37 決闘の行方
事情は不明のまま、デジルとの決闘が始まった。
彼女は魔法が使えるのだろうか。武器でも持っているのだろうか。ちなみに魔界では、オトコがオンナに勝つなんてことはありえない。
そういえば人間の女と戦ったことって、いままで皆無だったよな。デジルは強いのか? まあ、決闘を挑んでくるくらいだし、油断はできないだろう。
デジルの仕掛けた攻撃は魔法ではなかった。また素手でもなかった。彼女は腰をおとし、石を拾った。まさか? そう、彼女は石を投げつけてきたのだ。
これが決闘? しかし彼女の顔は大真面目だった。
デジルは石投げを繰り返した。オレはすべてに身をかわした。といっても彼女の投げる石は、決して速いものではなかった。
石を避けながらデジルの間合いに入る。さらにそこから回り込んで、後頭部にハイキック。スパンといい音が鳴った。
デジルは地面に倒れた。脳震盪ってやつだろう。
決まったか?
ところがむっくりと体を起こした。
へえ、それなりにタフじゃないか。まあ、決闘を挑んできたくらいだから、それなりに体力には自信があったのだろう。あっさり負けるはずなどなかったかぁ。
そして完全に立ちあがったデジルの言葉に驚愕した。
「まいった」
えっ!? オレは決闘に勝ったようだ。いったいなんだったんだ……。結局、意味不明のまま。
「世話になった」
オレはデジルに一礼し、歩きだした。この集落にはもう用がないので、出ていくつもりだ。
しかし……。背後から襲ってきやしないか?
ふと不安になり、振り返ってみる。
襲ってくるなんてことはなかった。
彼女はそっぽ向きながら、不満そうに頬を膨らませていた。そして地面に座りこんだかと思うと、ふてくれさて寝転んでしまった。
なんなのだ、彼女は。
ふたたび前方に向き直ると、そこに長い髪の女がいた。イージュだ。はて、なんの用だろう。オレの右腕を抱え込んだ。デジルに代わって仕返しか?
ところが……。
「ねえ、デジル。彼、あたしがもらっていい?」
デジルは寝そべりながら手を振る。
「それ、もう要らない」
「じゃ、あたしがもらう」
要らないとか……もらうとか……。
コイツらなんのつもりだ?
イージュが手を引っ張る。
「放してくれないか。行くところがある」
「もう夕方だよ? ここで泊まっていきなよ」
確かにな。もうすぐ日が暮れそうだ。
マハ・コーリシャスのギルドでの登録はきょうまでだ。どうせ受付の締め切りには間に合わない。行き方もわからないし、泊まっていくしかないだろう。
「泊まれそうな場所ってあるのか」
「こっちよ」
イージュのあとをついていく。
二人の男が近づいてきた。
「そいつがデジルのエサか」
「デジルの玩具。ハハハハ」
イージュはベーッと舌を伸ばした。
「あたしがもらったのよ」
崖の壁に空いた穴の一つに通された。そこから階段で地下へとおりていく。すると広い部屋になっていた。なんだ? ここに泊まれと?
「一人で泊まるにして広すぎるな」
「えっ? あたしに添い寝を誘ってるわけ」
「そんな意味で言ったんじゃない」
ダダダダダッ
大きな石がたくさん落ちてきた。
部屋と上階を繋ぐ階段が塞がれた。
「これなんなの? 閉じ込められた?」
イージュが驚いている。
彼女の仕業ではなさそうだ。
「やった」「成功だ」
そんな声が聞こえた。部屋の壁の上方にある小さな明かり窓からだ。そこにさっきの男たちの顔があった。
イージュが上を向き、彼らを睨む。
「あんたたち、どういうつもり? あたしを裏切ったな。承知しないぞ!」
オレ、巻き込まれたってことなのか。
イージュに問う。
「アイツら、お前の仲間なんだろ。説明してくれないか」
「うるさいねえ。黙ってな!」
説明ナシかよ。
それでもまたイージュに問う。
「なあ。これって、あの二人を殺してもいい状況なのか」
「ここから、あんたに殺せるわけがあるかっ!」
「そうでもないぜ。とりあえず見ててごらん」
明かり窓に手を伸ばし、魔法陣を作った。
ミニファイヤを飛ばす。
「うおおおおおおおおおお」
男は悲鳴をあげた。
当てるのに少し抵抗があったため、ワザと狙いを外したのだ。しかし小さかった明かり窓は、ミニファイヤで大きくなった。
明かり窓から彼らの顔が消えた。危険と感じて覗き込むのをやめたのだろう。それでも声が聞こえた。
「変な鬼法を使いやがったぞ」
「アイツ、使えたのかっ」
魔法ではなく鬼法だと言った。もちろん鬼法というのは、魔族が使うものだ。ならばオレが魔族だと認識していたってことなのか。
続いてこの手を、隣のイージュに向ける。
「あたしに? まっ、待ってよ。なんでも話すから」
「そんじゃ訊く。お前も鬼法のことを知ってるのか?」
小刻みに何度も首肯するイージュ。
「しっ、知ってる。魔族が魔力で操作した現象……」
「じゃあ、オレのことを魔族だと?」
「あたしとあの二人だけが知ってる」
「何故わかった?」
「あたしは誰よりも鼻が利くんだ。あんたの匂いを嗅いですぐわかった」
匂いで魔族を判別できるとは、なんて女なんだ。
そういえば初対面のとき、くんくんと鼻を鳴らしてたっけ。んで、しかも臭いとか言いやがった。このままファイヤを放ってやりたい気もするが、そこはグッと抑えた。
「オレの匂いはともかく、お前は魔族の匂いを知ってたことになるな?」
「当然さ。あたしたちも魔族だから」
「なんだと?」
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