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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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33/101

33.殺陣の出番


異空間から“ヒッキーの棒”を取り出すと、舞台へと上がる。


「お、おい、嬢ちゃんっ 何言ってんだ!?」

「お前さんが模擬試合なんぞ出来るわけないだろう!?」


ビッグフットの指示通りに模擬試合を始めようとしていた双子のドワーフ達が慌てて止めにくるが、私はヒッキーの棒を腰に差し前を見据える。


「大丈夫。時代劇を見続けてきたこの私をなめないでもらおうか」

「ジダ……?? 何言ってるかよく分かんねぇが、嬢ちゃんの細っこい腕を見りゃ剣を使えねぇのは分かる。悪いこたぁ言わねぇからさっさと舞台を下りな」

「そうだぜ嬢ちゃん。一般人の女を相手に武器を向けるなんざ後ろ指さされちまう」


双子のドワーフは舞台に立った私の相手をする気はないらしく、持っていた武器を仕舞うとそう言って首を横に振る。

手伝いをしようと思ったのに、ここまで断られるとは。


「大丈夫です。怪我しないように結界も張ってるし、そちらの武器もヒッキーの棒にしてくれれば問題ないですよね?」


ヒッキーの棒のお礼をしたい私はそれでも何とか懇願する。すると、「仕方ねぇなぁ」とやっと折れてくれたドワーフ達にへらりと笑う。


「すみませんね~。ヒッキーの棒のお礼をしたくて」

「嬢ちゃんよ、そりゃ礼じゃなくて邪魔……ッ「馬鹿野郎!! 失礼な事言うんじゃねぇって何度言わせりゃわかるんだ!!」いっってぇぇ!!!!」


ビッグフットに殴られたギャリック……じゃない、ガニッシュは頭を押さえてのたうち回っている。相当痛かったらしい。


「嬢ちゃ……お嬢様、こいつらじゃああんたの相手にゃ力不足だ」


“お嬢様”って……。


「代わりに俺が相手をしますんで、それで許しちゃくれねぇか? 勿論あんたの相手にゃ俺も力不足だとは思うが、コイツらよりはマシだと思ってほしい」


ビッグフットが自分の弟子達を後ろ手に庇いながら必死に言い募ってくるので、段々自分の行動がお礼じゃなく邪魔をしてるんじゃないだろうかと思い始める。


「足元の引っ掛かりがないかの確認なので、どなたが相手でも特に不満はありませんよ??」

「申し訳ねぇ。それと、ヒッキーの棒は今持っちゃいねぇから、一度店に取りに戻ってもいいかい?」


これやっぱり邪魔してるよねぇ!?


「ヒッキーの棒ならコピーするから大丈夫です!! はいッ どうぞ!!」


武器屋に戻ろうとするビッグフットを慌てて止めて、持っていたヒッキーの棒をコピーし渡す。


「こ、こりゃあ……ッ」


何故かゴクリと喉を鳴らし、渡したヒッキーの棒を凝視しているビッグフットに首を傾げながら舞台の端へと移動した。

双子のドワーフは訳が分からないという表情ながらも、親方が相手をするならと舞台を降りていく。


「みーちゃん!! 本当に試合するの!?」


トモコが心配そうに観客席から声を掛けてきたので、「子供達をお願いね」と手を振り応える。「ロードさん呼んできた方が良い!?」と叫んでいるので、それは止めろと返してビッグフットを見た。

ビッグフットはいつの間にか私とは反対側の端に立ち、真剣な顔で此方を見ていた。


さて、時代劇を見続けてきた私の実力をいよいよ発揮する時がきたようだ。


ピリピリとした空気が流れる中、ドワーフの兄の「始め!!」という声を合図に腰に差したヒッキーの棒へと手をかけたのだ。






ビュッ!!


空気を切る音と共に顔の前をヒッキーの棒が高速で横切り、何故か横からドンッと爆発音が聞こえる。ついでにガラガラと瓦礫が崩れ落ちる音まで耳に届き、ぶわっと汗が噴き出した。



何の冗談デショウカァァァ!?



何でただの棒ごときで観客席と舞台の間の壁が破壊されてるのォォォォォォ!!!!? やっぱりヒッキーの棒って最強の武器だった!? それともこのビッグフットの戦闘力がサ○ヤ人!?

ヤバイ。ヤバイぞ。こんなの時代劇を見続けて覚えた殺陣(タテ)の出番がないじゃないか!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




親方(ビッグフット)視点




なんという圧倒的な“力”か。



目の前の計り知れない、強大で神秘的な力を前に足がすくむ。しかし、この御仁が望む事は自分との試合だ。ここでやはり無理でしたと言おうものなら、今度こそこの命は……いや、弟子共々消されるかもしれん。


気を抜けば崩れ落ちそうな足を叩いて気合いを入れ、震える手に力をこめる。


手に持つヒッキーの棒は、これまで出会ったどの武器達よりも強力で、もしこの御仁と対峙していなければ何日だって眺めていたくなるような逸品であった。

死ぬ前にこんな素晴らしい武器を手に出来るとは、武器屋冥利につきるものだと、恐怖と同時に高揚する自身の心に困惑する。


もう一度目の前の御仁に目をやれば、やはり跪きたくなるような力に息が止まる。


もしかしたら、俺がこの世に生まれたのは、この御仁の望みを叶える為なのかもしれん。


ならば俺の全力を持って、この御方の望みを叶えよう。


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