49.ルマンド王国最大の危機!?
王都西の門。
ルマンド王国で2番目に大きな街である王都は、その周りを塀で囲まれており、東西南北に4つの門がある。
その昔、魔物が蔓延った時代の遺物であると言われる巨大な塀は今でもその役割を十分果たせる程頑丈であり、その門も然りだ。
門には必ず門番が在中しており、主に王都を出入りする人、物品の検疫を任されている。
第3師団の管轄で、塀の内部に検疫関係の事務所や休憩所、さらに騎士団の詰所などが作られており、交番のような役割も担っているのだ。つまりこの塀は一部が巨大なビルのような作りになっているのである。
「あーあ。今頃試合盛り上がってんだろうなぁ」
「本当にな。見たかったよ。せめて師団長達のエキシビションマッチぐらいは見たいもんだ」
「言えてる。まぁ当番だし仕方ないけど」
塀の内側にある階段を上ると塀の外部に出る事も可能だが、門番が居るのは最上部の内側で、当番はそこから塀の内外を監視している。ちなみに最上部に窓は嵌め込まれていないため冬は凍えそうな程寒い。
「昨日の試合は見れたんだから良しとしないとな」
「だな………………おい、あの黒い点何だ?」
「ん? 人じゃないのか……あ? なんだありゃ。人にしちゃデカすぎるっ しかもどんどん増えていってないか!?」
「ッ……すぐ伝書鳥を飛ばせ!! 西門に居る騎士を全員集めろ!!!」
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ロード視点
「緊急連絡!! 現在正体不明の巨大生物が多数西門を目指し進行中!!!! 急ぎ応援を要請します!! なお、その巨大生物は突如現れたとの事です!!」
おいおい。ヘドロスライム(人型魔物の一部)を粉砕した途端正体不明の巨大生物だぁ? タイミングが良すぎだろう。
手の中にあるヘドロ玉を握りカルロとレンメイを見れば、二人は頷き眼光を鋭くさせる。
「恐らく、その玉を狙っているんだろうね」
「魔物の一部を消滅させてすぐのタイミングとなると、人型の魔物がその巨大生物を先導しているのでしょう」
カルロとレンメイの言うとおりだろう。
だが、王都の西側に突如現れたとなると、人型の魔物は巨大生物を召喚、または転移できると考えて良いだろう。
もし後者だった場合……
「やべぇな。王都に侵入されるかもしれねぇ」
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雅視点
「ぶぁぁ!?」
「みーちゃん何その声!?」
悪寒だ!! 悪寒がしたぞ!! とてつもなく嫌な予感がする!!
「何だかここにいてはいけない気が……ッ」
「え? でもこれから決勝戦だよ。リン君の晴れ舞台見なくてもいいの?」
「それは見たいけど、何か嫌な予感がするんだよね」
「う~ん、神王様の予感だから従った方がいいよね~? でも試合の解説もあるしなぁ……て、ロードさん達まだ戻ってこないの??」
そういえば、地下牢に行ったまま未だ戻ってきてないな。
トモコの言葉にお昼ご飯後すぐに地下牢へ向かったロードを思い出す。
随分嫌そうにあの危険物(ヘドロ玉)を持って行ったロードだが、自分で負のエネルギーが漏れないよう結界を張ってたから魔物がやってくることはないはずだ。
「王様もまだ戻ってきてないよ。もう鐘も鳴ったし試合が始まる時間なのに」
「うーん、何かあったのかな?」
神生最大の危機が迫っている事に、この時私達は気付いていなかったのだ━━━……。
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ロード視点
直ぐに陛下の元へ向かったカルロを見送りながらレンメイが近くにいた騎士達に指示を飛ばしていく。
俺も急ぎ王宮内にある第3師団の部署へと転移する。
「ッ師団長!!!?」
「ぅえ!? ど、どこから!!!?」
突然現れた俺に驚愕する部下達に告げる。
「王都西門に正体不明の個体が多数確認された!!!! 王宮内にいる第3師団は全員ただちに各門へ向かえ!!」
王宮内には第1、2師団の騎士が居る為、現在王宮内に居る第3師団を全て東西南北の門へ配置する事にしたのだ。
「試合に出場している者も全員だ!! 急げ!!」
怒号を飛ばせば、部下達は飛び上がり足音をたてて部屋を後にした。
「さて。俺も西門に向かうとするか」
久々に周りから大剣と言われている(自分では通常の大きさだと思っている)双剣を装備し、窓越しに西門を見据える。
若干の高揚に口の端が上がるのを抑えられず、深く息を吸い込んだ。
「手応えのある奴等だと嬉しいんだがな」
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サワサワ揺れる触覚に突起のある手足。それらを素早く動かしながら前へと進む黒光りするフォルム。空から地上を見れば、それが地面を覆い尽くす程で、中には羽を広げ空を飛んでいる者もいる。
雅が居れば叫び声すら出ずに気絶しただろう光景は、どんどん西門との距離をつめている。
さらに北門には無数の手足が生えた長い胴体を持つ、オレンジと黒のコントラストが気持ち悪い巨大な虫がウネウネと、たまに体を跳ねさせながら迫っていた。
当然東門に南門にも誰もが叫び声を上げそうな虫型魔物が郡をなしてやってきていたのだ。
ある意味ルマンド王国最大の危機が間近に迫っていた。




