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みにくい顔だと思い込んでいるお姫様のおはなし  作者: 星野 満


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4. お城の外で昼ごはんを食べるお姫様

※ とうとう王様から城を追い出されてしまったデイジー姫。いったいどうなるのでしょうか?

※2026/2/3 一部加筆修正済

 ✧ ✧ ✧ ✧




 お城から追い出されたデイジー姫は、とぼとぼと王都の市場通りを歩いていました。

 

 不思議な事に、彼女は城内では地面ばかり見て歩いていたせいで人や物にぶつかって転んでいましたが、外へ出たデイジー姫は顔をあげて、正面を見て歩くので誰ともぶつかりませんでした。


 市井の狭い道も、向こうから来る人たちともぶつからず、上手く交わして歩いていきます。



 デイジー姫は灰色の女性用の頭巾(ずきん)を被っており、身に着けている服も王都民の少女たちが着る服でした。


 なので、誰もデイジー姫が王女様だとは気付くはずもありません。



✧ ✧



 デイジー姫は市井の市場通りを抜け、林道に入るとキラキラと木漏れ日の陽光の中、鼻歌まで歌い始めました。


 とても気分がよさそうです。


 王都の街は夏の季節へと様相を呈していました。

 この王国は夏でも涼しい気候で、夏の避暑地として隣国からも観光客が大勢訪れます。


 王都の大通りは人々でとても賑わっていました。



 しばらくすると、デイジー姫は王都民の“憩いの場”である広場に着きました。


 広場には大きな丸い噴水と、すぐ傍に前国王のデイジー姫の祖父様(おじいさま)の立派な銅像が立っていました。


 リンゴーン、リンゴーン!



 王都大聖堂の鐘の音が鳴り響きます。

 

 大聖堂教会の鐘が十二回鳴ると、王都民たちへお昼の時刻を知らせるのです。



 リンゴーン! リンゴーン! と広場内にも鐘の音は響きわたりました。



 パタパタと鳩の群れが飛びかう中、広場では食べ物の屋台があちこち出ており、肉や魚の焼ける香ばしい匂いなど、美味しそうな香りが漂ってきます。


 

 「ああ、お腹が空いたわ!」


 とデイジー姫は呟いてハンカチで額の汗を拭いながら、ぐるっと広場を見渡しました。

 

 するとデイジー姫は、広場に設置してある水のみ場へ向かい口を水でゆすいだ後に、水筒に水を入れて手と顔も洗います。


 真夏の中、デイジー姫も歩いてきたせいか、顔中、汗でびっしょりだったのです。


 そのまま木陰の開いたベンチを見つけて、腰をおろしました。



「はあ、疲れた……」


デイジー姫は、抱えていた巾着袋から食べ物の包みを取りだします。


 出てきたのは、白パンとチーズの他に、干し肉三枚、栗の砂糖菓子、ナッツなどの木の実、野菜のピクルスが少々入った箱。


 

 ──まあ、美味しそう!


 思わずデイジー姫はにっこりと笑顔になって、パンをパクパクと勢いよく食べ出します。


 姫君の明るい笑顔なんて、いつぶりでしょうか。



 お城にいた頃のデイジー姫はいつもブスっとして、メイドたちが運んできた豪華な食事も、少ししか食べず残してばかりだったのに──。


 ずっと何時間も歩いて来たせいでしょうか。とてもお腹が空いていたのです。


 デイジー姫は水筒のお水を勢いよくゴクゴクと飲み、パンとチーズ、干し肉を取りだしてモグモグとかぶりつくように食べました。


 パンや干し肉、木の実はまだ一日分くらいありますが、チーズは全部食べてしまいました。

 

 デイジー姫はチーズが大好物だったのです。




「ああ美味しかった、やっぱり外に出るとお腹って空くのね」


 デイジー姫は呟きながら、ベンチの側にやって来た鳩たちに食べこぼしのパン屑をあげました。


 鳩たちは、ホーホーと何羽も降りてきてデイジー姫のベンチの回りあるパン屑を、口ばしでつつき合いました。



 ✧ ✧



 広場の花壇には赤や黄色、青色など色とりどりの、夏花が咲いていました。



 デイジー姫の名前の由来デイジー(ひな菊)は春の花なので既に散ってましたが、夏の花々が風に吹かれて、そよそよと楽しげに咲いていました。


 その中には野薔薇(のばら)山百合(やまゆり)などもあります。


 デイジー姫はそれらの花を、じっと眺めていましたが、にっこりと微笑みました。




 ──ああ、嬉しい。


 もう私は薔薇や百合をみても心がザワつかない。



「う、う~ん……」


 デイジー姫は両手を大きくあげて背伸びをしました。


 その拍子でデイジー姫の灰色の頭巾が、夏風に吹かれてずれてしまいました。

 

 彼女の明るいマロンクリーム色の髪が、真夏の太陽にキラキラと輝きます。


 殆ど切らずに腰まで伸びた髪でしたが、今日は三つ編みで髪を後ろに束ねてたので、あのボサボサの案山子(かかし)には見えませんでした。



 三つ編みは乳母が最後だからと、泣きながら編んでくれました。

 

 デイジー姫は三つ編みが自分で編めないので、これからは自分で束ねるだけでもできるようにと、乳母はは紐とリボン髪留めを幾つか渡してくれました。



──ゴメンね乳母や、でもね、わたし……


 一瞬だけ、デイジー姫のはしばみ色の瞳は陰ります。それでも──。



 「ああ、なんて気持ちがいいんでしょう!」


 デイジー姫が発した声は、城内にいた時とは全然違う、とても晴れ晴れした声の響きでした。



 さきほどから彼女は広場の景色を眺めながら、本当に楽しげに微笑んでいます。



「よかった。これでローズお姉様とリリアンお姉様と、二度と顔を合わずに済むわ!」

と呟きました。



 え、これはどういう事でしょうか──?


 デイジー姫は、なぜこんなにも楽しそうに独り言をいうのでしょう。




※ ここまでお読みくださりありがとうございました。次回5話は2/9か2/10の予定です。

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― 新着の感想 ―
デイジーちゃん、お外に出ていっぱい歩いて、お腹もすいたからご飯も美味しく食べれたんですね(*^^*)♪ 少しは気分転換になったのかな〜? え、でもでも、お姉さんと顔を合わさずに済む…って…。そのまま…
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