1. わたしはみにくいと思い込むお姫様
☆「冬の童話祭2026」テーマは「きらきら」参加作品です。
※自分のことを醜いと思い込んでいるお姫様のお話です。
※2026/2/2 修正済み
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むかしある王国に、自分が誰よりもみにくい、と思いこんでいるお姫様がおりました。
お姫様の名前はデイジー姫と申します。
デイジー姫は末のお姫様で、すぐ上にそれはそれは美しい姉君が、二人いらっしゃいました。
長女は赤薔薇のように、華やかなお顔立ちのローズ姫。
次女は白百合のように、たおやかなお顔立ちのリリアン姫です。
デイジー姫も幼い頃は自分がみにくいなどと、これっぽっちも思わずキラキラと光り輝く笑顔がまぶしい、それはそれは愛らしい姫君でした。
姫君はお転婆で乳母の目を盗んでは城内をちょこまかと動きまわり、誰にでも分けへだてなく、にこにことかわいい笑顔をお見せになったので、城の従者たちからとても慕われておりました。
いつしか城の従者たちは、デイジー姫を“可愛いおちびちゃん”と、密かに愛称をつけるくらい人気者になりました。
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それがどうしたことか──。
デイジー姫はすくすくと育ち、大人が主催する舞踏会に初めて参加した晩、乳母たちの前で大きな声で嘆きました。
「自分は二人の姉君たちと、ぜんぜん似てないし美しくもない!それどころか、誰よりもみにくい娘だわ!」
と着ていた檸檬色のドレスを叩きつけて、ベッドに突っ伏して、わあっと泣きだしたのです。
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その日からデイジー姫はガラリと変わりました。
毎日毎日「私はみにくい娘だ」と愚痴って、しくしくと泣いてばかりいます。
そのせいで彼女の目は真っ赤に腫れあがり、食事もあまり食べなくなり、どんどんやせ細っていきます。
困り果てた乳母たちは「わたしはみにくい」というデイジー姫に、対抗するためにオウムのようにくり返します。
「姫様はちっともみにくいなどございません。姫様も姉君様たちに劣らず、それはそれはお綺麗ですよ」
といくら乳母やメイドたちが、励ましてもデイジー姫はうなずきません。
逆に乳母たちが否定するたびに、もっと怒鳴りちらすのです。
「お前たちは、わたしがかわいそうと思うから、そんな見え透いたウソをつくのね」と。
こうしてデイジー姫は、乳母たちの言葉をピシャリとはねつけました。
その内、デイジー姫は気分が優れないからと、王族の日々の晩餐どころか、国のお祝い行事からお弔い行事まで、一切のイベントに参列しなくなりました。
いつも気分が悪いといって断り、自分の部屋に引きこもるようになりました。
乳母が心配して、王族の主治医にみせましょうといっても、断ってしまいました。
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「なぜデイジーはそんなに変ってしまったの?」
と母親の王妃様も、乳母からの報告をきいて驚きを隠せません。
「そうね、お母様、あんなに天真爛漫だった子なのに」
「本当ですわ、ローズお姉さま。私たちの可愛いおちびちゃんが、なぜ突然、ひねくれてしまったのかしら?」
王妃様も二人の姉君たちも、デイジー姫がなぜ自分がみにくいと思い込んでいるのか、さっぱり見当がつきません。
二人の姉たちはデイジーが、自分たちの美しさにひがんで、引きこもっているなどと夢にも思ってはいません。
なぜならデイジーの顔立ちは二人が見ても、いえ、誰が見てもみにくくないからです。
デイジー姫は姉君たちとは似ていません。姉君たちのように、王族特有の黄金色の波打つ髪と、宝石のようにきらきらしい蒼き瞳ではありませんが、デイジー姫の小麦色の肌はハリがあってとてもみずみずしく、はしばみ色のつぶらな瞳はデイジー姫の明るいマロンクリーム色の豊かな髪に、とてもよく似合っていました。
デイジーったら、どこからどう見ても可愛らしいのに、一体どうしちゃったの?
ローズ姫とリリアン姫は、お互い首を傾けて、妹をただただ心配するばかりでした。
※ 連載投稿チャレンジ参加作品です。連載は週1回とゆっくり投稿です。




