんて聞いてなかったわよ!」


ブタ王はセーラー服の言葉に眉を寄せる。


「そんなことを誰から聞いたのだ?」

「誰だって良いでしょ!」


イケメンが口を挟む。


「ユウキ、魔力が必要なら僕たち自身の魔力を使えば良いじゃないか? 僕らは普通の人間の何十倍もの力を持っているんだ。僕はこのままこの世界でやっていくつもりだから、君を送り返してあげるよ」

「バカじゃない? 数万人の魔族を生け贄にしてやっと魔力が補えるそうよ。そんな魔力が私たちにあると思うの?」


セーラー服に反論されてむっとした様子でイケメンが答える。


「数万人? 生け贄? 生け贄でまかなえるならいいじゃないか。魔族は人間の領土に攻めてくるばかりの魔物の親玉なんだろ」

「そうですわ、ナオト様のおっしゃるとおりです! 魔族を生け贄にして帰還できるのですから、皆が幸せになれますわ!」


おお、新たな登場人物だ。フリフリがいっぱいついたドレスを着ているから、あれが王女なのだろうな。


「あんた、相手の事を知らずになんでそんな事を言えるわけ?」


セーラー服がイケメンをにらみつける。


「国王様やリチャ姫、それにこの国のみんなが、魔族から受けた被害を色々と教えてくれたじゃないか? 何を疑うんだよ?」

「そうよ、ナオト様の言う通りよ!」

「その通りだぞ、じゃじゃ馬。余のいうことを信じておればよいのだ」


王女が胸をイケメンの腕に押しつけるようにして抱きつく。ちょっとにやけるイケメン。その様子を見て、うらやましそうな筋肉とちょっと悔しそうな巨乳。


「国王陛下、ユウキ様にはこの隷属の首輪をしてもらいましょう。そうすれば、おとなしく我々の言葉を聞いてくれましょう」

「しかし、大臣よ、いかにじゃじゃ馬じゃからと言っても、勇者候補に隷属の首輪はできんじゃろ。ナオトはどう思う?」

「ユウキが言うことを聞かないというのであれば、隷属の首輪をしてもしかたないと思います。みんなもそう思うだろ?」

「ええ、ナオトくんの言うとおりよ」

「俺はセーラー服に首輪ってのは悪くないと思うぞ」

「アイコはちょっとかわいそうかなって思うんだけど、みんながそういうならしかたないよね」


イケメンは大臣と呼ばれた男から隷属の首輪を受け取り、セーラー服の方に近寄ってくる。うーん、最後まで見ていようかと思ったけど、ばかばかしくなってきたから、もう終わりにしよう。


我は【姿隠し】をオフにする。そしてハクにセーラー服の手を縛っているヒモを切るように指示し、我はイケメンの前に立つ。


「なっ、いきなりどこから現れたんだ、この魔物は!?」

「ナオト様、危ないですわ!」

「心配しないでください、リチャ姫。このような魔物、僕がすぐに退治しますから」


イケメンはそう言うなり、腰から剣を抜き、我へと斬りかかってくる。我は片手でその剣を受け止め、ポキンと折る。イケメンは目を見開き、あわてて我と距離を取った。


「なかなかやるようだね。でも、それでは僕には勝てないよ!」


我ははやくかかってきてほしいと思い、じっと待つ。しかし、イケメンはかかってこない。王女のもとまで戻り、代わりの剣を王女から受け取った。


「ナオト様! お気をつけて!」

「心配しないでリチャ姫! あなたの為にもあのゴーレムを倒しますから!」


そう言って、イケメンは残りの3人の召喚者に声をかける。


「ネネは魔法で援護を頼む! ムネオは僕と一緒に攻撃してくれ! アイコは誰かがケガをしたら回復して!」

「わかりました!」「おう!」「うん!」


イケメン一人でかかってくるのではないのか。


「ヒデキ! ユウキとその獣人は任せた!」


イケメンはブレザーに無茶ぶりをした。せめて、筋肉をあっちに回してやれよ。ブレザーは忌々しそうに舌打ちをする。セーラー服が「ほっときなさい」とブレザーに声をかける。


