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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ2  作者: トール
第1章

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25/101

25.開始直前の控え室


ロードに連れられやって来たのは、コロッセオの中にある関係者以外立ち入り禁止の地下部分。異様に気合いの入った騎士達の控え室……のそばにあるロードの為に用意された一室であった。


「へぇ~。コロッセオの地下ってこんな風になってるんだ」


地下とはいっても半地下の、日の光りを上手く取り入れる構造のようで、真っ暗で閉塞感のあるものではなくなかなか見応えのある内部だ。

歴史的建造物を見学するように口を開けたまま眺めていると、ロビンがキャッキャと手足をバタつかせ始めたので、落とさないようゆっくり背中から降ろしロードへと渡す。


「ロビンは随分とご機嫌だなぁ」

「そうなんだよね。何だかここに来てからいつもより興奮してるみたいで」

「きっとパパの活躍が楽しみなんだな! よっしゃッ 気合い入れていっちょ()ってくるか!!」


見た目に反した丁寧な手つきでロビンを抱き上げると、嬉しそうに我が子を見つめ微笑むロード。


パパ呼びはちょっとアレだが、なかなか父親らしくなってきたなぁと感慨に耽る。


「ディークは大人しいままなんだけどねぇ」


お腹側に抱っこしているディークは今にも眠りそうな顔をしているので、双子なのに全然違う反応だと感じながらぽんぽんと背中を撫でてロードを見た。


「ミヤビはここで大人しくしてろよ。ここならあの窓から闘技場が見えんだろ」


ロードが指差した方を見ると、窓と言いながら硝子もはまっていない吹き抜け状態の穴からは闘技場の舞台が見える。

角度が丁度プロレスの舞台を解説席から見上げるような、あの角度で見える感じだ(とはいえ、舞台までは距離がある)。

確かに特等席と言えなくはない。


が、そうじゃない。私はこんな所で静かに観戦したいわけじゃないのだ。

こういうお祭りは皆でワイワイ騒ぎながら見る事に醍醐味があるわけで、何が悲しくて一人半地下で観戦しなければならないのか。


「ロードのバカ!! こんな盛り上がりに欠ける場所で観戦したくないよ!!」

「そうは言ってもガキ共もいるし、なにより可愛いオメェにちょっかいかけてくる奴も居んだろっ」


そんな奴居ねぇよ!! 地球で平凡な顔と言われている私は、この世界じゃ不細工の部類に入るんだって最近気付いたんだからな! 自分で言ってて悲しくてなるけど、この世界、顔面偏差値が高いのだ。こんなゴリラみたいな旦那ですら顔が整っているのだから。


「俺のミヤビにちょっかいなんぞ出しやがったら、観客だろうとなんだろうと殺す」

「だからちょっかいなんて出されるわけないって。お願いだから暴走だけは止めてグダサイ」


妄想で殺気を出す旦那に冷や汗をかきつつ窓(穴)に目をやれば、既に観客席には人が入りはじめていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




リン視点



「っしゃあ!! これで良いとこまで行きゃエリートコースに乗れるぜ!!!!」

「フシュー……絶対勝ち抜いてやる……っ」

「フンッ」


この日の為に、第3師団の厳しい予選を勝ち抜いて来た猛者達。

それがこの控え間に集まっているせいか、風通しが良いにもかかわらず熱気がこもっている。

普段は仲が良く気さくに話す男達だが、今ばかりは各々が出来る最後の仕上げ(武器の手入れやストレッチ、気合い入れ等)をしているようで、話をしている者はほとんどいない。


「これでやっと副師団長になれるのだな!!」

「その通りです!! これで貴方様が副師団長です!!」

「ハッハッハ!! そうだろう。そうだろう!!」


一部を除いては。


さっきから大声で話しているのは、第3師団の中でも少数である貴族出身の男だ。

普段から態度が大きく、部隊長に出世した途端貴族出身と庶民出身の騎士達の接し方や、上司と部下との関係にも口を出してくるようになり、そのせいか最近は部隊の中で貴族と庶民の衝突も多発している。


先輩達曰く、前副師団長がいらした時は他の師団とは違い、貴族出身も庶民出身も関係なく完全実力主義だったのだとか。

前副師団長は貴族出身だったが、御自身は気さくな方で、さらに師団長と同じ叩き上げでその地位についた方だったらしく、上手く師団をまとめ上げる優秀な方だったそうだ。


しかし副師団長が不在の今、師団の足並みが揃わなくなってきた為に近々副師団長を決めるという噂が持ち上がった。

だからか、第3師団にとって今回の御前試合は現在空席である副師団長の後釜を決める大会。必然的に気合いの入り方が他とはまったく違うのも無理はないだろう。


「はぁ……」


この空気に耐えられなくなってきたオレは、控え室を出て少し歩く事にした。





「━━━……なにシケた面してんだ」


人々の賑やかな声が闘技場に聞こえ始めた頃、気分転換に地下を歩いていたオレに声をかけてきたのは、


「アル、フォンス……様」

「あ゛? “アル”で良いつったろ」


エルフの神であるアルフォンスだった。


「はぁ……人が一応神だから敬称付けてやったってのに、フレンドリー過ぎるだろ」

「うるせぇ。一応じゃなくて神だからな。エルフ神なめんな」


エルフをなめるなが口癖のこの男は、浮島で出会った神で、お互い巻き込まれ体質な事で意気投合し友人関係を築いたのだが……


「なめてねぇよ。お前神なのにこんな所で何してるんだ?」

「はぁ? お前が御前試合っつーのに出るって聞いたから観に来たんだろ」


感謝しろよと口の端を上げる友に呆れた目を向ける。


「トモコだな」

「つがい神様の片腕を決める大会なんだろ? お前しかいねぇだろうけど、面白そうだから来てやったぜ」

「いや、オレにはそんな大それた地位は畏れ多いというか……」

「ぁあ゛? お前以外でただの人間に務まるわけねぇだろ。とにかく、神王様もいらしてんだから退屈させねぇように頑張れよ」


やっぱりミヤビも来てんのかよ!! だと思ったけどな!!!


友人(神)は言いたい事を言って消えたが、オレは溜め息しか出なかった。


手加減……してもしなくても面倒な事になりそうだな。


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