55.レアアイテムゲット!!
リン視点
「クソッ こんな奴等相手にどう対処すりゃいいんだ!?」
師団長が陣をとった西門とは反対側の東門。ここにも巨大虫の大群が押し寄せて来ていた。
王都を包囲されている状態なのだから東門どころか北も南も同じような状況なのだろう。
北はアルフォンスが行ってくれた。南はミヤビの知り合いらしいSSランクの冒険者が配置されているようだ。西は師団長自らが出陣されたのだから問題はないだろう。
だけど、この東門にはオレ以外ミヤビの関係者はいない。
何でか試合中に金髪になってしまった不思議現象の他は至って普通のオレだ。とんでもない危機に陥っているのではないだろうか。
「リンっ 御前試合で疲れてる所悪いが俺と共に前線に出てくれるか!!」
オレの所属する隊の副隊長でもあるスイさん(レッサーパンダの獣人)が指示を出す。
オレはすぐさま頷き駆け出した。
もうやるしかない。例え巨大だろうが気持ち悪かろうが、オレはこの国の騎士だ。
命に変えても民を守らないと!!
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アズマ(ロードの部下)視点
━ 西門 ━
「待てコラァ!! 師団長が簡単に倒すからってテメェがあんな巨大虫に勝てるわけねぇだろ!! さっさと門の中に戻りやがれ!!」
「あんなに簡単に消し炭になるんだ!! 私にできないわけがない!!」
「師団長と自分を一緒にしてんじゃねぇよ!? 頼むから戻ってくれない!? これ以上はオレの命も危ういから!!」
暴走した同僚に追い付き説得するも、戻ろうせず突き進むバカはどんどん巨大虫に近づいていく。
もう放って戻ろうかなと門を見れば、オバチャン軍団が門の前で檄を飛ばしてくるのだ。
詰んだ。オレの短い人生が詰んだ。
カモシカ獣人のオレの足をもってすれば、師団長の所までギリ走り抜ける事はできる……かもしれないが、このバカを背負ってとなるとどう考えても無理だろう。
バカに体当たりして気絶させながら考えを巡らす。
コイツこんなに弱いのに何で飛び出してきてんだよ!!
バカの襟首をひっ掴むと引き摺るように師団長を目指す。もう生き残るにはこれしかない。
だって門より師団長との距離の方が近い上、退路は断たれているのだから。
「9割9分死んだわ」
間近に迫る虫に、このバカを投げつけてやりたくなる。が、今は余計な事は考えず足を動かすしかない。
「おい!! 後ろから来てんぞ!!」
師団長と共闘している冒険者の一人が叫ぶ。
オレは渾身の力を込めてその冒険者側に気絶しているバカを投げると、腰にぶら下がる剣を抜き迫る虫の頭にぶっ刺したのだ。
師団長もオレの周りに集まる虫共を凪ぎはらってくれるのがわかるが、意識が回復したらしいバカが師団長の足にすがりつき邪魔している様子が目の端に映る。
何でオレあいつ助けちゃったんだろ……。
そんな事を考えていたら、頭上からムーが降ってきやがった。
終わったと思った。
「アズマァァァ!!!!」
同僚のバカでかい絶叫が耳に届く。
オレが死んだら、オバチャンが傷ついちまう。それはダメだろ。
さっきまで虫の頭に突き刺さっていた自分の剣を握りしめると、虫が消えている事に気付く。
「あれ、オレが剣をぶっ刺した虫がいねぇ……ん? 何だこりゃ…宝石?」
なんでピンチの時にそんな行動をしたのか、今となっては分からないが、その時はソレを拾わなければいけない気がして体が勝手に動いたのだ。
丸い玉みたいな綺麗な宝石が落ちているのに気付き拾ったその瞬間、その宝石がものすごい光を放った━━━……
《…………あれぇ? さっきまで浮島にいたのに、移動してる~??》
光が止み、降ってくるはずの巨大ムーは降ってこず……代わりに降ってきたのは場に似合わないアホっぽい声だった。
「げっ!! バカロンじゃねぇか!!」
師団長から発せられた声に振り向けば、師団長も冒険者も上を見上げている。
恐る恐る見上げれば、そこに居たのは…………
「ど、ど、ど、ドラゴンンンンンーーーーーーー!!!?」
黒緑の凶悪そうなドラゴンが鎮座していた。




