表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/61

36 奇妙な集落


 奇妙な若い女に連れられてきたところは、これまた珍しい感じの集落だった。


 共有の広い中庭を囲むように家々があるのだが、石や木材でできた建物はない。家々は崖をくり抜いて作られたものだった。


 集落に入った途端、若い女はギュッと腕を組んできた。まるで集落民にオレを見せびらかしているかのようだった。


 中庭のような広場にいた集落民がこっちを見ている。

 崖の窓から顔を出した集落民がこっちを見ている。

 皆、目つきの悪い者たちばかりだった。


 ウェーブのかかった長い髪の女が歩いてきた。


「デジルが、オス連れて歩いてる?」


 デジルというのは、オレを集落に案内した女の名前だろう。それはそうと、オレをオス呼ばわりかよ。初対面だぞ。


 デジルと呼ばれた若い女が、オレと組んだ手にぎゅっと力を入れる。さらに体を密着させてきた。


 すると、ウェーブのかかった長い髪の女は、まるで不審物でも見るように目を細めた。そのままオレに顔を近づけてくる。まず右足。そして左足。股間、腹部、胸部、そして顔。オレはじっくり観察されている。


 おい、顔、近すぎるぞ。息がかかりそうだ。わっ、かかった。


 オレは思わず顔を引いた。しかし彼女の顔がオレの顔を追う。今度は耳の穴まで覗き込まれた。しばらくして彼女はようやく顔を離してくれた。そして言う。


「臭ぁ~」


 なんと失礼なヤツ。てか、オレ、臭いか?


「イージュ、あっち行って」

「はい、はーい」


 イージュと呼ばれた長い髪の女は去っていった。

 アイツはなんだったんだ。


 しかし四方八方からの集落民の視線は、ますます強いものとなった。

 そんなにヨソ者が珍しいのか。

 また、こんなことを口にしている集落民もいる。


「なんだ、ありゃ」

「デジルが変なの拾ってきたぞ」

「まったく何を考えてるのやら」


 崖をくり抜いた玄関から中に入っていった。


「ここがあたしのおウチ」


 デジルの家は、壁も床も天井もまっすぐに掘られた四角い部屋だった。小さな椅子とテーブルがある。それからあれは……小さな簡易ベッドか。うずくまらなければ寝られないだろう。他にはほとんど何もなかった。


 デジルが出してくれたのは、茶でもコーヒーでもなく水だった。まあいいけど。ちょっと土臭かったが、一応ありがたくいただいた。ほとんど会話はなかった。ただ座っているだけだ。


 てか、オレ、こんなことをしている場合じゃなかった。オレは一刻も早くマハ・コーリシャスへ行かなければならないのだ。ここに来たのは、その情報を得るためだった。


 そのことをデジルに伝えた。


「じゃあ訊いてくる」


 彼女はそう言い残し、家から出ていった。


 一人残され待っていると、小さな窓からまたもや視線を感じた。集落民たちがオレを覗き見ていたのだ。まるで監視でもされているような気分だ。


 窓の向こうの人々がサッと逃げていった。デジルが戻ってきたのだ。彼女は家に入ってきて早々、首を大きく左右させた。


「マハ・コーリシャス、誰も知らなかった」

「そっか……。仕方ないな。だが感謝する」


 領都だというのに、誰も知らないとは。

 まあ、オレも知らなかったが。


 情報を得られないとなると、もうこの集落に用はない。さっさと出発だ。


 立ちあがろうとしたときだった――。

 デジルが笑みを浮かべながら言う。


「ねえ、決闘しよっ♡」


 はあ? 耳を疑った。


「決闘って、誰と誰が?」

「あたしとあんただよ」


 デジルとオレ?


「何故そんなんしなきゃならないんだ」

「いいから」

「オレ、何か悪いことでもしたか。あるいは悪いこと言ったか」

「ううん、ぜんぜん。いいから、いいから」


 何がいいからだ。

 デジルがオレの腕を引っ張る。家を出て、広い中庭へ。

 集落民が寄ってくる。


「デジル、どうした?」

「うん、この人と決闘するの」


「デジル、何を始めるんだ?」

「この人と決闘だよ」


「デジルが決闘って本当か」

「うん、ホント」

「まあ、頑張れや」


 止めようとする集落民はいなかった。

 さっきのイージュも姿を見せた。


「きゃっ、デジルが決闘♡」


 いったい何がそんなに嬉しいんだ。

 まったく意味がわからない。


 中庭でオレとデジルは向き合った。本当に決闘しなくてはならないのか。せめて理由くらい教えてほしかった。


 (しな)を作るように小首をかしげるデジル。


「じゃあ始めるね」


 不可解な決闘が開始された。


 さて、デジルはどんな攻撃をしかけてくるのだろうか。もしや魔法でも使えるのか。それともやはり素手か。



ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!

もし続きが気になるという方がいらっしゃいましたら、

【評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします。

下の ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に変えてくださると、

最高にうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