59 ミーンミアSIDE(その7)
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そこに立っていたのはロフェイだった。
ロフェイだと名乗った彼女ではなく、わたしと同じギルドのロフェイだ。先日の平手打ちのこと、理不尽に思ったに違いない。きっと怒っていることだろう。
「遅くなって悪かった、ミーンミア」
「お……怒ってないのですか?」
首を横に振るロフェイ。
「怒る権利なんてオレにあるかよ。逆だろ、ミーンミア。領都への到着が遅れたこと、きちんと謝りたい。もし怒りが収まらないのなら、いくらでもまた平手打ちをかましてくれ。グーでもいいぜ」
ぽろぽろと涙が出てきた。
「怒ってなんかいません。来てくれて嬉しいのです」
ここで白狐の獣人の言葉を思いだした。
ロフェイが好きなのは、積極的な女の人。
グイグイいかなければならない。
受付嬢のルーシャ以上に。
恥ずかしがっていたら、ロフェイは離れていってしまう。
勇気を持たなくてはならない。覚悟しなければならない。
どうしよう? 何をすればいい?
あわわわわわ……早くしなければ。
そうだ! あれだ。
昔リムネといっしょに読んだ絵本に、大好きなお伽噺があった。ロマンチックな話に胸がときめいたものだ。あのとおりにやってみよう。互いの国同士が敵対する王子と王女の恋のクライマックス――。王女が王子の胸に飛び込むの。
わたしもジャンプ。
ゴチ
ああ、しまった。わたしは何をやってるの? 至近距離から思いっきりジャンプしたら駄目じゃない。ロフェイの鼻から血が……。
「鼻に頭突きなんて、平手打ちより強烈だな」
あわわわわわ……早く誤解を解かなければ。
ますます焦ってしまった。
「すみません、違います。ええと……」
告白するしかない。
あのお伽噺ではどうやって告白した? 王子が王女に……。いまは逆パターン。わたしからロフェイに。ああ、死にそうなほど心臓がドキドキする。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。でも頑張らないと。
「ロ………………ロフェイが好きです……」
このあとのセリフが大切。どう続けようか。お伽噺ではどうだった? 思いだした。王子が王女の大好きなものに喩えて言ったんだ。赤く輝くルビーのように美しいと。
じゃあ、ロフェイの好きな宝石って何!?
そんなの知らない。聞いたことがなかった。どうするの? 焦っちゃ駄目。焦っちゃ駄目。焦っちゃ駄目。冷静に! ロフェイが宝石好きだとは思えない。そう、わたしの好きなものでいい。わたしは何が好き? ロフェイ? ううん、それじゃ喩えにならない。何かない? わたしの好きなものを、日常生活で考えてみればいいのよ。早くっ。
「……お洗濯と同じくらいに」
ぽかんとするロフェイ。
「お洗濯?」
しまった!!
そんなの駄目じゃないのよ。
けれども合点がいったらしい。優しそうに笑う。
「ああ、なんだ。ビックリした。皮肉だったか。面倒なヤツだって、ルルロコ嬢からも繰り返し言われてたっけ」
違うの、違うの、違うの、違うの、違うの。
わたしパニクりすぎよ!
もう一度、ちゃんと言おう!
ところが……。
邪魔が入った。
やってきたのは主催者の係員だ。
「なんですか、あなたは」
「オレが代わって戦う」
係員は首を振った。
「代人を立てる場合、朝までに連絡いただかないと困ります。この台帳に名前の記載がある者のみ、出場できるのです」
「ならば問題ないと思うが?」
ロフェイの言葉に首をかしげる係員。
「問題ないとはどういう……」
「台帳に名前が書いてありさえすればいいんだろ。ウルスロ町代表者として、誰の名前が書かれている?」
「出場者ミーンミア、代人ロフェイですが」
ロフェイがギルドカードを見せる。
「オレもロフェイだ。その台帳に記載があるだろ」
わたしは代人を『ロフェイ』の名前で毎回登録していた。正直なところ、彼女の本名なのかどうかは怪しかった。でもそれがこんなところで役に立つなんて。
係員はいったん戻っていった。
主催者側の協議後、ロフェイの出場は認められた。
ロフェイとアウズの対決が始まる。
「散々待たせやがって! ぶっ殺してやる」
アウズはかなりイライラしているようだ。
「気をつけてください、ロフェイ。敗者にトドメを刺すような残虐な人です。それにかなり強いようです」
「わかった」
ロフェイは落ち着いていた。まるで勝利を確信しているようだった。
「開始!!」
主審の声で対戦が始まった。
最初に仕掛けたのはアウズ。
手の先に魔法陣。
あの魔法陣はサンダー系最大魔法のメガサンダー!?
