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戦闘前のお話

 尊い犠牲のおかげで、色々と知る事が出来た。

 冥福は祈っておいてやろう。名前も知らんけど。

 祈り三秒、さて、頭を切り替えて、と……。


 「で、どんなもんかな?」

 「……いけそうだわ」


 うん、首狩り自体は出来そうだ。ちゃんと見えたし。

 問題は……。


 「あの触手だよなあ……」

 『かなり自由度が高いですね。加えて最大の長さが不明なのが痛い所です』


 それなんだ。

 あのキメラの触手は長い。

 可能性としてではあるけど、最大でこの部屋中に広がる可能性だってあるんじゃなかろうか?そう思って、リーダーに聞いてみると。


 「それなんですよね……固定型の門番ってかなり凶悪なんですよ」


 その場に固定されてるからエネルギー供給とかも大きくて構わない。

 ツァルトみたいな移動可能なタイプだと、大きすぎると色々問題が生じる。人サイズと、家サイズでは通れる通路にも差が出るし、見つかる可能性も全然違う。消費するエネルギーだって大きくなればなるほど大きくなる。無論、それはパワーとか頑丈さとかにも繋がるんだが。

 それらが固定型だと全部無視出来る。

 思考だって、簡略化出来る。

 何が言いたいかってーと、固定型は本来、色んな所にバランス良く配分するはずの能力を戦闘力にほぼ全振りしてるから面倒だって事だ。


 「だが、決して突出して速い訳じゃない」


 確かに奴の速度は遅くはない。

 けれど、胴体部の移動速度は見た限り、そんなに速くはなかった。反面、触手はかなりの速度を持っていた。


 「けど、あいつの首は魚の方だって俺のスキルが言ってんだよな」

 「なら、それを信じましょう」


 思わずリーダーの顔を見た。


 「いいのか?」

 「その覚悟で来ましたから」


 元より前回も命からがら撤退した面々だ。今回もそれを覚悟の上での来訪だったという。




 ――――――――――




 「さあ、行くか!!」


 そうして、俺達もまた降り立った。

 探索パーティ五名、俺達が一名と一体と一匹。

 脱出に備えてロープは用意した。

 ラティスに関しては「危ないし、待っておいてもいいんだが」と言いはしたんだけど、行くと言って聞かなかった。 


 「さて」


 前方に見えるのが装飾の施された門。

 この門に触れる事で発動条件が満たされ、門番が住処という名の整備を行う部屋から転移してくる。そして、鍵を持たない者は……門番に襲われる。

 性質が悪いのは奴の出現位置だ。

 分かりやすいように、円を想像してみて欲しい。

 回廊ないし、階段から降りてくるとどうやってもこの円の右端から降りてくる事になる。そして、扉は左端で、門番の出現位置は円中央となる。つまり、門番が出現した瞬間に扉の前にいる奴とロープの間には門番がいる、って事になる。

 じゃあ、一人だけ扉に向かって、他の奴は待ち構えて置く、とすると今度は扉の前にいる奴が孤立する。


 (だけど)


 ここの門番にはある特徴が判明してる。

 それは元々追い払うのが目的だったからか、一定時間か一定の高度以上にいれば攻撃を行わない。つまり、空を飛ぶ相手は攻撃しない。

 無論、そのまま上空から攻撃するとか、うろうろして逃走しないとかやってると攻撃してくるんだけど、つまり。


 (俺なら触れた後、空を跳ねて移動出来るから問題ない、はず)


 万が一空中ジャンプが飛んでると看做されなくても、俺の素早さと体のサイズなら奴の攻撃すり抜けて、戻れると思うんだよな。

 さて、それじゃ……やるか。

確認して、いざ挑め

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