その間にも、王の間には騎士達が抜剣して駆け込んでくる。我らは完璧に包囲されてしまった。


「もう逃げられないからな、変なカバンのゴーレム!」

「そうよ! その趣味の悪いカバンごと私が燃やしてあげるわ!」

「ははは! たしかによくあんなカバンを使っているな」

「ちょっと恥ずかしいよね。アイコ、あんなの恥ずかしくて使えないよ」


召喚者たちはくちぐちに、我のないわーポーチをけなしてくる。それと同時に巨乳は魔法を唱え始め、イケメンと筋肉が我に襲いかかってくる。



ーー我にだってどうしようもないことがあるのに。



キンキンと何度も切りつけてくるイケメン。

オラオラと拳を何度も叩き付けてくる筋肉。

やっちゃえーと大きな声を上げる中学生。


遠くでは、ブタ王と王女が、「あんな変なカバンを好んで使うとは、魔物の考えはわからんわい」「まったくですわ。あんなカバンを使うくらいなら死んだ方がましです」とないわーポーチの悪口を言ってくる。



ーー我だって外せるものならはずしたいのに。



「ちょ、ちょっと、ゴーレムさんの様子がおかしくない?」

「ああ、寒気がする。ゴーレムさんがマジギレしたらやばいんじゃね?」

「大丈夫。マジギレ、は、しない」

「ホント? 信じるからね、ハクちゃん」

「逃げようにも逃げられないしな」



ーー我にどうしようもないことを笑いものにするなんて。



「ナオトくん! 避けてください! とっても大きな火球!!」

「ムネオ、避けろ!」

「おお!」


大きな火の球が我へとぶつかり、どっごーんと大きな音を立てる。


「やったな。さすが、ネネさんの魔法だ」

「いえ、そんなことありませんよ」

「さっすが、ネネお姉ちゃん!」



ーーコヤツラ



「さぁ、ユウキ。おとなしくこの首輪をつけるんだ」

「あんた、バカ? 目の前をよく見なさいよ」

「? 何を言っているんだ?」


煙が晴れて、我の姿が召喚者たちの前にあらわになる。



ーードウシテクレヨウ



「そんな!? 私の一番強い魔法だったのに!?」

「任せろ! 僕が引導を渡してやる!」


イケメンが再度、我に斬りかかってくる。我はイケメンが剣を握っている手をその上からつかむ。


「は、はなせ!」


我は握った手の力を強める。


ボキボキという音と共に、イケメンが泣き叫ぶ。我が手を離すと、イケメンは慌てて距離を取り、中学生に回復魔法をかけてもらう。


ブタ王もようやく召喚者だけでは荷が重いと判断したのか、表情を引き締め、周りの騎士達に攻撃の命令を下す。我は駆け寄ってこようとする騎士達の両足をボールペン程度のラインライトで撃ち抜く。全ての騎士達が、うめき声をあげ、一斉に倒れる。


