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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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72.ハブられてる!?


騎士団の復帰パーティーかぁ。きっと皆よく食べるだろうし、やはりビュッフェ形式は固い。騎士団ならマナーとかうるさくないだろうし、お酒とかもあった方が良いのかな?

バーベキューも捨てがたいけどどうだろう。


「ミヤビ? オメェ何悩んでんだ?」

「何って、パーティーメニューが……」

「パーティーだぁ? どこのバカがオメェをパーティーに呼びやがった! おかしな貴族に付きまとわれてんじゃねぇだろうなぁ」

「へ? 騎士団のパーティーの事だよ?」

「あ゛ぁ゛!?」


あれ? もしかしてロード、師団長なのにパーティーについて何も知らされてない系? え? サプライズなの??




王宮に遊びに来ていた私はリンと話した後、鬼の形相でトモコを迎えに来たオリバーさんと対峙し、トモコを見捨て逃げきった先でロードに捕まった。

執務室に連れ込まれ膝の上に抱えられ、当然のように書類仕事を始めたロードに諦めの境地に至り、そのままぼーっと例の復帰パーティーの差し入れ内容を考えていたのだが、ついうっかり口からこぼれてしまったのだ。


「オメェもしかして、アナシスタの復帰祝いに参加する気か?」


やっぱりロードも知ってたのか。はぁ~びっくりした。師団長がハブられてるのかと思ったよ。


「やっぱりアナさんは第2異世界人だし、ロードの大切な人だから差し入れしようと思って」

「ミヤビ………………ッ 何て出来たつがいなんだ!!」


そうだろう。そうだろう。もっと褒めてくれたまえ。



「でもな、残念だがオメェの参加は無しだ」


え゛?


「ったりめぇだ。どこの世界に職場の内々な祝いにつがいを連れて行く奴がいんだよ。男共しかいねぇ場に大切なつがいを連れて行くなんぞ頭がおかしくなってもしねぇだろ」

「な、何で!? ロードは師団長で私は師団長の奥さんでしょ? 普通、副師団長の復帰パーティーなんだから、奥さんを伴って行くもんじゃないの!?」

「勿論オメェは俺の最愛の妻だが、今回は内々の祝いで、しかもパーティーって程のもんでもねぇ。大体オメェは精霊って事で通してんだから、普通のパーティーにも参加出来ねぇからな」

「えぇ!? せっかくマナーとか関係ないパーティーで沢山飲み食いできると思ったのに!? 騎士団のBとLを見放題だと思ったのに!!?」

「おい。本音がもれてんぞ」



そんなのってないよぉぉーーーーーーーー!!!!




◇◇◇




「━━━……というてわけで、復帰パーティーには参加できません」

「やだやだ~!! 美味しいご飯を騎士団のくんずほぐれつ見ながら堪能したい~!!!」


あまりのショックにトモコの元へ報告に行けば、さすが心友。考える事は同じだった。


二人で嘆いていると、コンコンとノックの音が部屋に響く。そしてギギ……と軋む音をたてて扉が開いたのだ。

その光景はまるで地獄の使者がやってきたかのようで、トモコの顔色が悪くなっていく。


「トモコ様。子供の駄々のような声が聞こえてきましたが、一体何をされているのですか」


鬼精霊オリバーさんが現れた。


「へい!! ちゃんと仕事しているであります!!」


はい、と返事をしようとしてへい!! と江戸っ子のような返事をしてしまったトモコに、オリバーさんは呆れた目を向け、そしてこちらに気付いて跪いた。


「これは神王様。このような粗末な場へおいで下さり光栄でございます。すぐにお茶をご用意致しますので暫くお待ち下さい」

「ぁ、はい……」

「粗末って言った!? 主の執務室を粗末って言った!?」


トモコのツッコミを無視して部屋を出ていったオリバーさんの姿に、何となくこの主従の関係性がうかがえた。





「はぁ~。オリバーさんのお茶は相変わらず美味しいね」

「そう仰っていただき恐悦至極にございます」

「私とみーちゃんへの態度の差!!」


長年人間の貴族に執事として仕えたオリバーさんは、精霊でありながら執事としての腕の良さが際立っている。


「ウチの珍獣達もスペック高いけど、オリバーさんは長年執事として働いてただけあって飛び抜けてるね」

「とんでもございません。神王様の御側にお仕えされる方々と私とでは基が違いますので」


あっという間にお茶の準備をしてくれたオリバーさんは、最近天空神殿の厨房にも通っているそうで、美味しいお菓子も作ってくれるハイスペック執事と化している。


「やっぱりみーちゃんに仕える精霊はランクが違うの~?」

「トモコ様、神王様の御側に侍る方々は“精霊”ではございませんと一度ご説明したはずですよ」

「ヒィィィ!!」


墓穴を掘ったトモコは放っておいてお茶を楽しもう。


「神王様の御側役様方は神格をお持ちであり、精霊とは異なる存在です。地位でいえば10神のすぐ下にあたり、一般神より高位なのです」


そう。珍獣達は神様なのだ。

しかしヴェリウスのように“神獣”ではなく、“神王御側役”という神格を持っている。

つまり、私のお世話係的な地位の神様である。


「あ~何か聞いた覚えがあるような無いような~」

「トモコ様。座学のお時間を増やしましょうか」

「それだけはどうか御勘弁を~~!!!!」


さっきからどれだけ墓穴を掘るのだトモコ。


「そんな事よりパーティーだよ!! 参加出来ないって何で!?」


逸れた話が戻ってきた。オリバーさんは表情を崩さず、空いたカップにお茶を注いでくれている。


「それが、内々の祝いでパーティーってほどじゃないし、男ばかりの場所へは連れていけないって」

「せっかく騎士達のくんずほぐれつを見れると思ったのに~!!」


本当にね。騎士団に接触する機会なんてほとんど無いから、今回がチャンスだったのに。


「せっかくの異世界の騎士団が~」


『……そんなにパーティーがしたいのであれば、天空神殿で開けばよかろう』


唸るトモコの声に呼応するように現れたのは、濡羽色の美しい毛並みを持つ獣の神。


「神獣様。ようこそ御出下さいました」



そう。ヴェリウスである。


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