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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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98/101

98.ルーベンスさんの危機?



「“父親”……ですか」


リーダーらしき渋い声のオジサンが私の発言に反応する。


何かおかしな事を口走ってしまっただろうか? 私はこういう腹にイチモツ抱えてそうな貴族との会話は苦手なんだけど……。


「そ、そうですけど何か?」

「ルーテル宰相が、精霊様の父親だという事は宰相御本人も認めていらっしゃるのでしょうか?」

「まぁ、娘みたいに思ってくれてるんじゃないですかね。奥様方にもそう言われた事はありますし」

「なんと!! ではあの噂は本当だったのですか!!」


噂??


「精霊様が宰相の養子になったという噂です」

「いえ、本当にルーベンスさんの養子になったわけではなく……」

「しかし二人きりで会ってらしたのですよね?」

「だからそれは娘のように思ってくれてるからで……私も父親のように思ってますし」

「つまり事実上親子の関係という事ですな」

「……まぁ」


なんかこの人怖い。

ルーベンスさんの部屋の前に立ってる騎士も困惑しているじゃないか。


「誤解が解けたならもういいですか」


早くこの人達から離れたい。もうロードの所に転移しようかな。


「精霊様を引き留めてしまい申し訳ありません。ご婦人の尊厳をお守りする事も私共紳士の責務ですので。どうかお許しください」


尊厳を守るねぇ……どちらかというと、こっちの粗探しをしてやろうって感じがしたけどね。


「とにかく、疚しい事は何もないので」

「はい。精霊様とルーテル宰相は親子という関係だと、先程の精霊様のご説明で理解致しました。私のような者にも分かりやすく教えていただきありがとうございました」

「……では用事があるので」


リーダーっぽい渋い声の男の目と言葉が何となく気持ち悪くなり、急いでロードの所へ転移する。




「ミヤビ!」


あれ、ずいぶんロードの声が近いな……?


「どうした? 俺の膝の上に転移してくるなんて初めてじゃねぇか?」


膝の上だと!?


デレッとした顔でぎゅうぎゅう抱き締めてきたロードは、嬉しそうに顔中にキスを降らしてくる。

おかしい。膝の上に転移するつもりじゃなかったのに。


「さっき……なんか、変な人に絡まれた」

「あ゛?」

「気持ち悪かった……」


あの目を思い出しゾッとする。

あれは何かを企んでる感じだった。ああいう目をしてる人達は地球にいた頃周りに沢山いた。人をバカにして見下して。他人を踏み台にして上にいってやろうっていう、そういう目だ。

そういうのが嫌で森に引きこもったのに、また見るはめになるなんて……。


「俺のつがいに、絡んだ奴が居るだと……ッ しかもこんなに怖がらせやがってっ」


怒りながらもぎゅっと抱き締めてくれるロードは、この状況を喜んでいるに違いない。

とはいえ、安心出来るのも確かだ。


「ゴホンッ」


ん?


「師団長、ミヤビ様、お邪魔して申し訳ありません……」


アナさん!!!? いつからそこに!?


「ずっとこちらに居りました」

「そういやぁ居たな」

「ちょっとロードっ 早く言ってよ!? アナさんごめんなさい!!」


ロードの膝の上でじたばたするが、降ろしてはもらえないらしい。突然転移してきた私が悪いのは分かっているが、ロードに八つ当たりしてしまう。


「んな事よりミヤビ。オメェに絡んできたのはどんな奴だったんだ」


頬擦りはやめろ。アナさんが呆れてるじゃないか。


「偉い感じの貴族のオジサン達だったけど……」

「オッサン達、だと」


ロードの顔が凶悪化した。眉間にシワが刻まれ、額には血管が浮き出て目が血走っている。怖い。


「師団長、確か陛下から精霊様には接近禁止命令が出ていましたよね? その者達は陛下の命令に背いたという事になります。捕縛も可能でしょうが、ミヤビ様の話では高位の貴族達のようです。相手によっては捕縛した場合問題になるでしょう」


アナさんの言葉にロードの顔がさらに恐ろしくなった。


「暗殺するか」


止めなさい!!


「しかし妙ですね。高位貴族とはいえ、陛下のご命令に背くことがあれば厳重注意や罰則を受けます。それにも関わらずミヤビ様にお声をかけるなど……師団長、ミヤビ様に当時の状況を確認させていただいても宜しいでしょうか?」


アナさん、ロードの暗殺発言サラッと流したんですけど。さすが長年ゴリラの部下をやってるだけある。スルースキルが高い!


「ああ。ミヤビ、そいつらはオメェにどんな話をしやがった」


アナさんがロード越しに状況を聞いてきたので、さっきあった事を詳しく話す。



「成る程……。ルーテル宰相とミヤビ様の関係について何度も確認されたのですね」

「おい、アナシスタ。もしかして奴ら、それを理由に宰相の地位を引きずり下ろすつもりか?」


え!? 何でルーベンスさんと私が親子みたいな関係ってだけでそんな事になるの!?


「ルーテル宰相とミヤビ様は実際に養子縁組をされているわけではありませんので、それを理由に地位を退かせる事は出来ないでしょう」


アナさんの言葉にホッとする。

びっくりした。私の迂闊な一言でルーベンスさんが宰相を辞める事になったら大変だ。ルーベンスさんに恨まれるなんて嫌だぞ。


「なら何度もミヤビと宰相の関係を確認してきやがった理由はなんだ」

「……恐らく目的は2つあるかと」

「なんだ」

「一つは陛下へ、ルーテル宰相に対して疑惑を植え付けること。これはミヤビ様との親子関係の件で宰相が王位を狙っているとでも奏上するつもりなのでしょう。宰相は現在陛下が最も信頼する臣下のお一人ですから。

二つ目はルーテル宰相とミヤビ様の距離を置かせること。今回の事でルーテル宰相はミヤビ様を執務室に入れる事を避けるはずです。ミヤビ様の名誉にも関わりますので。これにより“精霊様”がルーテル宰相を避けていると噂を広め、宰相派の貴族の力をそぐつもりかと思われます」


なんて事だ! あのオジサン達は私の存在をルーベンスさんの力をそぐ為に利用する気か!!


「ミヤビ様にお声をかけた事も、ミヤビ様の尊厳を守る為に仕方なしと罰を免れる気でしょう。師団長もそう言われてしまえば手出しできません。何しろつがいを守ってくれた者達という事になりますから」

「クソッ 小賢しい真似しやがって!」


どうしよう。万年筆で遊んでる場合ではなくなったよルーベンスさん!! 私のせいでルーベンスさんが大ピンチに!!




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