86.神王様、決意する5
不安いっぱいに控えの間へ入れば、その思いとは裏腹に腹天で眠っているドラゴンが目に入る。
「あの寝方、しんどくないのかな」
羽潰れてるよ。
「おい。アイツ本当にドラゴンか」
「自分を犬か猫と勘違いしてるって。絶対」
そんな会話をロードとしながらソファに座ろうとすれば、3人娘がドレスの裾の方向を慌てて変え、マントなどにシワが寄らないよう整え始めた。
何かごめん。
当然のように隣に座ったロードもマントの位置を調整されている。
「主様~。もう皆さん会場に集まってますよ~」
「そっか。じゃあそろそろマカロンを起こしてくれるかな」
「わかりました~」
ショコラは元気良く返事をすると飛び上がり、マカロンの腹に向かって思いっきり蹴りを入れたのだ。
『がっふぅぅぅッッ!!!?』
ドゴォォォ!! という音と共にマカロンの身体が潰れ、二つ折りになったかと思えば、『ぐ、げふっ ごふっ』と嗚咽を繰り返しながら飛び起きた。
『な、な、な、な、何!? 一体何が起きたのぉ!?』
「もうすぐパーティーが始まるわよ。バカロン」
相変わらずマカロンには厳しいショコラだ。
『えぇ~、もう始まるの? あっ 僕の羽にシワが!! 』
控室で羽を広げるのは止めろ。風か舞って珍獣3人娘がキレかけてるぞ。
『あ、ロードさんとミヤビ様だ~!! わぁキレーで格好良い~。双子ちゃんも可愛い~!! 皆お揃いの服だね~!!』
双子に顔を近付けるもんだから、ティラー姉さんに鼻を掴まれ押し戻されている。
『ミヤビ様~、ボクも皆と同じ服が着たいです!!』
ええ? 君、前と同じで良いって言ってたよね。
マカロンは前回と同じお気に入りのマント(紫カーテン)を巻いているのだが、それを私達と同じ色合いにしたいようだ。
「バカロン!! 主様になんて図々しい事言うの!!」
『え~。でもショコたんも皆と同じ色の服着てるよね~』
「だからって、今更そんな事言い出すなんて!!」
まぁマカロンだし、皆お揃いだからそう言い出すんじゃないかって思ってたけど。
『ずるい~!! 皆お揃いなのにボクだけ前と同じやつなんだ~!!』
ついに駄々をこねだした。
「うるせぇぞ!! おめぇがそれが良いって言ったんだろうが!!」
『やだぁ~!! 皆とお揃いがいい~!!』
ロードに怒られてわんわん泣き出すマカロン。
ティラー姉さんはこめかみに血管が浮き出ているし、サンショー兄さんは困った顔で双子をあやしている。ショコラは拳を握りしめ、いつでもぶん殴れる体勢をとっているではないか。
「分かった。お揃いのマントにしてあげるから騒がないの」
『本当ですか~?』
「ミヤビ! このバカを甘やかすんじゃねえ!! 放っときゃ良いんだっ」
「ショコラもロード様の意見に賛成です~。ボコボコにしましょう」
こらこら二人共。
「色を変える位手間じゃないし」
『ミヤビ様~、僕このマントはお気に入りだから、色を変えるんじゃなくって新しく作って下さ~い』
よし。このバカロンは消そう。
『僕、皆と同じ色合いで~格好良いのがいいです!! 』
「ミヤビ、だから言っただろ。コイツを甘やかすなってよぉ」
「主様~。今すぐ黙らせますのでお待ち下さい~」
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控えの間からすでに消耗している私だが、今回の双子御披露目パーティーはそれ以上の問題が待ち受けている。
色々ある内の一つが、なんと!! 地球の曲をベースにした音楽の神による生演奏をBGMに、 ダンスメインのパーティーなんですってよ!
企画したのは勿論トモコ。
私は盆踊り(100歩譲ってマイムマイム)しか踊れないんだって何度も訴えたところ、「みーちゃんは踊らなくていいよ~」って言ってくれたから安心してたんだ。なのに、
なのに何故!! こんなことになっているのォォォォ!!!?




