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そして新たな幕が上がる

 「やばかったなあ……」

 「うん、やばかった」


 ジョンと冒険者ギルドに戻って、応接間に座って、口から出たのはそれだった。

 正直に言えば、ジョンの方が消耗は激しかっただろう。なにせ、まだ戦う事が出来る俺に対して、ジョンは戦う事さえ出来ない。

 ここで言う「戦う」というのは自分の命を守る程度には戦えるかどうか、という意味だ。ジョンだって全体から見れば弱い訳じゃない。それなりの腕を持ち、そこらの駆け出し冒険者程度では束になった所で敵わない程度の腕は持ってるけど、逆に言えばその程度。間違っても、あんな化け物達と真っ向戦えるような実力はない。

 あの両者が消えた後、本当ならそのまま立ち去りたかったのだが、既に応援を呼んでいる以上、そういう訳にもいかない。んな事したら最悪、増援がこいつらにミナゴロシにされる。

 ジリジリしながら入り口付近で応援を待ち、更にそこから捜査にあたる者達が駆け付け、やっと現場保全の御役目から解放されたが、今度は目撃情報を駆け付けた治安担当に説明し……幸い、治安担当もまた同じ冒険者ギルド所属なので特に何か言われたりする事はなかったのが幸いだな。

 これがどこぞの国の腐敗兵士だったら、ビット達を犯人にして事件を終了させようとするか、賄賂を要求される所だ、とはジョンが疲れた俺に苦笑しながら教えてくれた。そうでなくても、もっと疑われていただろうって事は言われなくても分かる。

 そういう事がなかった分、まだ早めに終わったはずなのだが、全部終わる頃にはすっかり夜になっていた。ラティスは眠たそうにしていたので、先に帰らせている。今頃はもう夢の中だろう。

 本音じゃさっさと寝床に潜り込みたかったが、そうはいかない。大人にはまだやる事があるんだ。


 「あいつらなんなんだ?」

 「片方だけなら見た事あるが、何者かは知らん」


 そうとしか言いようがないんだよなあ。

 そもそも、正体不明。

 何者なのか、顔すらローブの方は見ていない。

 それに。


 「大体、あいつらの首を飛ばせる気がしねえんだよなあ」


 そう、ぼやいた時だった。


 「情けないですわね!!」

 「「「は?」」」


 思わず二人で視線を声が聞こえた、入り口に向けた。

 そこには獣人かと思われる一人の女性が立っていた。

 艶やかな黒髪に透き通るような白い肌。スタイルも抜群で、その頭部からはウサギの耳が生えている事からウサギの獣人か?

 しかし、俺はそれ以上にびっくりしていた。


 「え?何でだ」

 「うん?何が?」

 「ちゃんと女に見える!!」


 ……シーンと辺りが静まり返った。

 ……しまった、言い方が拙かったか。


 「……はあ、言いたい事は理解出来ますから怒りませんけど……相手によっては私が女に見えるのが変とも聞こえますから二度は言わないように」

 「おう。悪かった」


 そんなに怒ってないみたいだな……?


 「貴方、そこまで完全にウサギの姿を持っていますものね。普通の人では余りに形が違いすぎて、女として見る事は出来なかったのでしょう?」


 その通りだ。

 相手が女性だとか、可愛いとかそういう事は分かる。分かるんだが……そこまでなんだよな。

 あれだ、男が持つようなもっと生臭い感情。娼館とかそういう……。

 そうしたもんが余りに互いの体が違いすぎて、持てなかったんだが、目の前の獣人?の女性にはそうした女を感じる。


 「なるほど、やはり貴方、本当に本物の首狩り兎(ヴォーパルバニー)なのね」


 うん?それはどういう……。


 「初めまして。私も首狩り兎(ヴォーパルバニー)よ。……今は大分姿が違うけど」


 ………………は? 

突如やって来た美女は一体何者なのか!


明日は某イベントに行く為、もしかしたら更新が出来ないか、出来ても遅くなる可能性があります

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺伐とした展開を吹き飛ばすようにバニーガールな美女が!
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