「ねぇ、やっぱり、マジギレしてるんじゃない?」

「マジギレ、してない」

「そうなの?」

「うん。キレてる、だけ」

「「えっ」」


大臣が逃げようとするので、我は大臣の両足も撃ち抜く。「ぎゃあああ」と大声を上げて倒れる大臣。ブタ王も王女も目を見開いて固まったままだ。


「な、なんだよ、お前は!?」


手を治してもらったイケメンは、尻餅をついたまま後ずさる。


我は一歩ずつ召喚者たちに近寄る。


筋肉が逃げようとしたので両足を撃ち抜く。「うぎゃあ」と言って倒れる筋肉。巨乳と中学生はその場にぺたんと座り込む。


「な、何よ!? 何なのよ!?」と巨乳は泣きわめく。中学生は放心して、スカートをぎゅっと握りしめている。中学生の周りの床が濡れているので漏らしたのかもしれない。


我は右手に剣のように長いラインライトを発生させる。右手を下ろしたまま召喚者達に近寄る。ジジジジという音を立てながら、床がラインライトで切り裂かれていく。


我はラインライトを横に振れば、首が飛ばせる位置までイケメンに近寄った。イケメンはぱくぱくと口を開け閉めし、その目に涙を浮かべる。我は右手を肩の高さまで上げる。


我が剣を横に振ろうと思ったその時、ハクが我の腕に飛びついてきた。


「殺す、ダメ!」


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、激昂状態が沈静化しました}


「あ、ああ」と青白い顔をしてイケメンはがっくりと仰向きに倒れ気を失った。


「あ、あぶなかったわね。ハクちゃんが止めなかったら、あのままイケメンは殺されてたんじゃない?」

「そうかもな。でも、まぁ、生きてるから、セーフだよ」

「そうね、そういうことにしておきましょ」





ふー、ないわーポーチを皆でよってたかって、あまりにもひどく言ってくるから、我も怒ってしまったよ。ちょっと大人げなかったかな。


<大人げなかった?>


と我がセーラー服とブレザーに聞いてみた。


「ちょっとやり過ぎな気もしたけど、私に隷属の首輪をはめようとしたんだからね、あのくらいは大丈夫よ!」


とセーラー服から心強い言葉をもらった。そうか、ならいいだろう。


我は4人の召喚者に(一人は気絶している)、じっとしておくように伝え、見張りをブレザーとハクの二人に任せることにした。4人はおとなしく我の言葉に従ってくれた。筋肉の治療もしておくようにブレザーに頼む。


我はセーラー服と一緒に、ブタ王と王女に召喚石の場所まで案内してもらう。なんでも城の中庭の地下深くに召喚石があるらしい。おそらく召喚石があった場所に城を建てたんだろうな。


我とセーラー服が召喚石が置かれている部屋に入ると、国王と王女は急いで部屋の外に出て、外から扉を閉めて鍵をかけた。


「はははは! まんまと入り込みおったな、このバカどもが!」

「ほほほほ! やりましたわね、お父様!」

「その部屋の中は常に魔力が消費されてしまうのじゃ! 先ほどのように魔法を使うことはできんからな! その中でのたれ死ぬがいいわ!」


扉の外から、ブタ王と王女の高笑いが聞こえてくる。


「なっ、あんたら! この後に及んで!!」


セーラー服は怒って、扉に斬りかかるが扉が固く、弾かれてしまう。我がセーラー服にどいてと手で示し、グーでパンチをすると、扉が大きな音を立てて吹き飛んだ。


「ぎゃあ!!」「きゃあ!」という二人分の悲鳴が聞こえる。我はやれやれというジェスチャーをし、召喚石の方を向き、ラインライトで召喚石を消し去った。


「ほんとに、召喚石を消しちゃった……」と、セーラー服がぽつりと呟く。


我とセーラー服はその場を後にする。ブタ王と王女は扉の下敷きになってうめいている。人望があれば、そのうち誰かが助けに来てくれるだろう。





王の間に戻り、みんなで魔国イクロマに向かおうとしていたところ、新手の騎士や兵士が王の間の全ての出入り口をふさいだ。


「観念しろ!」

「逃げ場はないぞ!」


と口々に叫んでくる。うーん、痛めつけるのは簡単だけど、さっきはちょっとやり過ぎた気がするからな、今度は人を傷つけないでおこう。


我は天井に向かって巨大なラインライトを撃ち込む。王の間の天井のほとんどが消し飛んだ。それを見た騎士や兵士達は、一斉に押し黙る。


「やっぱり、ゴーレムさんはすごいな」

「ええ。もう早く日本に帰りたいわ」

「俺もだ」


しばらくすると、空から黒いドラゴンが降りてくる。王の間には入りきらないので、尻尾を垂らしてもらい、ドラゴンの背中へとよじ登る。


<魔国イクロマへ攻めてくるならば、次は命がないと思え>


黒いドラゴンを見習って、我は脅迫文をルップア王国に書き残す。


「ゴーレムさんは冗談か本気かわからないから怖いんだよな」

「表情が読めないから仕方ないわよ」


ブレザーとセーラー服の話し声を聞きつつ、我らは魔国イクロマを目指して飛び去った。





その後、ルップア王国はルップア共和国へと変わり、魔国へと攻めこむことは2度となかったそうだ。

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