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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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28.リアルな戦い


ガキンッ と金属と金属がぶつかるような音に心臓が跳ねる。


今目の前で行われている試合で剣と剣が交わった際に発生した音なのだが、アニメで見るような音やスピード感とはまるで違うのだ。

もっと重い、耳に残る音と言えばいいのか。振り下ろしたスピードも武器の重さを感じさせるような生々しさで、何とも心臓に悪い。


「これはかなり重い一撃のようです。自身の筋力と体重を上手く使った攻撃でしたね。通常であれば腕が痺れ武器が握れなくなるでしょう」


いつの間にかノリノリで解説しているレンメイさんに、ハッとして自分の仕事を思い出す。

今の私は観客ではなく実況なのだ。ボーっとしている場合ではない。


「素人でも分かる程の重い一撃でしたね! さすがベテラン冒険者です!! しかし元騎士のジェント選手も耐えた上での反撃!! とても腕が痺れているようには見えません」

「そうですね。咄嗟に剣の角度を変えて攻撃を受け流したのでしょう」

「剣の角度を変える? 成る程、では先程のシーンをリプレイしてみましょう」


レンメイさんの解説後、巨大モニター4つの内2つにリプレイ画像を映し出すと観客がどよめき、一瞬戸惑ったレンメイさんだったが即座に順応して詳しく解説し始める。


この人、実は解説が初めてではないのか? と思わせる程上手い事に感心する。

観客達もレンメイさんの解説に聞き入っているようだ。


「体格の良いディアゴ選手に比べ、ジェント選手は身軽な印象を受けますね。これはジェント選手が不利なのではないですか?」

「確かに体格によって力強さやリーチの長さで有利になる場合もあるけど、スピード面では小さく身軽な方に利があるからね。一概にどちらが不利とは言えないと思うよ」


私の言葉にカルロさんが答えた刹那、会場が揺れる程の黄色い絶叫が上がった。試合中の二人もそれには驚き動きが止まってしまう。

さすがルマンドいちのモテ男だ。


「あ゛ーーーうるせぇ!!」と耳を塞ぐロードに、「声だけでこの騒ぎですか」と半分呆れているレンメイさん。うんうんと頷く国王とニコニコしている王妃。反応は様々だが、今は試合中なのだから、ディアゴとジェントに注目してあげてほしい。






このように異様な盛り上がりを見せる会場だったが、会場外も巨大モニターが現れ中の様子と試合が見れる為、かなり盛り上がっていた事は言うまでもない。



「料理長!! 外からでも中の様子が見れるなんてすごいですね!!」

「神々のサプライズだからな!! っと、俺達はロヴィンゴッドウェル家とミヤビ様の為に早く“ピロシキ”を完成させねぇとな!! 今はまだこんなもんしか出来てねぇが、幸いうめぇと食ってくれるお客様が居んだ!! 口動かしてないで手ぇ動かせ!!」

「は、はい!!!!」


そして、私がロヴィンゴッドウェル家を訪れた時に、次に行くまでに“ピロシキ”を自力で完成させてとお願いした料理人達が、修行の旅の最中ルマンド王都で屋台を出し、試作段階のピロシキもどきで人々の心を鷲掴みにしているなど知るよしもなかったのだ。


その試作品が後に、“揚げ餃子”という新たな料理として後世に伝えられていくことも━━━……




「━━━……勝ち進んだのは、ディアゴ選手!!!!」


結局ベテラン冒険者ディアゴVS元騎士ジェントは、実戦経験豊富なディアゴの勝利で幕を降ろした。


しかし、実際本物の剣を使用した試合というのは迫力があった。

今まで戦うシーンを見る機会はあまりなかった(見たことがあるのはロードの一方的な弱いものいじめか、現実感のない次元の戦いだった)のでリアルさを感じていなかったのだ。

そう思うと今回の祭りはとても貴重な体験に思える。



「さあ、第2回戦は━━━……なんと!! 幻のSSランク冒険者、バード選手VS謎の美青年ガット選手です!!」


トモコの選手解説に「はぁ!?」と声が出たのは仕方ない事だろう。

何故なら、幻のSSランク冒険者はトリミーさんの旦那さんで、謎の美青年はトモコの精霊であるガットだったのだ!!


「ちょっとトモコ!? トリミーさんの旦那さんはまだしも、なんでガットが出場してるの!?」

「いや~レベルが低いと退屈でしょ? だからウチの精霊をこっそり投入しておきました~」


そう言ってヘラリと笑うトモコに、盛大に顔が引きつった。

ロードにも絶対怒られると思いチラリと様子をうかがうが、驚くことに機嫌良く舞台上を見ているではないか!!


「な、何であんなにご機嫌なの!?」

「ロードさんって戦闘狂な所があるでしょ~。強い人の戦いを見るのも好きなんじゃないかなぁ」

「ロードって戦闘狂なの!? 初耳なんですが!?」

「やだな~。どう見ても戦闘民族みたいな外見してるでしょ~」


外見で判断!?


アハハと笑うトモコを横目に双子達を見る。

この子達の将来は大丈夫だろうかと若干の不安を覚えたのだ。


「人類トップクラスの実力を持つ冒険者と人外の戦い。嫌な予感しかしないよ……」

「一応ガットには人類の域を出ない戦い方をするようには言ってるから大丈夫だよ~」


自分の主に無理難題を押し付けられたガットが可哀想になる。


いつもロードがしているような大きな溜め息を吐きながら実況へと戻れば、舞台上ではすでにやる気満々の二人が互いの力をはかっていた。

緊張感がこちらにまで伝わってくるのだ。


「こ、これはすごい緊張感です。まだゴングは鳴っていないというのに、この威圧感!! 手に汗握る試合を予感させますね!!」

「現在SSランク冒険者は世界にたった1人しかいませんからね。つまり冒険者最強の男がこの舞台に立っているわけですから、この威圧感も納得ですね~」


トモコが緊張感のない声でこの威圧感の中喋るので、多少空気が弛む。


「ガット選手も、バード選手に匹敵する威圧感です。これは期待できる試合になるかもしれません」


レンメイさんも楽しそうに解説し、舞台を見守っているではないか。


すると、舞台上のバードさんが四天王の座る席に目を移した。

じっと睨むように四天王を見ると、直ぐに視線をガットに戻し漸く試合開始のゴングが鳴ったのだ!!


刹那、舞台の両端に居た二人の姿が消え、ギィィンッという音とブワッと舞った風と共に舞台の真ん中に現れたのである。

ギリギリと剣を交え、力が拮抗していることをうかがわせる。しかしそれも束の間、互いに後ろへジャンプして離れると、バードさんが地を蹴り疾風のごとくガットへと突っ込み斬り込んだのだ。ガットはそれを細い剣で受け止め、表情を崩すことなく凪ぎ払う━━……



って、何これぇぇ!!!? 今までの戦いと次元が違い過ぎるんですけどォォォ!?


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