表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/61

42 獣人探し


 牢獄のあった町外れから、町の中心部に向かって歩いていく。


 ミーンミアのことが心配だった。獣人族ということで、吸血魔人(ヴァンパイヤ)のように牢獄にブチ込まれてはいないだろうか。早く彼女を探し出さなければならない。


『獣人を見かけなかったか?』

『町のギルドはどこにあるのか?』


 町の人々に尋ね回った。しかし獣人を見かけた者も、ギルドの場所を知る者も、なかなか現れてくれなかった。


 だいたい、一人の獣人を探すには町が大きすぎる。それにギルドの場所なんて、地元の冒険者ならば話は別だが、一般人だったら知らなくても不思議はないだろう。


 しかし獣人について、ある目撃情報を得た。


 見かけた場所は『身元不明者の遺体収容施設』ということだった。話によればイタチ系の獣人だという。ミーンミアはイイズナ系だが、獣人に精通した人でなければ区別できまい。


 オレはその情報を聞き、激しい不安に襲われた。全身から血の気が引いていくのを感じた。信じたくはなかった。何かの間違いであってほしい。『身元不明者の遺体収容施設』へ急いで向かった。


 ああ、ミーンミア。オレがボートから落ちたばかりに……。


 遺体収容施設に到着。一気に脱力感を覚えた。誤解があったのだ。獣人というのは、遺体ではなく施設の勤務者だった。それにアライグマ系の女じゃないか。どこがイタチ系なんだよ! その勤務者と話をした。彼女も奴隷だという。


 ちょうど彼女との会話の最中、新たな遺体が運び込まれた。


 首筋に小さな二つの穴傷。たぶんいまのオレにも同じ傷が残っているはずだ。ふと、嫌な予感がした。案の定、この遺体は吸血魔人(ヴァンパイヤ)に殺されたものらしい。しかも殺されてから、あまり時間が経っていないそうだ。


「ここ最近、吸血魔人による被害を聞かなくなり、喜んでいたところでした。それなのに、またこんなことが……。ガッカリです」


 アライグマ系獣人はそんなことを口にした。


 オレは茫然とした。


 殺されたのはオレのせいかもしれない。

 彼らを鉄格子から解放したのはオレなのだ。

 オレは彼らを助けたことについて後悔した。


 それにしてもアイツらめ……。

 吸血魔人の連中に文句を言わなけりゃ!


 といっても居場所は不明だし、領都は広い。しかしまったく見当がつかないわけでもない。彼らは解放されたあと、牢獄からまっすぐ北へと飛んでいったのだ。あの場所から北へ行ってみるか。運が良ければ、見つかるかもしれない。


 オレはいったん牢獄の場所まで戻り、そこから北へとゆっくり向かった。


「きゃああああああああ」


 女の悲鳴が聞こえた。

 風魔法ウインドで急ぐ。


 当たりだった。


 知っている顔があった。しかし吸血魔人は一人だけ。他の連中はどこにいる? まあ、彼だけでもいい。誰もいないよりはマシだ。


 彼は若い赤髪男。オレの血を吸った吸血魔人だ。目つきの悪さは相変わらずだった。彼はヒト族の女の髪を乱暴に引っぱり、いまにも首筋に牙を入れようとするところだった。


 赤髪男の吸血行為は中止。オレの気配を感じたようだ。じっとこっちを睨む。


「あっ、お前は!!」


「オレはこんなことをさせるために、てめぇらを解放したんじゃない」


「そんなん知るかっ。別に解放を頼んだわけじゃねえだろ」


「魔人だというだけで牢獄にブチ込まれた、という話だったはず。だが実際にはヒト族を襲ってた。投獄にはしっかり理由があったじゃないか」


「何も知らないお前が言うな! 俺ら吸血魔人はなあ、理由なき殺戮者とは違うんだ。生きるために仕方なく殺してる。仕方なくだ。人の血を吸わなくては生きていけない。お前らに穀物や肉、野菜が必要なのと同じことだ」


 生きるために仕方なく……。

 返す言葉を失った。


 吸血魔人も吸血魔人なりに必死に生きている。人殺しは生きるため。オレは彼らを見逃すべきなのだろうか?


 オレはヒト族でも魔人族でもない。魔族――つまり部外者だ。彼らの問題にどうして首を出せるだろうか。魔族にとっちゃ、ヒト族も魔人族もいっしょ。オレには関係ない。


 そうだな。何も考えず放っておけばいいのかもしれない。やりたきゃ好きにやってろと。


 だが……。そう簡単に割り切れるものだろうか。リムネとヘスナートというヒト族の仲間が二人いる。当然、ヒト族の方に肩入れしたくもなる。これって間違ったことなのだろうか。


 わからなくなってきた。


「グフルーゴ、こんなところにいたんだ」


 空からヒラリと誰かがおりてきた。吸血魔人の少女だ。オレの血を臭いと言ったヤツだ。名はモアモアと言ったような気がする。


 彼女はオレの姿を見つけた。こっちを指差す。


「あたいたちを助けてくれたヒト族!」


 そしてふたたび赤髪男に視線を移す。


「グフルーゴがヒト族と語り合ってたなんて意外! どんな会話してたの?」

「うるせぇ。会話なんてしてねぇ。行くぞ」

「あっ、待って。グフルーゴ」


 赤髪男グフルーゴが飛び立つと、少女モアモアも飛んでいった。

 オレは二人を追うこともなく、ただ後ろ姿を眺めるだけだった。


 そのあと、被害者の女を大通りまで送っていった。


 ずいぶん道草を食ってしまった。

 いまだにミーンミアの居場所もギルドの場所も不明のままだ。



ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!

【評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします。

下の ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に変えてくださると、

最高にうれしいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