閑話 ~音楽革命2~
「━━━……何者だ!? 止まれ!!!」
「っ何故只人が結界を通り抜けられるのだ!!!?」
「一体何が起こった!!?」
音楽の神に会いに来たのだが、結界を通り抜けた所で精霊達がわらわらとやって来て足止めをくらう形となっている。
やはりアポ無しでの訪問はダメだったらしい。
「どこの精霊も何でみーちゃんの事認識できないんだろうね」
精霊達の態度にイラっとしたらしいトモコは、目がすわっており、いつものほわほわした性格が嘘のように恐ろしい。
「私の力は普段抑えているし、世界に馴染んでいるから分かりにくいんだよ。精霊が悪いわけじゃないから」
だから落ち着いてと宥めていると、精霊達の口調がキツくなっていく。
不審者なのだから仕方ないが、トモコからすればそれも気にくわないようで、イライラが増しているのだ。
「君達の目は節穴なのかな~? 神域の結界を通り抜けてるんだから人間のはずないでしょ。お馬鹿さんなの〜??」
言ったァァァ!! トモコさん、非があるのこっちだからそんな事言っちゃダメだって!! アポ無しで来てるんだからもっと平身低頭にね!?
「な!? あ、貴女様は……ッ め、女神でいらっしゃいましたか!! も、申し訳ありません!! どうか御無礼をお許し下さい……ッ」
土下座ーーーーー!!!!?
御無礼も何も、アポ無しで家に侵入したんだから驚いて当然なのに。それをトモコがさも当然だという風に頷いている。
どうしてこうなった……。
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「申し訳ございません!!!! まさか神王様御自ら私わたくしの薄汚い神域に出向いていただけるなどとは思わず……ッ 我が眷属が大変な御無礼を!!!!」
平に……ッ 平にご容赦を!! と土下座しているこの美人の青年が、音楽の神である。
「精霊達は全員、一度教育をし直す必要がありますね〜」
と言い出すトモコにぎょっとする。
トモコ君、この神君より先輩なんだよ!?
「はい!! 我が愚精霊共はいつでも差し出す所存です!!」
身内を即売!?
「いやいや、今回はアポを取らずに来たこちらに非があるから、とにかく顔を上げて下さい。そしてトモコはやり過ぎです」
「みーちゃん。でもあの精霊達はみーちゃんに対して謝罪もないんだよ!?」
確かに、神とすぐに分かるトモコに対しては謝罪があったものの、トモコのお付きに思われている私に対しては空気のような扱いだった。が、それも仕方ない事だろう。何しろ精霊には私の力は感じられないし、きちんとした挨拶もしていないのだ。
「こっちに非があるんだから、そんな目くじらたてないの。それよりも、音楽の神にお願いがあって来たんでしょ」
「そうだけど……」
苦笑いする私に対し、納得いかないというように頬を膨らますトモコに促せば、一歩前へ出て未だ平伏している音楽の神に話し始めたのだ。
音楽の神は一見上品で穏やかそうに見える美人の青年なのだが、実はちょっと癖が強い神の一人である。
「新たな楽器と音楽ですか!!!? それは……ッ 直ぐに!! 今直ぐにお見せいただけないでしょうか!? どのような楽器なのでしょう?! 叩くとは一体!? 弦楽器!? ヴァイオリンとどう違うのですか??!! ああ!! 早く見たい!! 触りたい!! その音を聴きたいっっ!!」
子供のようにキラキラした瞳を向け、身を乗り出してトモコの話を聞く彼は、新たな楽器や楽譜を見せると人が変わる変態である。
この神の困った所は、音楽の才ある者ならば善悪関係無く加護を与えまくるその悪癖だった。
早く早くと子供のようにはしゃぐ音楽の神に、トモコですら引いているではないか。
「み、みーちゃん……」
困ったように眉を下げるトモコに、少し吹き出しそうになりながら頷くと、彼らの前にドラム、ギター、ベース等の楽器を出す。
「こ、これは!!!!」
楽器に走り寄り、いたる所を触りまくる音楽の神の顔は恍惚としておりちょっと怖い。
「ドラムはその棒で叩いて音を出し……」という説明に早速ドラムスティックを手に取り叩いて音を鳴らしているのだが、その音を聞いた途端エクスタシーをむかえた顔をしたので、神には変態しかいないのか。とうんざりしてしまった。
「ちょ、怖い怖い!! みーちゃんこの人ヤバいよ!!」
「トモコ様!!!! 次は新しい曲を教えていただけますか!」
「ヒィィィ!!」
さぁ! さぁ! と迫る音楽の神に青ざめて後退るトモコ。心友にも苦手な人はいたらしい。
「曲はまだ楽譜に起こしてないのでまた次の機会にお願いしますーーー!!」
「大丈夫です!! 曲を奏でていただければこの場で楽譜に起こします!!」
「ええ!? そ、それじゃあ一曲……ゴホンッ あ、あ~……」
音楽の神のお願いでトモコが歌いだす。
「~~♪♪~」
上手い。プロ並みのリズム感と音程の取り方、圧倒的な歌声。
なのに何故……………………
「乙女ゲームのオープニングぅぅぅ!!!!?」




