46.守護獣リオン
「あれは……っ まさか、本当にそうなのか? あれが伝説の“獣王”。全ての獣人を統べる━━━……」
リン視点
「リン!! お前とうとう“リオン”になったんだな!!」
心は疲弊しているのに何故か身体には力が漲っている事を不思議に思いながら舞台から降りると、アルフォンスがおかしな事を言ってきた。
「何言ってんだ。オレの種は猫で“リオン”じゃない。そもそもリオンは想像上の生物だろ」
「何言ってんだはこっちのセリフだっての! お前鏡見てみろよ。髪も目の色も全く違う上、魔力量と物理的な力も比較にならない程上がってっからな!」
は? 目と髪……?
目の端にチラリ。見えた金色に一瞬意識が飛びそうになった。
「み…………」
「み?」
「ミヤビィィィーーーーーーーー!!!!」
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雅視点
「あ、リンが何か叫んでる?」
「なんかみーちゃんの名前叫んでない?」
心の中でリンに謝っていたら、どうやら当人にバレたのかひどくお怒りのご様子です。
「あ、なんか走り出した……控室に戻ったのかな?」
トモコがリンの行動を実況する中、私はレンメイさんとロードの呆れた視線から逃れようとじりじり後ろへ移動していた。
しかし、
「ミヤビ!!!!」
先程まで舞台上に居たリンに、後ろを塞がれたのだ。
金髪の少し伸びた髪を靡かせ、金色の瞳をこちらに向けたリンにたじろぐ。いつもと違うので何だか戸惑ってしまう。
元々顔の造りが端正な事もあり、金髪に金目になると王子様感が半端ないのだ。いや、(獣)王様なんだけどね。
「り、リンさん? 何か??」
「何かじゃない!! 何だよこれ!? 髪の色は変わってるし、何か魔力量とか力とか上がってるらしいし!!」
それは君が進化したからだ。ポ○モンみたいにな。
「絶対お前が関わってるだろ!? 」
「リンさん!? それは冤罪ですよ!!」
「こんな急に姿が変わるとか、お前以外いないだろ!!」
「ち、違うからね!! その姿になったのはリンが王族だからでしょ!! 私のせいじゃないもんね!!」
リンの言いがかりに反論するが、誰一人私を助けてくれる人はいない。
リンの後ろに居たアル君は私の前だからか、膝をつき頭を垂れているし。
「まぁ元を辿ればみーちゃんのせいではあるよね」
助けてくれるどころか心友を売りやがった。
「やっぱりお前の仕業じゃねぇか!!」
「ち、違うから!!」
ロードよ、旦那なんだからこういう時に助けてくれ!! と目で訴えれば、ロードははぁと溜め息を一つ。
見捨てられた。旦那にすら見捨てられる私って一体……。
『リンよ。貴様神王様に対しなんと無礼なっ』
ヴェリウスーーーー!!!! 味方は君だけだ!!
「ッ神獣様。そして宰相様、師団長様方。取り乱し、この場をお騒がせして申し訳ありません」
ヴェリウスの一喝で少し落ち着いたのか、周りを見て恐縮し謝罪するリンに、「え、私には?」と思ってしまうのは当然だろう。同じように「え、私には?」と言っているのはトモコだ。
「━━━……だから、リンの血筋は真の王に至る者だけが金髪金目になるんだよ。今のリンは猫じゃなくて“リオン”? っていうのになってるねぇ。何? “リオン”って」
リンを落ち着かせ、休憩に入った事でルーベンスさんの部屋に移動した私達は、ロードの作ってくれた豪華なお弁当を食べながら話していた。
『“リオン”とは、神王様が御隠れになって暫くして生まれた幻獣です。地球でいうライオンとやらに羽根の生えた生物だと思って下さい』
「確か伝承では、獣人族最初の王“ライオネル”の守護獣で、王と共に数々の偉業を残した聖獣だと学んだ事があるよ」
ヴェリウスとカルロさんが“リオン”について簡単に教えてくれる。なんとわかりやすい説明だろうか。
「ん~? つまりリン君は、守護獣“リオン”になってるの~??」
『馬鹿者。獣人が幻獣になるはずなかろう。そうではない。初代獣王の守護獣であった“リオン”は、代々の王の守護獣として発現するのだ。王の“力”としてな』
「リオンが姿を現す……ではなくて、“力”として発現~?」
『そうだ。リオンの身体は初代と共に失われたが、その力は王の血に残り、そして真の王となった者に発現する』
トモコの間の抜けた質問にヴェリウスが鼻を鳴らして答えている。リンはそれを聞いて「ミヤビのせいじゃなかったのか?」と小さな声で呟いているが、それは声を大にして言ってほしい。
「さてリン。獣王として目覚めた君は、フェルプローム国から2つの意味で狙われるでしょう。そして、フェルプロームだけでなく、他の獣人の国からも狙われる事となる。“獣王”とは、全ての獣人を統べる王なのですから」
レンメイさんがメガネの位置を整えながら、その鋭い眼光でリンを射る。
「前にも一度伺いましたが、状況が変わってしまった今、もう一度問います。貴方はどうしたいですか?」




