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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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60/101

60.獣人族の真なる王


レッサーパンダ獣人 スイ視点



━ 東門 ━


リン自身も言っていたように、あいつは師団長と比べれば力強さや迫力、派手さもない。

しかしそれはあくまで師団長と比べれば、だ。



「スイさん!! 奴らは確かに巨大ですが、皮膚が硬いわけでも攻撃が効かないわけでもないようです!! これなら何とかなりそうですね!!」


御前試合中に何故か髪の色が変わった後輩はそう言うと駆け出し、巨大虫に斬りかかる。


たった一撃。

いとも簡単にあの巨大虫を倒した後輩は、顔色を変える事なく次々と虫共を屠っていく。


師団長と比べさえしなければ、人類最強はこの男だと言われても否定できないだろう。


「スイさん!! ムーみたいな奴がそっちに行きました!!」


言われなくとも分かっている。なにしろ巨大なムーが身体をうねらせながら向かってくるのだから。


オレは宙へと飛び上がり、自慢の爪で攻撃する。オレの爪は硬い岩でも切り裂く事ができるのだ。


しかし、リンが剣ひと振りで屠った同種の虫は、オレの爪を弾くとその身体をぶつけてきた。

その衝撃に吹っ飛び、地面へと叩きつけられる。


「ぐはっ」

「スイさん!!?」


くそ……ッ あばらがイカれたか……。


リンが虫を切り裂きながら駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ……」


何が皮膚が硬くない、だ。滅茶苦茶硬いじゃないか。

なのにあんなに容易く切り裂くなんて、やはりリンの実力は騎士団でもトップクラスだ。間違いなくあの四天王(第3師団長は除く)にも匹敵するだろう。


日頃からリンの強さは感じていだか、コイツの髪色が変わってからは跪きたくなるような、そんな衝動がオレを支配する。


「スイさん! いくら一匹一匹が弱いからって、油断したらダメですよ!?」


油断なんてしてない。本気の一発をお見舞いしたら全く効かなかったんだ。

薄々感じていたが、もしかしてリンは…………


「スイさん?」

「……いや、オレは大丈夫だから虫を、」


虫を屠れ。そう口にしようとした時だった。

西門の方から鼓膜が破れそうな程の爆発音がしたのだ。


「な、何だ!!!?」


オレ達獣人は耳が良い者が多い為、咄嗟に耳を塞いでしまった。あれだけの音の割に衝撃波や揺れもなかったのが不可解だが、オレ達の師団長が虫共を殲滅したのだろうとは容易に想像がついた。


「リン、きっと師団長が虫を殲滅したんだろう。お前も遠慮する事はない。コイツらを一掃しろ」

「は!? スイさん何を、」

「お前が先輩達に遠慮してその実力を隠していたのは分かっている。しかし御前試合での活躍でお前の強さは皆が理解したはずだ」

「え、いや、」

「できるんだろう? こんな虫共を一瞬で屠る位」

「えぇーーー!!!?」

「今こそお前の……いや、貴方の強さを、実力を見せつけてオレ達第3師団の副師団長になってくれ」

「ちょ、ちょっと待ってください!! オレはそんな大それた事……っ」

「リン!! 第3師団には副師団長が必要なんだっ 誰もが認める圧倒的な強さを持った副師団長が」


御前試合が中止になった今、実力を示すのはこの場しかない。

オレが推服するのはロード様と、そしてリン、貴方だけだ。

だから、誰にも文句を言わせぬ程の強さをもって、その存在を示してくれ。


「スイさん……」


スイは戸惑いを捨て立ち上がると、オレに背中を向けゆっくりと虫の大群へと歩きだした。


「スイさん、巻き込まれないように下がっていてください。多分、手加減が出来ないので」


ああ、やはりこの方は…………




◆◆◆




「……昔々、我等獣人族の初代王ライオネルには、リオンというそれはそれは強い守護獣がおった。ライオネル王は心優しくも誰より強い王であり、国民にとても慕われていたのだとか。リオンはその心根の美しさと強さに惹かれ現れた━━……」

「おじいさま、そのお話はなんどもきいたよ」

「ホッホッ お爺様はこのお話が大好きなんだよ」

「ボクもすきだけどさ……」

「スイや、よくお聞き。これはただのお伽噺ではないんだ。ライオネル王が亡くなった時にリオンも姿を消したというが、王族の中で初代のような優しさと強さを併せ持つ者が現れた時、リオンの力もまた復活するのだよ」

「リオンが?」

「そうだよ。真なる王にはリオンの力が宿り、黄金の髪と瞳を持って全ての獣人族を統べる存在となる」

「すべてのじゅうじんぞくを……」

「ああ……一度で良いから、この目で真なる王を見てみたかった」

「おじいさま━━……」



◆◆◆




そう。リンこそが、


我ら獣人族の真なる王。


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