試験のお話(ラティス&ツァルト)
アップしたつもりがしてなかった…!
「ウサギさん大丈夫かなあ……」
『ビット殿であれば、問題はないでしょう』
Aランカーは少々到着までに時間がかかるという事で、先に出発したラティスとツァルトだった。上に行く程、人数が少なくなるのだから、仕方ないといえば仕方ない。
「どちらにせよあんたの方はあんたで頑張るしかないんだ。今はそっちの方は忘れな」
「あっ、はい!」
今回二人に同行しているBランクは二人。
本来は五人からなるチームなのだが、先だっての仕事で三人が怪我を負ってしまった。
幸い、命に関わるとか、高価な薬を使わないといけないという事はなく、しばらく安静にしていれば問題ない、というレベルの負傷だったが、それでも元気な二人が暇になってしまった事は確かだ。とはいえ、二人でBランクの依頼を受けるのはさすがに拙い。
どうしようかと相談している所に、今回の監督依頼が来たのだった。
『一つ確認したいのだが良いだろうか?』
「なんでしょう?」
現状、監督官が二人いるという事でラティスとツァルト、それぞれにつく形で質問などに対応している。
ラティスの方にはがっしりした蜥蜴人の女性が、ツァルトには小柄な妖精がそれぞれついている。それぞれ元のパーティでは戦士と魔法使いらしい。
『お二人は試験官を引き受けた訳だが、これは私達にも将来的には話が来る可能性があるのだろうか?』
「そうですね。信頼出来ると看做されれば、そしてそれまで生き残っていれば可能性はあります」
などと話をしているかと思えば。
『試験官をする事に何か意味はあるのでしょうか?』
「そうですね、断ってもペナルティはありませんが、お勧めはしません。特に事情もないのに引き受けないような者は大抵Bランクどまりです」
という話をしている。
実の所、最初は逆だった。基本、ツァルトがラティスの前にいて守り、ラティスは砲台役が予定されている。
当然、この二人としては前衛は前衛同士、後衛は後衛同士の方がいいだろうと考えていたのだが、パーティでの担当が同じでも、関係が上手くいくとは限らない。事実、今回も熱心に情報を聞きたがるツァルトを持て余した蜥蜴人の女性が、そうした説明話をするのが好きな妖精の仲間とチェンジした、という訳だった。
逆に、姉御肌の蜥蜴女性はラティスと話が弾んでいる。
もっとも、そんな会話も現場につくまでだった。
「さて、そろそろ到着だね」
ここからは自力で探し、発見し、討伐せねばならない。
「既に聞いてると思うが、討伐……いやまあ、今回はむしろ狩猟に近いだろうが、対象はカメレオンディアだ」
ビットがいれば、「いや、カメレオンとディア(鹿)、どっちだよ!」と突っ込んだかもしれないが、ここにはそんなツッコミを入れる奴はいない。
カメレオンディア。
基本的に憶病な魔獣であり、あちらから襲ってくるような事は通常はなく、可能なら逃走を図り、攻撃してくるのは逃げられないと悟った時だ。
だが、害獣として知られる魔獣でもある。
なまじ憶病なだけに討伐が難しく、そもそも追い詰められた時の戦闘能力は結構高いという厄介な魔獣だ。
その癖、その周囲の光景に姿を紛らわせる、という性質を生かし、しばしば森の外に出てきて、村を襲う。正確には村の畑を襲い、収穫前の作物を食い荒らすという厄介な魔獣だ。この為、地中を掘り進んで同様に村の畑を襲撃したりするドリルボアと並び、街の外の村からは嫌われている魔獣であり、また討伐依頼が出やすい魔獣でもある。
「分かってると思うけど、この魔獣が選ばれたのは依頼が出やすいと同時に、あんた達の力を見る為のものでもある」
「そうですね、お二方とも索敵は得意と言えないご様子」
だから、選ばれたのだと補足が為される。
確かにカメレオンディアは見つけづらいし、逃げる魔獣だ。
だが、依頼が多いという事は何度も戦い、そして討伐されてきた魔獣という事であり、普通の冒険者も多くが戦ってきた魔獣だ。つまり、特に索敵が得意でなくても、ちゃんと倒せる。
「苦手なもんもある程度は対策取れば、ちゃんと倒せるかどうかを見るって話だ」
「そうですね、どうやって見つけて、どうやって倒すか。それが試験内容となります」
そうですね、が口癖と思われる妖精が試験の内容を告げた。
無論、討伐対象自体は事前に通達されている。
これが即応戦闘能力を見る為の試験なら何も知らせず、現場に連れて行って、そして戦わされる。突発的に強い魔獣と遭遇、戦闘となった時の対応力や戦闘力を見る為だ。つまり、ラティスとツァルトの場合は戦闘力に関してではなく、きちんと事前に下調べをして、作戦を練れるかが課題とされたと言える。
これは戦闘力に関しては問題ない、と看做されたという事でもある。
「それじゃあ頑張っとくれ」
「そうですね、試験合格を祈ってます」
かくして、二人の試験は始まった。
予約セットしたつもりがしてなかったミス
日が変わる前に気づけて良かった




