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11 ジャックジャーSIDE


ඔබට ස්තුතියි  ジャックジャー視点 ඔබට ස්තුතියි



 俺の名はジャックジャー。


 バラン地方の片隅にあるこの邑落に、ベッサーリリィが移住してきたのは三年前のことだ。容姿も振舞いも魅力的で、最高に評判のいいオンナだった。半年くらい前からだろうか。彼女は俺の親友だったロフェイに、気のあるような素振りを見せるようになった。なんかいい感じの雰囲気が漂ってきた 。俺は面白くなかった。


 だからロフェイをうまいこと嵌めてやった。ざまぁ見やがれだ。捕らえられたロフェイをベッサーリリィに見せてやった。彼女のロフェイに対する感情は、以前とは正反対に向いてくれたようだ。俺はそれをいいことに、彼女にデートの約束を取りつけた。人間狩りというワイルドな昔の遊びに誘ったのだ。



 いまベッサーリリィと二人きりで、人間狩りに向かっている。俺はなんと幸せ者なのだろう! もしこれが夢ならば、ずっと覚めないでもらいたいものだ。


「ベッサーリリィは、この地方のオンナたちとは全然違うね」

「ええっ? あたしのどこが?」

「たぶん育ちがいいからかなぁ。気品があって穏やかな感じに見えるんだ」

「そうかしら」


 ベッサーリリィの手を握る。


「そうだとも! たとえばの話だけど、もしベッサーリリィが誰かと付き合ったとして、相手のオトコに暴力振るったりする姿が想像できないんだ。いいや……。俺はキミにだったら、どんな暴力でも有難く思えるだろうけどね」


 なーんて。自分で言っておきながら馬鹿らしい。


「あたしはね。怒りや八つ当たりで暴力を振るわないって決めてるの。付き合うオトコに感情をぶつけることはないわ」


 まあ、オンナは皆そんなことを言うんだよな。付き合うまでは。でも……実は、そんな夢のある嘘も好きだったりする。騙されたっていい、と思えてくるから不思議だ。


 とにかくこんないいオンナは他にはいない。ロフェイめ、ざまぁ見やがれ。お前にゃ、ベッサーリリィはもったいない。


 きょうはいい一日だぜ。


 俺がベッサーリリィをデートに誘ったときのアイツの顔ったら。あれは最高だったな。ちょっと思いだしただけで笑えてくる。昔からアイツの悲愴な顔を見るのが好きだった。ある種、生きがいだったとも言えよう。アイツは俺の邪魔さえなければ、順調にベッサーリリィとくっつくことになっていただろうに。


 また一つ、アイツの幸せをブチ壊してやった。

 いい気味だ。努力もしないでモテるのが悪い。


「ベッサーリリィ。魔族を裏切るオトコをどう思う?」

「決まってるじゃない。最低よ。魔族の恥だわ」


 へへへ。そうだろ、そうだろ。


「じゃあ、オンナにだらしなく、二股三股がけするオトコをどう思う?」

「関わりたくないわね。顔を見るのも嫌だわ」


 へへへ。呆れただろ。


「人間のメスにまで欲情するオトコをどう思う?」

「気持ち悪い。吐き気がするわ」


 あっはっはっは。

 すべて俺の『でっちあげ』だけどな。

 きょうは本当に愉快だ。



 狭間の森にやってきた。


 ここは久しぶりだ。かなり長い間、人間狩りなどやっていなかったな。いまでも人間の冒険者は、ここをよく訪れるのだろうか。もしそうだとしても、狭間の森は滅茶苦茶広いから、簡単には見つけられないかもしれない。


 ところで……。


 ベッサーリリィの様子がおかしい。どうしたのだろう? ハァハァと呼吸が荒くなっている。体調でも悪くなったのか? ちょっと心配だ。声をかけてみる。


「ベッサーリリィ、大丈夫?」


 彼女は胸に手を当てながら応えるのだった。


「ちょっと興奮してきちゃったみたい。我慢……でき……ないかも……」


 興奮? 我慢できない?


