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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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閑話 ~音楽革命5~


「これしってる!! “浮島パーク”のパレードのきょくだ!!」


小さな子供の嬉しそうな声が聞こえ、次々と子供達が手拍子を始める。

コンサートといえば静かに曲を聞くという概念を持つ大人達にとって、それはぎょっとするような出来事で……しかし、その手拍子を受けて楽器達は楽しそうに前後左右に揺れだし、ノリノリで音楽を奏でているではないか。


すると大人達も手拍子をし始め、会場が一体となる。


そう。これは今までこの世界であったコンサートではなく、ショーなのだ!!


「素晴らしい……」


あのルーベンスさんからポツリこぼれた言葉に、気持ちが高揚する。

ロードを見ると、目が合って腰に回った手に少し力が入った。



子供達を楽しませた後は、クラシック……と思わせて中盤からのドラム、ギター、ベースの投入でテンポを上げ、大人を盛り上げる。

ロードはやはりテンポの良い曲が好きらしく、眉間のシワも緩んでいる。


クラシックとポップスの融合はどうやら受け入れられたらしく、皆の目が輝いていた。


新たな音楽に徐々に耳が慣れてきた所で、美しい歌声が楽器の音に重なった。

この歌声の持ち主は水の神の精霊である、セイレーン達だ。

彼女達の登場に会場の誰もが見惚れ、聞き惚れる(人族・ロード以外は)。


コンサートの中盤で歌手を投入する事は、子供達にも飽きさせず、そしてこの後の伏線として良い流れで持っていける為の演出でもある。


バラードから、アップテンポの曲までを歌いきったセイレーン達は、観客に美しい笑みを残し舞台を降りた。



そして暗転後、会場の天井が青空に変わり、皆が眩しそうに目を細め息を飲む。


舞台を見つめていれば━━━……





【舞台はとある国のとある森の中。小鳥達が囀ずり、風が木々を揺らし、太陽の光が降り注ぐ午後━━━……神王様とそのつがい神様が出会ったのは、そんな麗らかな陽気の日であった━━━……】




後半からはミュージカルという構成の今日のショーなのだが、おかしい。

内容は確かこの世界の人にウケるという理由で、勇者の冒険譚だったはずだ。


なのに何故、私とロードの出会いを語り部が語らっているのか。


「おい、ミヤビ。オメェこりゃ俺へのサプライズか?」


ほんのり目元を染めるロードの言葉に違う違うと首を横に振る。

一体どういう事だとトモコを見れば、さっきまで座っていたはずのトモコの姿はなく、愕然とした。





【ああっ なんて事なの!! 怪我を負ってしまったのね!!】


舞台の真ん中でスポットライトに照らされたのは、真っ白なドレスに身を包んだ女神…………トモコである。


【今すぐ治してさしあげます】


何か知らんが美しい音色が鳴り、光輝く演出が入る。


【ぅぐ……ッ あ、貴女は……っ なんと美しい……】


怪我をしていたらしいもう一人がライトに照らされた。そこに居たのは…………サンショー兄さんだ。


え? なんでサンショー兄さん? てか何してんの2人共。


『ふむ。これはミヤビ様とロードの物語か……』などと呟くヴェリウスに顔から火が出るかと思った。

「懐かしいぜ」と目を細めるロードだが、実際は怪しい薬は飲めないと警戒しまくってたロードに、日本語が通じないのではと必死で語っていた私という図で、こんな美しいとかなんとか一切無かった。ロマンスのロの字もありはしない。


【♪ああ、なんて逞しく素敵な方なのでしょう~♪】

【♪ああ、なんて可憐で美しい方なんだ~♪】


おおい!!!! どんなミュージカルだ!!


【━━━しかし、運命は御二人を引き裂くのです。離ればなれになった御二人は……】



【━━━……♪ねぇ、どんなに離れても、私は貴方を想っているわ♪】

【君を想わない日はない♪ 君の温もりを忘れた日はない♪ 今すぐ君の元に飛んで行きたいよ~♪】


すみませーん。捏造も甚だしいんですが。鳥肌たったんですが。


しかし会場からはすすり泣く声が聞こえてくる。


そしてクライマックスでの魔素を満たすあのシーンである。

会場の明かりが消えて真っ暗の中、


【━━━……神王の名のもとに、世界を魔素で満たせ】


鈴を鳴らすような美しい声が会場に響いた刹那、柔らかな光の雪が降ってきたのだ。


その美しい光景に、子供達は「魔素がふってきた!!」とはしゃぎ、大人はうっとりと酔いしれた。


壮大な音楽で締めくくられたミュージカルは拍手が止まず、出演者はスタンディングオベーションでもって迎えられた。




「素晴らしい舞台だった。新たな音楽も勿論だが、構成も斬新だった。妻達も楽しんでいたよ。まさか君達の出会いがあのようにロマンチックだったとは思いもよらなかったがね。またこの催しを行うようであればぜび招待してくれたまえ」


「ミヤビお姉ちゃん、コリー感動しちゃった!! コリーもミヤビお姉ちゃんのように素敵な出会いがしたいなぁ~!!」


「ミヤビちゃん、新しい音楽ってのはとっても楽しいねぇ!! それに師団長様との馴れ初めは本当に素敵だったよ!!」


これ、なんて罰ゲーム?

ロードはなんでそんなにニヤけてるの?


天空神殿の出入口から出てくる人も神も皆、楽しかったと笑顔なのだが、私だけは、誰もいなければのたうち回る程の羞恥を抱えていた。


トモコ許すまじ。


その後このミュージカルが好評を博し、出演者を変えて年に1回必ず開催されるようになろうとは、トモコを(色々な意味で)出待ちしている私には知るよしもなかった。


勿論新たな音楽は浮島に浸透し、音楽界はめざましい発展を遂げていくこととなる。

浮島が現代日本のようになるまで後少し━━━……?



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