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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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48.一難去ってまた一難


「魔物の好物って……」

「“負のエネルギー”ですね」


リンが困惑の表情でこちらを見、レンメイさんが私の代わりに答える。

しかしリンは納得していないのか、ますます困惑して首を傾げる。


「負のエネルギーを餌にって、どうやって負のエネルギーを集めるんだよ」

「負のエネルギーなんて王宮内に沢山あるでしょう」

「ああ、そういう……?? よくわかんねぇけど、“負のエネルギー”ってのは人間なら誰でも持ってるもんなんだよな?」

「そうだね」

「なら、今大勢の人間が会場に集まってるけど、それじゃダメなのか??」

「あ」


リンの言葉に、そういえば……と気付き周りの様子を伺う。

ロードは片手で口元を塞ぎ、俯いて小刻みに震えている。気のせいだろうか、耳が赤いような。くっ 笑いたければ笑え。さらにヴェリウスは溜め息を吐き、レンメイさんとカルロさんは真面目な顔でこちらをじっと見ているではないか。半笑いのトモコは放っておくとして、ルーベンスさんの無反応さには余計羞恥心がわいた。


「コホン。人型の好物はすでに集まってる状態だから、後は会場の人達の“負のエネルギー”を少しずついただいて圧縮させて、こうして……」


私の掌の中に、会場にいる人間達の“負のエネルギー”が集まり圧縮されていく。




「んだこの気持ち悪ぃ色の玉」


ロードがうげぇと唸りながら気持ち悪そうに掌を見る。

私の手には直径が10センチ程のヘドロのような色をした玉が乗っているのだ。


「これは、会場にいる人達の“負のエネルギー”の塊だよ」

「見るからに良さそうなモンじゃねぇな」


私の手から玉を取り上げてマジマジと見ているロード。それを見上げていると首が痛くなってくる。改めて自分とロードの背丈の差に驚く。


ロードって2メートル以上あるんだよね。……絶対人族だけじゃなく巨人族の血も入ってるよ。


『ミヤビ様、今作られた玉ですが……』


余計なことを考えていたら、ヴェリウスが珍しく言い淀んでいるではないか。


「なぁに? 何か気になる事がある?」

『このように純粋な負のエネルギーを作り出してしまうと、あの男の体内にある人型魔物の一部だけでなく、他の魔物も呼び寄せてしまうのではないかと……例えばその、ミヤビ様の苦手とする虫型ま「ぎゃああああぁぁぁ!!!! 捨ててぇ!! そんな危険物今すぐ捨ててェェ!!!!」……』





結局ヘドロ玉(負のエネルギーの塊)はロードが例の貴族の男の元へ持っていってくれる事になった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ロード視点




クソ可愛いつがいのクソ可愛い涙目のお願いを断れるはずもなく、このヘドロ玉を持って魔物に乗っ取られた情けねぇ部下の元にやってきたんだが……


「何でオメェらがついてきてんだ」


何故かレンメイとカルロまでついてきやがった。


「勿論その“負のエネルギーの塊”と、魔物に興味があるからです」

「俺は王族と王宮の護衛を司る師団の長として見届ける必要があるからね」


レンメイはあまりにもあけすけすぎだろ。お前本当に時期宰相候補って言われてんのか。

カルロもカルロでもっともらしい事言ってっけど、問題起こしてんのウチの師団の奴だからな。お前関係ねぇから。


「ったく。邪魔すんじゃねぇぞ」


部下に命じて閉じ込めておいた地下牢には、茫然自失で天井を見上げる男の姿があった。

ミヤビが言ってたように、負のエネルギーを喰われ始めているからだろうか。さっきの試合とは違い大人しいもんだ。


「体内に身体の一部が入っているという事は、彼から取り出すと攻撃を仕掛けてくるのではありませんか?」

「ミヤビ殿の話だと負のエネルギーに目がないという事だから、ロードの持っている玉に飛び付くんじゃないかな」


後ろからついてくる二人は緊張感もなく子供のようにはしゃいでやがる。初めて見るもんだからっていい大人がそんなにはしゃぐんじゃねぇよ。


「オメェらは下がってろ」


オレもこの手の魔物は初めてだから何が起こるかわからねぇ。負ける気はしねぇが、念のため二人には離れてもらう。


「おい。聞こえてるか」


牢越しに天を仰ぐ男に話し掛ける。すると男はゆっくりこちらを振り返り口を開くが、声は出すことなくまた口を閉じやがった。


「テメェの大好物を持ってきてやったぜ」


ズボンのポケットからヘドロ玉を取り出して見せれば、男の目が見開き、「ぁ…あ゛」と呻き声を上げたのだ。


「反応を見せましたね」

「鬼が出るか蛇が出るか、見物だね」


魔物が出るに決まってんだろ。


カルロの呟きにツッコミつつ部下の様子をうかがっていれば、口からヘドロのような色の何かが飛び出してきた。

それはべちょっと音をたてて床に落ち、ぐにゃぐにゃ動いて徐々に顔らしきものに変化していく。

ミヤビが見たら叫んで逃げ出していたに違いない。


「ヘドロ色のスライムが人の顔擬きになりやがった」


部下はその気持ち悪ぃヘドロを吐き出した途端気を失い倒れてしまったが、生きてるならいいだろう。


「なんとも品のないものですね」


魔物に品を求めるな。


「これはちょっと女性には見せられないね」


確かにつがいの目に触れさせるわけにゃいかねぇな。


「すぐに出てきやがったな」

「ロード、サンプルとしてそれの欠片だけでも採取できませんか」


何があるかわかんねぇもんをサンプルだぁ? 無茶言いやがる。


「コイツは跡形もなく消滅させる。無茶言うんじゃねぇ」


顔擬きの形になったヘドロスライムがヘドロ玉に向かって飛びかかってきた所を雷で粉砕すれば、レンメイが勿体無いという表情をしやがったので呆れた。


「随分呆気なかったね」

「拍子抜けしようがどうしようが、これでミヤビの憂いが晴れるならそれでいい」


愛しいつがいの喜ぶ顔を想像して、つい口の端が上がる。ニヤニヤ気持ち悪いとレンメイに言われたが、ミヤビからのお礼のキスの期待が膨らみすぎて気にもならなかった。


「早くミヤビに報告しねぇと「師団長!!!! 大変です!!」」


何だよ! 俺ぁ早くミヤビにお礼のキスをしてもらいに行きてぇんだよ!!


バタバタと足音をたてて地下へとやってきた部下の慌てた声に眉をひそめる。




「王都西門の門番から緊急連絡!!!! 突如巨大な虫の集団が沸き出てきたとの事です!!!!」




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