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初日の話

 護衛依頼一日目。

 護衛というのはある意味、退屈と体力の勝負だと実感した。

 長時間ひたすら歩く。

 ラティスや俺は今回、他の連中よりも馬車に乗れる時間多めだったが、これはラティスの肉体年齢的なものや俺の体格の問題だろう。俺の場合、肉体サイズ自体はウサギだから大した重さじゃないし、乗せる場所もたいして必要ないからな。

 ラティスは疲労回復に一生懸命だったから余り周囲に目を配る余裕なかったが、無駄口を叩く余裕はない。

 しかし、緊張しすぎても駄目だ。

 ここら辺は討伐依頼と同じなんだが、街道沿いというのは討伐と違ってより通常時の安全度は高い。というか、街道の安全度が魔獣の生息地域より低かったら問題だ。

 けど、そんな中、見張りとしての緊張は維持するってのは結構大変でさあ……。


 「あー……疲れた」

 「…………」


 ラティスは……ああ、いかん。疲れでうとうとしかけてるわ。


 「わっはっは、どうだ。案外護衛って面倒だろ」

 「ああ、よく分かった……」


 初日。

 最初の一日は安全度が高いからまず自分達なりにやってみろって言われてたんだよな。

 あ、無論、休憩時とかに色々教えてもらったぜ?

 自分でやってみないと疑問点分からないもんだから、まずやってみて疑問点を聞いてみろって言われたんだ。あ、無論、さすがに拙いって連中が思った場合はきっちり注意される、らしい。らしい、ってのは今回俺は特に何も言われなかったからだ。

 ああ、いや、ラティスが何度か注意受けてたな。

 緊張を維持する方法。

 長距離の歩き方のコツ。

 護衛依頼で注意すべき事。

 注意するべき場所などなど。

 聞きたい事は一杯あった。


 「とはいえ、さすがっちゃあさすがだぜ。これが雑務上がりの本当のド新人だともっと怒鳴られてるし、休憩時も自分自身が休むのに精一杯で自分から聞いてくる事なんざまず、ねえ」

 「じゃ、ラティスも頑張った方か」


 注意はされてたが怒鳴られてはいなかった、はず。


 「おうよ。注意されたら同じ事を繰り返さないようちゃんと意識してたからな。そういう奴を怒鳴りつけるのは意味がねえ」

 

 そういう奴でも初めての時は疲れからどうしてもミスが出る。

 そういう時、ちょっと注意してやれば十分だと笑ってた。


 「けど護衛もやっぱり大変だなあ……どれも大変だけど、護衛は護衛で神経使うわ」

 「まあ、そうだな」


 護衛に討伐、狩猟に採取、雑務に探索。

 雑務一つとってもアイカさんみたいにこれ!って技能を持ってるのもいれば、フォートの街の事なら裏道まで知り尽くしてるなんて奴もいるし、あっちこっちに知り合いを持っていて情報屋として動いてるような奴もいるなど上のランクの奴になると何かしら一芸があるもんだ。


 「お前さんが護衛で苦労してるように、こっちだって討伐に行きゃあ苦労するだろうよ。そんなもんだ」

 「まあな」


 だからこそ、上のランクにいる奴は互いに尊重し合う。

 出来ない奴は……まあ、大抵の奴は長生きしないだろうなあ。


 「とりあえず、明日からが本番だ。嬢ちゃんに関しては馬車に乗せる」

 「砲台役だな」


 歩かせて疲れさせるより、いざって時に魔法による攻撃を行えるようにしておこうって訳か。

 だとすると……。


 「指示する奴がいると助かるんだが」

 「当り前だ。いくら使える、って言ったって実戦経験未熟な奴に好き放題撃たせる馬鹿がいるかよ」


 よし。けどまあ……。


 「やっぱし、襲撃の可能性高いのな」

 「でなきゃこんな短距離でここまでの集団作って、護衛もつけねえよ」

 

 だよなあ。

 往復で一週間程度、つまり三日程度の旅程を予定してるって事。

 それなのに三つの商隊が固まり、それぞれが護衛を手配し、更に俺達が加わってる。ラティスだけならともかく、俺までって事は荒事の可能性高いって事なんだろう。


 「昨今、どうも手練れの野盗がいるみてえでな。しかも、かなり荒っぽい。さすがにギルドも黙ってる訳にはいかなくなったって事さ」

 「ギルドが管理する街だもんな。裏で何が動いてるやら……」

 

 まったくだとお互い笑わざるをえなかった。

 さて、とりあえずは護衛時の野営の支度と討伐時の野営の支度、違いがあるのか見させてもらおう。  

次回襲撃

ラティスちゃん初戦闘

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