合体理由のお話
『最初に通達したはずですが。仮マスター登録をすると』
「え、あ、いや、え」
ゴーレムが野盗の親分にそう通達してる……。
『正規マスターが現れた以上、仮登録は削除されます』
「え、あの、じゃあ俺は」
『お気の毒ですが、既にあなたには私への命令権はありません』
呆然としている野盗の親分。
いや、俺らも呆気に取られてたけど……気づいたら、「これは拙い」と察したのか野盗の一部が……。
「!! 奴らが逃げようとしているぞ!!逃がすな!」
おっと、リーダーが気づいたか。
大慌てで逃げ出そうとする野盗連中、野盗の親分は……うん、まだ呆然と突っ立ってるな。よっしゃ、今の内。
一気に距離を詰めて眼前に躍り出る。
「っは!?」
ようやっと我に返ったみたいだけどな。
「遅え!!」
「げふっ!?」
蹴り飛ばした。
主犯はやっぱし捕まえないといけねえだろ。というか、野盗の親分の癖に弱くてワロタ。まあ、呆然としてなけりゃ、案外もう少し強く……無理だな。それなら冒険者でも何でももう少しやれてただろう。
まあ、後から何気に探索ランクCの冒険者だったと聞いてちょっと驚いた。どうも冒険者ギルドが俺まで組み入れて、力入れてた理由はそこら辺にあったらしい……。ギルド直轄地で、冒険者が犯罪者やってるってのは拙かったらしい。……せめて、きちんと辞めてからならまだマシだっただろうに。
さて、と。
「ラティス、大丈夫かー?」
「あっ、ウサギさん、大丈夫だよ」
結局、ウサギさん呼び定着しちまったなあ……。まあ、それはそれとして、ゴーレムがラティスの前に立ちはだかってんだけど。
「『……………」』
「あ、あのね?ウサギさんは私を助けてくれた恩人だから……」
『了解しました。味方と識別致します』
「てか、この後、大丈夫なのかよ。街行くんだぞ?」
めっちゃ不安になってきた。
とりあえず聞いてみたかった事があるんだ。
「なあ、何でお前、あんな合体機能なんかあるの?」
何でラティスがマスターとか色々あるけどさ。やっぱこれが気になるんだよな!
合体ってロマンなんだよな。合体って当然だけど構造的に弱くなるし、合体パーツは当然普段は余剰部分になる。コストや制御の難易度だって跳ね上がる。そこまでして合体を組み込んだ技術者の情熱はどこから来たのか、さあ!教えてくれ!!
『…………』
「え、えっと、ウサギさんに答えてあげて?」
『承知致しました。あれは自立整備の為です』
「じりつせいび?」
『長期間稼働を行った場合、不具合が発生する可能性は高まります。また戦闘において破損する可能性もあります』
だから、バラバラになって、各自で各自が整備を行う機能があるのだと。
「……専用の整備用のゴーレムとかそういうのじゃダメなのか?」
『それでは私とそちらでバラバラに配備ないし売却される可能性があると製作者は考えました。ですのでコストが上がっても分離して自己整備を可能とする。また分離・自立稼働する事で複数の支援も行えるようにという考えだったようです』
「なるほど……」
当時そう考えたという事は大分未来の事まで考えていたとも言える。
そして、もし、現代でこれと整備用二体のゴーレムが発見されたとして……。
(うん、整備用のゴーレムは別に売られる可能性高そうだな)
機能を知らなければ、そうなる。
意外と真面目に考えた分離合体機能だった。
『ただし、当初はそういう専用小型整備ゴーレムを内蔵するか背中に設置するはずだったのを今のような形にした当人は「合体はロマンだ!こんなの合体じゃない!!」と叫んでいたようですが』
「!そうか、それでこそだよな!!」
良かった。ちゃんと情熱も持ち合わせてて!
ちなみにラティスは頭上に「?」マークを出してるような感じで、小首をかしげていた。
開発者の当時の友人への言葉
「確かに、コストや理論を考えるならもっと楽で確実な方法は幾らでもある
だが!合体はロマンだ!そこに妥協なぞあってはならん!!
合体してなお活躍するだけの強さを!!その為に私は情熱を注ぐのだ!!」