 もしや、いまの俺と同じ心境なのか。ああ、そうだったよな。この人間狩りが泊まりがけってこと、最終的に了承してもらったんだ。


 夜に備えてキャンプの用意は……まだ早すぎるか? いいや、準備に早すぎるなんてことはないはずだ。うううっ、俺もじっとなんてしていられなくなってきた。


 ベッサーリリィが屈託のない笑顔を見せる。


「こんなに探してるのに……人間……いない……わね」

「もっとしっかり探せば、きっとどこかにいるよ」


 彼女はいったん深呼吸した。


「いなくていいの。人間なんてつまらないから」

「いや、だけど……」


 それじゃ、ここに来た意味がなくなってしまう。


「あたしたちだけで楽しみましょ」


 俺たちだけで楽しむ!?

 おおおおおおおおおお!

 よぉーーーーーーしっ。


「うん、そうだね。それがいい」

「受け止めてぇーーーーーーー」


 大声あげるベッサーリリィ。

 彼女は鬼法をぶっ放してきた。

 おいおい、待て待て待て待て。



 ドッゴーーーーン



 うわっ! 俺は間一髪、身をかわした。近くで大爆発が起きた。危ねえ。しかしベッサーリリィは続けて鬼法を発動してくる。大炎、氷塊弾、雷撃、大竜巻……。


「ちょっとちょっと待って、どうして!?」

「あたしは、怒りや八つ当たりで暴力を振るわない……」

「そうだね、キミはそう言ったね」


 ベッサーリリィが首肯する。


「あたしが暴力を振るうのは『快楽』のためだけだよ」



 えーーーーーーーーっ!?



 実に楽しそうに鬼法を放っている。

 俺は鳥肌が立ってきた。


 空に舞いあがった彼女が、攻撃しながら訊いてくる。


「ねえ、楽しい?」


 はあ? 楽しいわけないだろ。

 無視しながら逃げていると、同じ質問を繰り返してきた。


「あたしが楽しいんだから、ジャックジャーも楽しいでしょ?」

「へっ? いや……。た、楽しいです……」


 てか、楽しくないなんて言えるものか!


「まあ、良かった。ジャックジャーも楽しいのね!!」


 実に嬉しそうな顔だこと。


 鬼法の連発。ハグもキスもしてくれないくせに、「楽しい?」の繰り返し。こういうのは、せめて付き合ってからにしてくれ。多少は納得もできるから。


 さすがにすべてが避けきれるのもではなかった。

 ついに俺は鬼法に打たれ、失神した……。



 目を覚ました。


「あら、気がついたのね。とっても心配したわ」


 そこにいたのはベッサーリリィだ。

 心配してくれてたのか。それが俺にとって救いだ。

 だけど体じゅうがまだ痛い。

 もうあんな無茶苦茶なことはしないでくれよ。


「どうだろう、ベッサーリリィ。そろそろキャンプの準備をしないか」

「でもさっきまで眠ってたんでしょ? また寝るの?」


 眠ってたんじゃない! アンタに気絶させられてたんだ!!


「疲れちゃってさあ」

「そう? 寝たいんだったら、あたしはまた(・・)帰る(・・)わね」

「えっ、帰る? またって?」


 静かに首肯するベッサーリリィ。


「ジャックジャーが起きないから、きのうはいったん帰ったの。きょう、あらためて戻ってみたけど……」


「ちょっ待ってよ。俺、一日じゅう一人で眠ってたってこと?」

「だからつまんなかった」


 そういう問題じゃなくて。


「訊くけど、どうして俺は置き去りにされたのかなぁ」

「あなたは泊まりがけが良かったんでしょ?」

「それはそうだけど、そうじゃなくて。キミとが良かったんだ!」


 ベッサーリリィがニッコリする。


「元気になったみたいね、ジャックジャー」


 彼女は鬼法をぶっ放した。わずかに逸れていった。


「危なっ」

「さあ、逃げないと今度こそ死んじゃうわよ」


 なんだよ、なんだよ、なんだよ。

 信じられねえ!!!

 このオンナ、いったいなんなんだっ。



 ズッドーーーーーーーーーン



「わぁーーーーーーーーーー、死ぬぅ!!!」


 駄目だ、このオンナ。終わってる。

 どうしてこんなオンナがオトコに人気あるんだ。

 気品? 穏やかな感じ? 冗談じゃない。笑わせるな。


 ああ、こんな地雷オンナだったなんて。

 くそっ、ロフェイのヤツに押しつけてやりてぇー。



ඔබට ස්තුතියි  ジャックジャー視点おわり ඔබට ස්තුතියි




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