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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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45/101

45.リンの進化


リン視点



苦しい…………オレはこのまま死ぬのか?



黒い沼に飲み込まれてからどの位経ったのだろう。


まるで水の中のように息苦しいここは、目を開けても真っ暗で何も見えない。

そんな中で意識を少しでも保っていられるのはミヤビの加護のおかげなのだろうか。

だけどもう限界だ。目の前が朦朧として…………


オレは、負けたまま死ぬのか。


「ぐ…ッ い、やだ……っ」


師団長の前で、無様に負けたまま終わるなんて……絶対、


「そんなの、絶対に嫌だ!! オレは……オレは、」



憧れて憧れて、やっと掴んだ夢を……オレを騎士にしてくれた人達の為にも、絶対に



「負けるわけにはいかないんだぁぁぁ!!!!!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





雅視点



リンが無事に出てくる事は分かっていた。

私の加護は勿論だけど、私の加護が無くてもリンは生きて出てきただろう。


何故なら━━━……



「何?」

「え……? 黒い沼が、光っている!?」


黒い沼が突如光を放ち、観客達が戸惑うように注目しているその最中、


「負けるわけにはいかないんだぁぁぁ!!!!!!」


ドォォォーーーン!! と擬音がつきそうなほど派手に光の中から飛び出してきたのはリンだった。


勿論皆驚いていたが、しかし観客がもっとも驚いたのはその外見。


黒い沼から出てきたリンの栗色の髪は、肩まで伸びて黄金に染まり、短毛種のあのしなやかな尻尾はライオンの尻尾に変化しているではないか!!


そう。リンは、猫からライオンに進化したのである。



飛び出してきた体勢のまま持っていた剣を宙で振るえば、剣圧で対戦相手が吹っ飛び、観客席側の壁にぶつかってそのまま場外へと落ちる。まさかリンが黒い沼から出てくるとは思っていなかったのだろう。かなり無防備に吹っ飛ばされていた。

対戦者がぶつかった観客席側の壁にはヒビが入り、その衝撃を物語っている。


呆然としていた審判が慌てて場外へと走り、気絶したのを確認してリンの勝利を口にしたのだ。


それを聞いた観客達はあまりの驚きに一瞬言葉を失っていたが、その後は大歓声とともにリンが沼から無事に出てき、勝利した事を喜んだ。





実は、リンが私のせいで自身の力を使いきれていないと気付いた時、私はリンの鑑定を改めてしていた。

その時に獣人の王族の中でも真の王へと至れる者だけが進化できる事を知ったのだ。


すなわち、ライオンに進化したリンは真の王、“獣王”なのである。


「おいミヤビ。ありゃ何だ」


ロードが顔を引きつらせてこっちを向いた。


「それがさ、獣人って王族の中でも真の王に至る事ができる人だけ進化できるんだって。進化は命の危険にさらされた時とか、とにかく自分が成長しなきゃって思った時にするらしいよ」


言えばロードは頭が痛いというような顔をしてレンメイさんを見た。

レンメイさんは「マズイですね……」と少し焦りを匂わせるように呟く。一体何がマズイのだろうか? とロードを見れば、


「フォルプローム国の一部の奴等はまだリンを王にしようと狙ってんだよ」

「それだけでなく、今リンがフォルプロームの王族だと知られれば、民主主義派の中でも一部の過激派が彼を殺そうと躍起になるでしょう」


ロードとレンメイさんの言葉に、まだそれ終わってなかったの!? とトモコを見る。

トモコも大司教の事件で有耶無耶になっていた為忘れていたらしい。目を真ん丸くして口を開けていた。


「しかし、王だけが進化するとなると……フォルプロームの上位貴族、もしくは王家の関係者はその事実を知っている可能性があります。そうなればもっと厄介な事に……」


ヤバイ。この試合、巨大モニターで外の人にも観戦できるようになってる!!

もしもフォルプロームの人が見ていたら…………リン。ごめんよ。


片膝をつき、肩で息をしているリンを遠くから眺めながら心の中で謝ったのだ。

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