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幕間:組織のお話

 「し、知らないっ!俺がいた頃にはまだ馬車もあって……っ!」


 必死に言い募る相手に舌打ちする。

 

 「処理しておけ」


 悲鳴と命乞いの声が上がるが、捨て置く。

 はぐれたとか、他の仲間を逃がす為に残った結果、行く先が分からなくなった奴ならまだしも、責任を捨てて逃げ出したような輩なぞ信用出来ない。


 「さすがに後半に脱落したような者は早々見つかりませんな」

 「そうだな」


 連中の逃亡劇は前半こそある程度の逃亡者が出たものの、後半になれば自分から逃げ出したような奴は激減している。

 無責任に逃亡するような奴はさっさと逃げ出す。

 逆に言えば、我々は後半に離脱した者こそ探しているのだが……こちらはなかなか見つからない。

 

 「後半に離脱、というか離れた者で見つかった者はほとんどが仲間を逃がす為に残った者だけですな」

 「お陰で口も固い」

 「そもそも覚悟の上で残っているからな……敢えて先を知らないようにして残っている」


 そうすれば、例え捕まって薬などを使われたり、あるいは怪我などで意識が朦朧としていようが口を割る心配がない。

 合流も出来ないが……そういう連中は基本、そこで死ぬ覚悟で残っているという事なのだろう。

 



 ――――――――――




 「……という訳で、正直な話、全く展望がない」


 呆れたような視線を向けられた。

 まあ、仕方ない話ではあるのだが。


 「何やってんのよ……」

 「馬車も足取りがぷっつり途絶えているからな……」


 別の一人が溜息をついた。

 その通りだ、馬車の足取りがふっつりと途絶えている。

 どこかで乗り捨てた、というのは考えづらい。肝心要の対象は小さくとも、眠らせ運ぶならそれ相応の保管の為の道具が必須だ。それらは人が持ち運べるようなものではない。


 「となると……街で乗り換えたと見るべきじゃないんじゃない?」

 「む?」

 「馬車を別動隊が購入して、森かどこかで乗せ換えて、それまでの馬車は処分する……って何よ、その感心したような顔は」


 いや、その手があったかと思って。


 「……気づきなさいよ!!」

 「すまん」


 そうは言ってもなあ、元々俺は肉体労働的な担当だったからな。頭を使うのは苦手だ。

 というか、研究担当のお前がもっと動いてくれれば……いや、いっそ現場指揮を。


 「いやよ!というか、そんな暇ないの!!研究もあるのに、あんた達が出張ってる分の書類整理、ほとんど私が責任者で処理してるのよ!?」


 私まで出たら、誰が処理するのよ!

 そう叫ぶ彼女に我々は頭を下げるしかなかった。いや、本当にすまぬ。

 どんな所でも、書類からは逃れられぬ。そうしないと何をどれだけ使って、どれだけの経費がかかったのかとかが不明になってしまう。どんぶり勘定の恐ろしさは以前身に染みて理解した。部隊で追撃戦を行った時にやらかして、最後は金も食料も尽きて水だけで何とか生還した事は忘れられない。

 

 「せめて、あの小娘が生きてたら他の方法もあったのに!」

 「まったくだ」

 

 奴らが馬車に乗せて運んでいた親子、母親は途中で死んだが、娘が生き残っていたはずだった。

 それも魔精の森で勢いあまったのか最後まで付き従った連中と共に死んでいたという……そんな失策を犯した手の者達は魔獣に喰われて死んでいたから、責任を問う事も出来ん。

 本当にどうしたものか。溜息がもれた。 

死んでると思ってたら、誰も来なくて当然だよね!

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