調べてもらった話
「あら?」
「どうした?」
幸いというか、始まって早々にマルガリタは怪訝そうな声を上げた。どうやらムダ金にはならずに済んだみたいだ。
「この馬車、変な構造ねえ?」
「何がだ?」
「そうね……馬車って一口に言っても色々ある訳よ」
例えば、人を運ぶのか、荷物を運ぶのか。
人を運ぶにしてもそれは大勢を運ぶのか、それとも貴人を運ぶのか。
高速重視なのか、積載量重視なのか。
「あたりまえだけど、どれに重点を置くかで馬車の作りはまるで違う訳ね」
「そりゃそうだろうな」
前世には馬車はなかったが、同じ役割を担う車があった。
多くの荷物を運ぶならトラック、人を大勢運ぶならバス。
高速重視ならスポーツカー。
人を運ぶにしても普通の車からキャンピングカーや厳重な警備を前提とした装甲車みたいな車まで色々あったものだ。当然だけど、トラックとスポーツカーを一緒にするのは根本的に間違っている。
「で、それがどうかしたのか?」
「この馬車なんだけど、見た目とか装備は間違いなく貴人を運ぶ為の馬車なのよ」
うん。
「けど、最初、根本的な部分は貴重な荷物を運ぶ為のものなのよ」
は?
俺がそう思うのは当然だと理解してたのか、すぐにより詳しく説明を続けてくれた。
「つまりね?この馬車はまず貴重な荷物を運ぶ為の馬車として造られ、その上に貴人を運ぶ為の部分が作られたの。……あたりまえの話なんだけど、手間もお金もバカみたいにかかってるわよ?これ」
「……そうなの?」
「当然でしょ!まず、貴重な物を運ぶって時点で専用の構造が必要なの!で、その上に貴人を運ぶ為の部分を作る。貴人を運ぶ為なんだから最高の乗り心地や内装がいる訳!その両方を両立するなんて、これ凄い馬車よ!?」
うわー……なるほどね。
しかし、そうなると。
「やっぱし、本命は希少な物を運ぶ部分かな?」
「そうね。明らかにそっちを偽装する為に、上が作られてるもの」
だから、本命はそこに隠されていたはずの何か、かあ……。
それを狙って、何者かが動いた。
そして……おそらく、この馬車を作った誰かや、作らせた誰かはそれを知っていた。ラティスのお母さんぐらいなら知っていたかもしれない。
「……誰が作ったんでしょうね?」
「分からないけど、相当な腕の持ち主ね……ちょっと調べてみたいから、この馬車貸してもらえないかしら?」
そりゃ俺にしちゃ有難い話だが。
「追加で幾らぐらいかかる?」
「いらないわよ。こっから先は私の趣味だもの」
おお、それならこっちとしても嬉しい。
何時までかかるか分からないから、幾らかかるか分かんねえしなあ。
誰が作らせたか、なんて分かるとしたら、作った奴に聞くしかない。けど、その為にはまず作った奴が分からないといけない。
そうして、初めてあの連中が何者なのか、何を狙っていたのかが分かる可能性が出てくるんだよな。
「これだけの工作を出来たとなると何かしらの名工の可能性は高いわ!!是非、誰が作ったのか知りたい!!」
「分かるかな?」
「大体こんな物作る人はこっそり自分が作ったって証をどこか分からない所に刻んでたりするものだもの。可能性はあるわ」
かくして、馬車はマルガリタさんに預ける事になった。
まあ、仕事の合間合間にやるみたいだから、時間はかかるんだろうなあ……。
用事があって朝出て、夕方やっと終わりました
これ書いて、この後夜勤です
……疲れる




