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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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39/101

39.全ての元凶は神王様


リン視点



「よしっ よくやった!!! 自分の力をもて余したような戦い方は格好悪かったけど、雑魚だったからな。仕方ねぇよな!!」


悪かったな。格好悪くて。


舞台脇のベンチで待っていたアルがオレの肩をバシバシ叩きながらよくやったと自分の事のように喜んでいる。

悪い気はしないが自分の力に戸惑っている今、複雑な気分だ。


「てか、お前何であんな戦い方したんだよ。雑魚も全力でぶっ潰す派なわけ?」

「どんな派閥だよそれ」


アルの言うような雑魚を全力で。とかではなく、槍の名手だって聞いたから武器を構える前に間合いに入らないと、と思い切り地面を蹴っただけなんだ。

まさかあんなに勢いがつくとは思わなかったし、最近は対戦式の訓練もあまりさせてもらえなかったから、筋トレばかりだったんだよ。今思えばそれは貴族派の嫌がらせの一環だったのだろうけど。


「お前は神王様のお側に居る事が多いから、能力も上昇したんだろうな」

「原因はやっぱりミヤビかよ……」


分かってた。分かってたけどな。


「さすが神王様だよな!! まぁ実際あの方のお側に居られる人間なんて限られてるから、胸を張っていいんだぜ!!」


胸なんて張れるわけないだろうが。


オレはミヤビが座っているであろう場所(師団長の後ろの席)へ目を向けて溜め息を吐いた。

その際に師団長に睨まれたのですぐ目を反らしたけどな。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





雅視点



瞬く間に勝利してしまったリン。さすが(ヴェア)を一人で倒してしまうだけはある。

呆気にとられる観客達の為にスローモーション映像をモニターに映し出せば、どよめいていた人々はまるで映画でも見るように喋らなくなり、しかし相手の選手が地面に背中をつけたシーンを見た途端、スタンディングオベーションである。

何千、何万の人々が一斉に立ち上がり大歓声とアクションを起こす様は、本当にワクワクした。

これぞスポーツ観戦の醍醐味だろう。


当の本人であるリンはそんな大喝采の中で呆けた顔をした後、そそくさと舞台を降りてしまうものだから、舞台に近い観客達から照れ屋だなんだとからかわれていた。


「何かリン君、みーちゃんと同じような戦い方してたね~」


トモコよ。それは言わない約束だろう。

真面目に戦ったら思ったより自分の力が凄くてビビったリンの気持ち、私にはよく分かる。


「お前のそばに居るだけで魔力がどんどん上昇すんだ。そりゃ自分の能力に戸惑うのも当然だろ」

「ロードさん、私のせいみたいに言うの止めてモラエマス?」

「100%オメェせいだ」


身長に比例した長い手で後ろの席にいる私の頬を摘まんでくるロード。しかしその話にすぐさま反応したのはレンメイさんだった。


「ミヤビ殿の側に居るだけで魔力が上昇するのですか!?」

「あ」


そういやぁコイツら居たんだっけか。という表情で「あ」と声を出したロード。友達だし気が緩んでたのはわかるが、わりと機密事項だろう話を人間の前で普通にしてしまっていたのは問題ではなかろうか。


「よしミヤビ。コイツらの記憶を消せ」


消せってアンタ。それで問題が丸っと解決すると思ったら大間違いだからね。


「ハハハッ さすがミヤビ殿は規格外だねぇ。でもそれだと、王宮のほとんどの人の魔力が上がってるって事にならないかい?」


ロードの発言など無かったかのように話に入ってくるカルロさん。

この人繊細な人だと思ってたけど、案外神経が太いというか、大雑把な人だよね。私の能力を規格外の一言で済ますし。


「王宮で働く者達からは魔力の上昇などという現象の報告は上がっていませんよ。私もですが、カルロや陛下の魔力の上昇も魔素が満ちた事が起因の上昇という僅かな変化ですしね。急激な魔力上昇はミヤビ殿の側に居る事の他にも条件があるのでは?」

「そういやぁそうだな。あまり深く考えてなかったが、オメェらはそんなに魔力上がってねぇもんなぁ」


レンメイさんの話にロードが顎に手をあてうーんと考え込む。非常におっさん臭い動作だが、しっくりくるのは外見も中身も間違いなくおっさんだからだろう。


「確かに考えてみれば、みーちゃんと仲が良い人は魔力の上昇があるのに、同じく仲が良いレンメイさんもカルロさんもそうじゃないもんね~。不思議~」


いや、レンメイさんもカルロさんも私からしたら旦那の友達であって私の友達ではない。仲が良いかと言えばそれはまた別の話なのだ。多分自分の家族枠や友達には無意識に加護を与えているのだろう。だから魔力が上昇したと考えられる。

でもそんな事を言ったら何か微妙な雰囲気になりそうなので黙っていよう。


「あ、もしかして親密度がある程度ないとダメなのかも~」


トモコさん黙って。


「親密度だぁ? ならオメェはミヤビとリンの親密度が高いって言いてぇのか。あ゛ぁ゛?」


ロードのこめかみに血管が浮いて眉間のシワが深さを増す。このヤクザ以上悪魔未満な顔は、キレる直前だ。


「違いますぅ。親密度とかじゃなくて、本人が魔力の上昇を望んでいないと魔力は上昇しないんですぅ」

「魔力の上昇を望まない人っているの~?」

「カルロさんとレンメイさんは望んでないから上昇しなかったんですぅ」

「え~?」


納得いかないというトモコと、私の言葉に若干表情が緩んだロード。

そしてここで追い風が吹いたのだ。


「確かに魔力の上昇を望んだ事はないね」

「言われてみれば、私もそのような事は考えた事もありませんでした」


奇跡である。


本人達の肯定にロードも元のゴリラに戻ったのでホッとする。

誰も傷付けることなく話が終わって良かったよ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「あんなに一瞬で、しかも平民に負けるなど、何とも無様な結果を晒したのだな」

「も、申し訳ございません。油断していたとはいえ、想像以上に強く…「言い訳はいらん!! 次奴が勝てば、私とあたる事になるのだ。たかが平民と剣を交えるなど気分が悪いっ」」

「“シルファー様”、お気をお沈め下さい。我々にはあの“呪術”があるではないですか。いくらあの平民めが強くとも、貴方様が負けるわけはないのですから」

「そんな事は分かっている! 私は平民と剣を交える事自体が嫌なのだ!! っもう良い!! 私はしばらく控室に居るのでな。時間になったら呼びに来い。わかったな!」

「「はっ」」


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