メガサンダーはロフェイを直撃した。
「ロフェイーーーーーーーーーーー」
ロフェイは立ちあがった。
心配するわたしに笑みを投げた。
「問題ない。少しびっくりしただけだ」
穏やかでないのはアウズの表情だった。
「タフなヤツめ。ならばこれでどうだ?」
あの魔法陣は石爆弾系最強の……。
ロフェイに知らせないと。
「ミティオライトボムが来ます! 必ず避けてください!!」
ロフェイの一瞥。首肯の意味だろうか? いいえ、わたしの忠告が聞き入れられることはなかった。避けることを選択せず、ロフェイも魔法陣を出したのだ。
あの魔法陣は……石爆弾系最弱のストーンボム。駄目よ。ミティオライトボムに歯が立ちっこない。
二つの魔法が衝突。大爆発が起きた。
しかし不思議なことにストーンボムの勢いは止まらない。爆発被害はすべてアウズが受けたのだ。ストーンボムがミティオライトボムに勝った? 嘘でしょ?
アウズはポーションを使用し、ふたたび立ちあがった。
憤怒の形相でロフェイを睨んでいる。またもや魔法陣。
あれは……。
今度ばかりはロフェイの勝利を確信した。アウズが出した魔法陣の模様は、メガファイヤのもの。そしてロフェイの魔法陣の模様は、二つも格下のミニファイヤのもの。
両者の魔法が激突。
ロフェイのミニファイヤはメガファイヤ以上。負けるわけがなかった。
倒れたまま動かなくなったアウズを主審が確認。
ロフェイの勝利が告げられた。
圧勝だったと言っていい。ロフェイは得意なファイヤを出さずに勝負を決めてしまったのだ。わたしは大歓喜。なんて人なの、ロフェイ!
会場の中央からロフェイが歩いてくる。
もちろん彼に「おめでとうございます」を言った。
彼は笑みで返してくれた。
そして……。
さっきは失敗したけど今度こそは。
白狐の獣人から話を聞いている。だから早く!
ロフェイが受付嬢ルーシャに奪われる前に。
いま頑張らなくちゃ。
積極的に。積極的に。積極的に。
グイグイと。グイグイと。グイグイと。
ああ、緊張する……。
心臓が破裂しそうなほどバクバク言っている。
眼前に立つロフェイの顔を見あげた。
駄目。無理。まともに目を合わせられない。
すぐに俯いた。もうわたし涙目だ。
あわわわわわ……どうしよう、どうしよう。
焦りで頭の中がパニック。
でもちゃんと言葉にしなきゃ。
思い返すのよ、お伽噺を。
王女のセリフなんだっけ。
そうだった。
「ひ、酷い人です。わたしに魔法をかけてしまうなんて。でも許します。わたしをさらっていってください」
わたしのお気に入りのセリフだった。
声はちょっと震えたけど。
お願い。この気持ち、伝わって!
「ミーンミア…………」
「ロフェイ…………」
良かった。伝わったのね。
わたし、緊張で死ぬ思いだったんだから。
どうしよう。
ロフェイの顔が近づいてくる。
ああ、キスされる。
わたしは静かに目を閉じた。
「なあ、もしかして酔っ払ってるのか?」
えっ?
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