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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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61/101

61.悪い顔してますね


リン視点



スイさんから距離を取り、目の前に群がる虫を見据える。


今のオレなら━━━……

虫達を屠っている時に頭を過ったのは否定できない。


「オレは神や精霊じゃないから、絶対無理だと思ってたんだけどな……」


己の内から溢れる“力”に獣人であれば歓喜するのが普通なのだろう。だけど素直に喜べないのは、ミヤビのニヤニヤ顔がチラつくからだ。何だか無性に腹立たしくなってくる。


大体、アイツが神王様だって事も未だに信じられない。いつも問題起こすし人を巻き込むし、お人好しで騙されやすいしアホだし。神々しさの欠片も無い上親しみやすい外見で神どころか精霊だと思われてるもんな。なんなら精霊すら疑われてんのに本人もそれを全く気にしてないし。何より自覚の無さが一番問題なんだよ。


護衛も無しでフラフラしやがって。神々は何してるんだ。

こっちが護衛を買って出れば師団長から睨まれて踏んだり蹴ったりだしさ。


「……よく考えたらこの虫もミヤビが呼んだようなもんだよな」


アルに“つがい神様”の部下って言われてるけど、仰々しい呼称に騙されたら駄目だ。要は後処理係なんだよ。


切実に仲間が欲しい。オレと同じ境遇の仲間が。


神王様の後処理係がオレ一人なんて割に合わないだろ。なんなら後ろにいるスイさんとかどうだろうか。同じ第3師団の仲間なんだし、つがい神様の部下だろ。

一般隊士のオレに副師団長になれなんて無茶苦茶言う人だ。すぐ順応してくれるに違いない。


よし。一度師団長と神獣様に相談してみるか。


「そうとなれば早い所コイツらを片付けて同士を作らないとな!」


やる気が出てきたので持っていた剣を捨てると、後方の騎士(ナカマ)達がざわつきだす。

あまりの危機的状況におかしくなったと思われているのかもしれないが、本来オレが得意とするのは剣じゃない。己自身の肉体を使った肉弾戦なのだ。あえて剣を使っていたのは、双子剣を扱う師団長に憧れていたから。

だけど内から溢れ出るこの力は、騎士団で支給された普通の剣ではもたないだろう。


オレは体内に魔力を巡らせ身体能力を向上させると、その上で拳と足に魔力を纏わせる。

ミヤビ曰く、オレの魔力は風と相性が良いらしい。なので足に纏わせると圧倒的なスピードアップが図れるのだとか。

御前試合ではそれでやりすぎてしまったが、今回は手加減もいらないだろう。


足にぐっと力を込めると地を蹴りあげる。


刹那、ドゴォォォン!! という音が上がり地面が抉れて周りの風景が一変した。

オレは一瞬とも言える間に虫の群れの中へと移動していたのだ。


またもや後方からどよめきが上がる。が、もう驚いている暇はない。巨大虫が目の前に居るのだ。

勢いのまま拳を振るえば数百といた虫が蒸発でもしたかのように消えていった。


おい…………コレ、モウニンゲンジャナイヨナ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ルーベンス視点



「いつからここは港町になったのかね」

「ほらな!! 言うと思ってたぜ!!」


西門の虫の排除が終わり、戻ってきた第3師団長に問えば意味の分からない言葉が返ってきた。

それに眉をひそめていれば、「仕方ねぇだろ。オレだって予想外だよ」と頭をかき溜め息を吐く。


溜め息を吐きたいのはこちらの方だがね。


「まさか王都の地形を変えるなどと馬鹿な事をするとはな」

「だからオレじゃねぇっての!!」

「あのような事が出来るのは貴様以外考えられんが?」

「ウチの飼いドラゴンの仕業だよ!! アホだから止める間もなくやっちまった」

「やはり貴様の仕業ではないかね」

「何でだよ!?」

「ペットのやらかしは飼い主の責任だろう」


私の言葉にぐっと唸る大男を尻目に眼下に映る景色を眺める。

西門から王都の外へと拡がった海……いや、湖か。に口の端が上がる。


「まぁ良い。詳しく調査してみねばわからんが、豊富な水源が近くに現れたのだ。上下水道の開発も楽になるやもしれんのでな。それにこの“ドロップ品”とやらも役に立つ」


己の手の内にある、単第3師団長ロードが持ち帰った鉱物を見て初めて義娘(ムスメ)殿を称賛したくなった。

なにしろ上下水道計画には金がかかる。あの虫共の数だけ金目のものが出てくるというのならば悪くはない。


「うげぇ。悪ぃ顔してらぁ」

「ふん。私はこれが地顔なのだよ」

「へいへい。俺ぁ両手を挙げて賛成はできねぇが、ミヤビが望んでるんでな。せいぜい上手く使えよ」


そう言って神王様のつがい神である男は去っていった。


「言われなくともそのつもりだがね」


この王宮で最も高いこの塔からは街の様子がよく見える。先代、先々代の王と共に何度となく来たこの場所から、改めて街の景色を目に焼き付けるのだ。

今後さらに賑わいをみせる事になるルマンド王国の未来に思いを馳せて。



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