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第七話 創作の問題(ヒント)
「そうねぇ……ヒントは……」
わたしはしばらく考えてた後、柘植へ尋ねた。
「2進数って柘植くんなら知ってるよね?」
「ええ、もちろん。当たり前じゃないですか」
柘植はいささかムッとした顔で答える。そんな彼をよそにわたしは説明を求めた。
「ええと……例えば普通の表記は10進数って言うんですけど、1、2、3、4、5、6、7、8、9、と続いてようやく位が一つ上がるじゃないですか」
「そうだね。2進数の場合は?」
「1の次は2ではなく、10と書きます。これは紛らわしいので『ジュウ』ではなく『イチゼロ』と読むんですが……」
「さすが図書館情報学科だけのことはあるね。それがヒント」
わたしはそう笑顔で言うと、みんなの顔を見回した。
「さぁ、賢明なる部員諸君、この謎を解いてみたまえ」
わたしがそう言うと、亜希子は吹き出して笑う。
「何よそれ」
「全ての作品は引用と改変の繰り返し。南米の作家ボルヘスもこう言ってるでしょ」
わたしは澄まし顔でさらに付け加えた。しかし、告白すればこの作家はさっき知ったばかりである。後輩たちの前で見栄を張ったのだ。
はいはい、と亜希子があしらうように言うと、柘植に尋ねた。
「答え、分かった?」
「あ、はい、もしかしてですけど……」




