82.神王様、決意する1
ロードのホラー神殿には二度と足を踏み入れまいと決めてから数日。
双子を浮島の保育園に迎えに行った際、珍獣の園長から言われた一言が事の発端だった。
「神王様! おめでとうございます!!」
珍獣の園長が満面の笑みで、双子を乗せた宙に浮かぶ小型のベビーベッドを、そっとこちらに渡しながら口にした言葉に首を傾げる。
こちらの戸惑いに気付いたのか、園長は優しく微笑んで説明してくれた。
「御子様方の神力の特徴に、相違が見受けられました」
「相違? どちらも鬼神の特徴である雷の特性が強かったんじゃなかったっけ?」
「はい。昨日まで変化は無く、つがい神様の力を強く継いでおられましたが、成長するにしたがって個性が出てこられたようです」
「へぇ」
「ロビン様は変わらず雷の性質がお強いのですが、ディーク様は風の性質が強く顕れております」
双子で雷と風に別れるってつまり……
“雷神”と“風神”!!?
珍獣園長の話に驚き、すぐに双子達のステータスを確認すると、
名前: ディーク
年齢: 生後9ヶ月
性別: 男
種族: 鬼神(風神)
LV: 1
HP: 100
MP(GP): 100
装備:
神王の創った綿のベビー服(効果: 防御力∞)
神王の創ったオムツ(効果: オムツ交換の必要無し。常に快適)
神王の創った靴下(効果: 脚力向上∞。但し生まれてまもない為意味は無い)
※神力の性質は風が強いが、雷の特性もあり。
泣きじゃくると 風の神力が暴走する。
双子神として誕生した為、二人が揃うと強大な力を発揮する。
名前: ロビン
年齢: 生後9ヶ月
性別: 女
種族: 鬼神(雷神)
LV: 1
HP: 100
MP(GP): 100
装備:
神王の創った綿のベビー服(効果: 防御力∞)
神王の創ったオムツ(効果: オムツ交換の必要無し。常に快適)
神王の創った靴下(効果: 脚力向上∞。但し生まれてまもない為意味は無い)
※神力の性質は雷が強いが、風の特性もあり。
泣きじゃくると雷の神力が暴走する。
双子神として誕生した為、二人が揃うと強大な力を発揮する。
いやいやいや、どこからツッコんでいけば良い!?
思った通り“風神”と“雷神”だし!
え~と、ウチの双子は同じ鬼神だけど特性が違うと。で、二人揃ったらとんでもない力を発揮しちゃうんデスネ。つまりニコイチ。
暴走っていうのは、まだ赤ちゃんだから力と感情のコントロールが出来ず暴走の可能性もあるって事かな。
やっぱり結界張ってて正解だった。
「生まれて間もないというのに、さすが神王様の御子様です!」
「ハ、ハハ……。そういえば、神力の特性が変わるのは幼い子には良くある事なの?」
「両親の神力の特性が異なる場合は起こり得る事ですが、それでも10歳以上の子供に起こる事がほとんどです。生まれて間もない乳児では、ディーク様が初めての事だと思われます」
ウチの子規格外だった!!
「そ、そうなんだ……。あ~……と、私の力を受け継いでる可能性はあるのかな?」
「まだ未確認ですが、乳児期での特質変化はやはり神王様の影響を受けておられるのではないかと」
「う~ん。“創造主”としての力を継いでしまう可能性は低いけど、“創造主”が子供を産む事自体前例がないからな……。大変だとは思うけど、引き続き注意してみててくれないかな」
「勿論でございますっ お任せ下さいませ!」
頼もしい園長に頷き返すと、子供達と共に深淵の森へ転移したのだ。
◇◇◇
「━━━……というわけで、ディークの神力性質変化によって、双子の種族が同じ鬼神でも“風神”と“雷神”に別れたみたいなんだけど」
『性質変化の可能性は考慮しておりましたが、まさかこのような早期に起こり得るとは……。さすが神王様の御子様』
家に帰ってからヴェリウスに先程の出来事を伝えたのだが、彼女は話を聞いて頷き、フンスと鼻から息を吐くと誇らしげに目を輝かせた。
『やはり御子様方の御披露目にふさわしい時期という事ですね』
「ヴェリウス??」
『ミヤビ様、以前にお伝えしておりました御子様方の正式な御披露目パーティーですが、ひと月後で準備を進めております。後程長老から招待客のリストが届けられると思いますので、必ずご確認をお願いします』
「え? 本気でパーティーする気なの?」
『御子様方の晴れ着は、やはりミヤビ様の御手で創られるのがよろしいかと思われます。パーティー前日……いえ、2日前までには御用意いただきますようお願い致します。勿論ミヤビ様御自身とロードの衣装もですよ』
「いや、あの、ヴェリウス??」
『神々も皆大変楽しみにしております故、張り切って準備を進めなくては!!』
「もしもーし。聞いてる?」
『ではミヤビ様、私は色々とやらなくてはならない事がありますので御前失礼致します』
そう言ってヴェリウスは転移してしまったのだ。
「え~……」
パーティーひと月後って、すぐなんだけど。
呆然とヴェリウスを見送ってしまったが、何だか色々準備するよう言われたような?
ソファに座っていた身体をそのまま横に倒し、その衝撃でソファから舞い上がった埃を眺める。
「あ~……面倒くさい……」
パーティーの事を考えると億劫になっていく。仕方ないだろう。ズボラなんだからさぁ、と誰に言い訳するでもなく心の中でぶつぶつ言っていたのだが、暫くしてインターフォンが鳴り、珍獣村から長老がやって来た事で現実に引き戻されたのである。




