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イベント7 異世界帰りの幼なじみと休日デートするらしい。ずっと一緒にいてやるよ! ⑦

 どのぐらい走っただろう。

 

 気が付けば、私は道の中央にぼんやりと立ち尽くしていた。


 川のせせらぎが聞こえるところからすると、まだ先程の土手沿いの道の上にいるらしい。


 背後を恐る恐る振り返る。

 すでにあの場所からはかなり遠ざかっているのか、たーくんや男たちの姿は見えず、彼らの声も届かない。


 私は川べりの柵へゆっくり歩み寄った。


 ――たーくんが怒っていた理由は明白だ

 また私がやり過ぎたのだ。


 いつもそうだ。こちらに戻ってきてから――いや、子供の頃からずっと……。


 昔の出来事はあまり思い出せないが、不思議と彼と過ごした時間だけは、今でも鮮明に脳裏に浮かべることができる。


 私は内気でお世辞にも社交的な子供とはいえなかった。

 そのため小学校では孤立しがちだったが、そんな私をサポートしてくれたのが、幼なじみのたーくんだった。

 人の輪に入れるよう何気なく口添えしてくれたり、私が言いたいことがある時は周りの人が傾聴してくれるような雰囲気を作ったり。


 当時から彼には世話になりっぱなしだった。

 

 小学校高学年になると、私はこのままではいけないと一念発起し、積極的にたーくん以外のクラスメイトとも関わるよう、自分に強いた。

 その甲斐もあってか次第に友人が増えてきたが、入れ替わるように彼は私と距離を置くようになっていった。


 そして、中学3年のある日、私は彼を屋上に呼び出した。


 ――もう自己研鑽は十分に済ませた。

 彼と以前のような仲を取り戻し――いやそれ以上の関係に進展させる権利も、今の自分にはあるだろう、と。


 しかし、それはとんだ思い違いだったのだ。

 その証拠にあれから長い年月を経た今でも、昔とまったく同じように、彼の世話になりっぱなしになっている……。


 私は内ポケットを探り、ある物を取り出す。


 掌にすっぽりと収まるぐらいの球体だ。

 内側で虹色の光が渦巻いており、刻々と表面に浮かぶ模様を変化させている。


 ――それは汝の世界の玉手箱のようなものだ


 こちらの世界に戻る直前、異世界転移を司る神がこの物体を手渡しながら、告げた。


 ――もしそなたが、元の世界での生活に耐えられなくなったら、これを割り砕くと良い。そうすれば、かの世界での汝の存在のすべてをなかったことにできる


 要はこれは緊急脱出アイテムのようなものらしかった。

 ただし、ダンジョンなどではなく、世界そのものからの脱出に用いる道具だ。


 これを粉々にすると、現代日本での私の存在自体も同時に砕け散る。

 人々の記憶から私は消え、私に関わる物や出来事も一切が()()()()()()()()ことになる。


 そして、私は元の異世界――アースガルドへと舞い戻る。

 完全なる、こちら側の世界との決別だ。


 私は手の中のそれをじっと見つめる。


 もうこちら側には私の居場所はないのではないか?

 この世界に未練はあるが、私がここに執着した結果、他人を不幸にしてしまうのではないか?

 なにより――


 

 彼も巻き添えにしてしまう。

 誰よりも大切な彼を。


 

 ――ならばいっそ……


 魔王と対峙した時も震えなかった私の両手が震えた。

 私はゆっくりとその球体を振り上げ――


 

(こずえ)?」


 

 その声に動きを止める。


 振り返ると、彼が立っていた。

 私の誰よりも大切な幼なじみが。

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