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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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32.ヒッキーの棒再び


「はぁ~酷い目にあった……」

「も~。みーちゃんの自業自得でしょ~」


やっと人気フードを購入できたのだが、あまりにも目立ってしまった為と子供達がぐずり始めた事で、逃げるように人の居ないコロッセオに戻る事にした私達。


「まさかあんな事になるとは思わなくて。それよりコロッセオの観客席で早くこれを食べよう!」


袋に包まれた人気フードから香るその匂いにゴクリと喉が鳴る。


「そうだね~。この世界の食べ物とは思えない位美味しそうな匂いしてるもんね~」


そう。この飯マズな世界では珍しくヒットしそうな食べ物なのだ。食べるのが楽しみでならない。


ウキウキと先程居た観客席に転移し、またベビーベッドを出してぐずっている双子を宥めながら寝かせると、早速手に持っていた人気フードの包装を剥いでいく。


中から出てきたのは、熱々の手のひら大のパイのような何かだ。

形は四角形で、揚げたての見るからに美味しそうなファストフード。こんがり狐色にテンションが上がる。


「ふぉ~!! 美味しそ~~!!」

「ヨダレが溢れてくるね! 早速食べてみよう!!」


トモコと同じタイミングで口に含むと、サクッとした音とともに肉汁が溢れ、口の中にジューシーなお肉の味と香辛料、そして野菜の甘味が広がった。


「ん~~~ッッ」

「こ、これは!!」


パイかと思っていたが、これは…………ッ


「「揚げ餃子だ!!!!」」


トモコと顔を見合せて頷きあう。


「みーちゃん!! これ見た目はパイっぽいのに味は餃子だよ!! しかもめちゃくちゃ美味しい!!」

「これは今まで食べた揚げ餃子の中でも一番かも!」


揚げ餃子自体あまり食べた事ないけどさ。


それにしても、飯マズの世界でここまでの料理が食べられるなんて……これは期待できるかもしれない。


この世界のご飯に絶望していたが、たった一度料理人に美味しい料理を食べさせたらこれなのだ。もしかしたらこれから料理革命が起きるかもしれない。


そう期待に胸を踊らせていた時だった。


「あ~俺も屋台で買い食いしまくりてぇよ。なんで武器屋が舞台の修理なんざしねぇといけねぇのよ」

「仕方ねぇだろ。人手不足の上、こういう修理が得意な人間が俺らぐれぇなんだからよぉ」


舞台上から何かを削るような音と共に、そんな声が聞こえてきたのだ。


「テメェら!! 文句言ってねぇで手ぇ動かせ!!」

「「お、親方!!」」


聞き覚えのある声に舞台上を良く見ると、小人族ドワーフの双子とビッグフットが大きな声で話しながら穴の空いた場所から瓦礫を撤去したり周りを削ったりしているではないか。


「あれ~あの人達どっかで見たことあるような??」


トモコが首をひねりながらう~んと唸っている。

私も見覚えがある顔に誰だったかと考える。


「あのビッグフット、どこかで…………あ!! 武器屋のドワーフ達だ!!!!」


“ヒッキーの棒”をくれた気前の良い武器屋の人達じゃないか!!!





「おーい。おじさん達~!! 久しぶり~」


私の言葉に思い出したのか、トモコが手を振りながら舞台上の3人に声を掛ける。


「ん? 嬢ちゃんは…………!? あの時の“ヒッキーの棒”の!!!!」


お互いに覚えている共通点が“ヒッキーの棒”って。


「おじさん達武器屋から転職したの~?」

「してねぇよ!!!! 相変わらず失礼な嬢ちゃんだな!?」


相変わらずツッコミ気質なドワーフだ。


「てか、ここは立ち入り禁止だぞ? 何で嬢ちゃんらがここに居るんだ」

「私達は屋台飯を静かな場所で座って食べたくて~」

「それで侵入したのかよ!? とんでもねぇじゃじゃ馬だな!?」

「子供もいるしね~」

「おいおい、まさか嬢ちゃんが親になったのかい!?」

「違うよ~。産んだのこっち」

「ああ、平凡顔の嬢ちゃんか」


平凡顔で悪かったな。

確かこの失礼なドワーフの名前は……ギャリック、


「ガニッシュだよ!!」


あ、口に出てたみたい。


「しっかし平凡顔の嬢ちゃんは色恋に縁が無さそうだが、そうかぁ、あんたに子供がねぇ」


本っ当に失礼だな!!


「ガニッシュ!! その方々に失礼な態度を取るんじゃねぇ!!」

「あいたッ」


失礼なガニッシュの頭を真っ青な顔をしたビッグフットが殴った。


あの時は何とも思わなかったが、良く見るとこのビッグフット、僅かに神の血が混ざってるようだ。なるほど、私達の事に何となく感づいているのかもしれない。


「ガニッシュが申し訳ねぇ!! どうか許してやっちゃくれませんかっ」


そう頭を下げてくるので、すぐに「大丈夫です。怒ってないので」と返す。やはり感づいているようだ。ついでに「あの時は“ヒッキーの棒”をありがとうございました!!」とお礼を言えば、驚いたように目を見張るビッグフット。

“ヒッキーの棒”を使うような出来事はないのだが、貰ったもののお礼はきちんとしなければならないだろう。


「おじさん達、その穴はどうやって直すの~?」


トモコが補修工事に興味を持ったらしく、そんな事をドワーフ達に聞くと、「あ゛? 補修材を流し込んで平らにして固めんだよ」と返事があった。


「俺らの親方が魔法使えっからな! 固めるのも時間かからねぇしこんな穴ちょちょいのちょいで補修できらぁ!!」


ガニッシュの双子の兄が胸を張る。


「へぇ~すごいね~。見てて良い?」

「そりゃかまわねぇが……」


兄の方はチラリとビッグフットを伺い、ビッグフットは鷹揚に頷くと作業に戻ったのだ。


補修作業は地球の道路補修に似た感じで進み、しかしスピードは比べ物にならない程早く、あっという間に舞台の穴は塞がった。


「ほぇ~本当にあっという間だ~!」


ウチの双子をあやしながらその作業を見守ったトモコは、ドワーフ達に賛辞を送る。

それを受けて胸を張るドワーフ達は案外と可愛いものだと微笑ましくなった。


「さて、もう固まったようだ。オメェら!! 模擬試合して引っ掛かりがないか確認してみろ!!」


ビッグフットはそう双子のドワーフに叫ぶと舞台を降りる。

なるほど、模擬試合で確認かぁ……



「ビッグフット……じゃない。親方!! その模擬試合、私にさせてもらってもいいですか?」

「え? みーちゃん…??」


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