表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/116

探索に向かう途上のお話

 『ああ、時間がかかってもいいなら、そんなに大きな領域は必要ないのですよ』


 再生機構が嵩張ると聞いて、ツァルトに聞いてみたら、そんな答えが返ってきた。

 戦闘時に意味があるレベルにしようとすると、当然だけどちょっと放置したら目の前でみるみる修復されていく、そんなレベルの再生能力が必要になる。しかも、破損した部位の補充を考えると実質的には破損した部位を一旦分解して再び利用するとかそういうレベルになる。そうしないと、再生する度に体を構築する素材が減っていく訳だから、どんどん小さくなっていくか、脆くなるか、それともどこかに支障を来すかのいずれかになる。

 そのレベルにするにはどうしても嵩張ってしまうが、逆にある程度時間がかかって、尚且つ素材も他から用意していいというなら話はまるで違ってくる。

 

 『ですから、心配は無用ですよ』

 「そっか。悪い、ああいう話を聞くと気になってさ」


 俺達は結局、遺跡探査の手伝いを引き受ける事にした。

 遺跡ってのがどんなものなのか、一度見てみたいと思ったからだ。もっとも……。


 「しかし、フォートの街のすぐ横に遺跡があるとはなあ」

 「うん、驚いた」


 聞けば、元々フォートの街があそこに出来たのは大規模な遺跡群と魔精の森、その二つの存在が大きかったという。

 実際、位置や魔精の森の色々と不思議な現象などから、魔精の森も古代文明と密接に関わってるというのは定説なんだという。

 つまり、まず、古代文明があり、それが原因で魔精の森が生れ、それらを狙って冒険者が集まって、やがてフォートの街の原型が出来上がり、今に至る、と……。


 「長い年月の間にすっかり埋まってしまっていたり、或いは隠蔽の為に埋められたと思われるものもありますが、総じて地下に眠っていますね、古代文明の遺跡は」

 「なんで、滅んだのかねえ……」


 思わず呟いたが、答えはあっさり返ってきた。

 後世に遺そうとした古文書が残されてるらしい。それによると……。


 「結局は発展しすぎた、という事らしいですね」


 とんでもない長生きも可能になった。

 働かなくても自動で動くゴーレム達が食料や物資は作ってくれる。

 何時しか彼らは子孫すらまともに残さなくなった。そうした欲も理想の相手として製作したゴーレムが満たしてくれる。

 気づけば、彼らは種すら最早まともに残せなくなり、緩やかに滅んでいくしかなかった。


 「それでも戦争や疫病で滅んでいったのではないのですから、苦しんで死んでいった、という訳でもありませんしね」


 とにかく、そういう理由で都市文明を維持するのに最低限必要な人員すら満たせなくなり、滅んだせいで破壊も驚くほど少ない。壊れた理由もほとんどは何等かの暴走や、後の時代の戦争が原因だとか。

 

 「探索する側にはありがたくもあり、困った話でも……ですかね」

 「確かに」


 壊れてないのは嬉しい。

 しかし、壊れてないという事は防犯用の罠や警備がそのまま健在である可能性も高いという事な訳で。

 しかも、呆れた造形だけじゃなく、罠に関してもどんどんヒートアップしていったというから本気で暇だったんだろうな、古代文明人。……何ていうんだろうなあ、徹夜明けのテンション高い状態?そんな時にたまたま「こんなのどうよ!」って暴走して、盛り上がって、気づいたら……みたいなのが原因だったりして。 

 想像してみると何かこっちも楽しくなりそうだな。

 

 ちなみにこの話は遺跡に赴く途上でしている。

 いくら傍にあるといったって、安全を考えたら本当の意味での至近距離に作れる訳がない。

 全部探索し終えた訳じゃないのだから、もしかしたら危険なものが眠っている可能性もある。そうした安全性を考えて、大体、フォートの街から出る乗合馬車半日分の距離がフォートの街との間にはあいている。つまり、その間は暇なんだ。

 さすがの野盗もギルドの運用する乗り合い馬車を襲ったりはしないし。

 ……何せ、乗ってる連中は基本、腕っぷしのある冒険者ばかりで、襲った瞬間から冒険者ギルドが面子にかけて、叩き潰しに来る。

 ギルドにとっても「冒険者ギルドには管理するだけの実力がないのでは?」なんて話を、単なるギルド利権を狙う連中の口実だとしても与える訳にはいかないのだ。

 つまり、野盗達にしてみれば命が幾つあっても足りない。

 

 「向こうについたら、宿に泊まって明日朝から潜りますよ」

 「了解だ」


 あちらに街を作る気はない、とはいえ命知らずの商人なんかが宿とかを提供してるそうだ。

 街中でなら完全なぼったくり価格だが、遺跡傍ではそれが真っ当な価格だそうだ。

 なお、これも経費って事で宿泊費は彼らが出してくれる事になってる。ありがたやー。

次回から潜ります


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 自分好みの理想の姿態のゴーレムがおはようからおやすみまで甲斐甲斐しくお世話してくれる文明! 何というユートピア、コレは滅びざるを得ない(確信)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