ラティスから始まる冒険の話2
そういう組織がある、とは聞いた事があったが、これまで特に関心を持った訳ではなかったので知らない、というお話。
「薄情だと思われるかもしれませんが、一介の商人には出来る事など少ないのですよ」
まず孤児院を作れる程の土地を買わないといけない。
これが商人が買うのは案外難しいらしい。
理由は単純、美辞麗句を連ねて、結局「諸事情で出来ませんでした」と転売したとか結局出来たのは自分の店なんてケースが多々あったかららしい。一部のバカが他全体に迷惑かけるのはどこも変わらんなあ……。
「もちろん、嘘偽りでそんな事をやる奴の末路なぞろくなものではありませんがね」
そんな事をやらかす光景を目の前で見せられて、そいつがその街で真っ当な商売が出来る訳がないよな、当然だけど。
そもそも、大商人ならそんな事せずとも堂々と領主に金を積めばいいし、繋がりのある貴族に紹介してもらってもいい。中堅でも伸びている商会は割とそうした紹介状も得やすい。そんな違法スレスレの事に手を出すのは大抵は傾きかけた商会か、余程手段を選ばない手を使ってのし上がってきた後ろ暗い商人だそうな。
もっとも、見切りをつけて最後に多少ヤバくても一発儲けて、やめる、なんて奴もいるので、何時しか商人に土地を売るのは色々と厳しくなった、と。
新人にゃ商売大変なんじゃ?と思ったが、代わりに一定期間借りれる商売用の建物や場所、自由な商売が出来る広場などがあるので真っ当な商人なら困らないと言う。
話を戻すが、孤児院の為にと土地を買って、実際に建物を建てたとしよう。
けど、今度はそこの運営に多額の金がかかるのは俺でも分かる。。
働く職員の給与もそうだし、孤児達の食費や衣料費など各種の生活に関わる費用。それらは決して無視出来る額ではないし、雇った職員が横領する可能性だってある。
結果として、孤児院を運営するのは大抵領主か、信者の寄付が十分な金額になる大手の宗教組織、という事になるのも当然だな。
「あの組織もそうしたどこかの宗教組織のものだと思っておりました」
しかし、確かに言われてみれば「どこの神殿の者達なのか」が不明だったという。
とはいえ、商人は諜報員ではないからな、そこは仕方ねえだろ。
「いえ、大変貴重なお話を伺えました、ありがとうございます」
「ありがとな!」
「いえいえ、この程度ならおやすい御用ですとも――私も一応候補に挙がっていたのでしょう?」
互いに苦笑しあってた。
え?俺?
ウサギの表情なんか人には分からんだろうが、精一杯真面目な顔で黙ってたよ。
さて、ギルドの結論やいかに?
「白でしょうね」
「やっぱ白かー」
「でしょうねー」
やっぱりギルド職員の目から見てもシロと思えたらしい。
となると、あと二件にプラスして新しく増えた組織か。
「うーん、その組織?この街にはねえんだよな」
「ないんだ」
このフォートの街にある孤児院運営組織は冒険者ギルドが一手に握っているからだとか。
となると……。
「ここで調べられる事には限界があるかーっ」
「あるとすりゃあ、そこと繋がってる組織があるか、って話だな」
可能性はあと二つ……本当に二つなのかなあ?
疑われてる時点でダメダメじゃね?
こういうのって疑われる事のないような奴の方が良さそうな気もするんだが……。
(まあ、とりあえずはギルドを信じとくか……)
次は二番目ー
……ちょっと精神的に来る話があったので胃が痛い




