表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
清洲同盟編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/48

第47話 宴会~ミスター・海老すくい

 夜になった。

 宴の時間である。


 俺は松平家一行の供応役を仰せつかっている。

 供応役といっても、俺の仕事は楽だった。


 何せ殿は織田信長である。

 即断即決で仕切り好き。


 あーしたい、こーしたい、これを見せよう、あれを見せようと殿の希望を整理して、俺からも意見を出し段取りを組む。

 藤吉郞が手伝ってくれたので、各所への連絡や根回しもバッチリ。


 唯一大変だったのは、食事の支度である。


 松平家一行が清洲城に宿泊する夜に出すメニューが難問だ。

 殿は食事には無頓着で『旨い物を出せ!』しか言わない。


 同盟交渉で訪問した使節団とのディナー。

 フォーマルな席である。


 メニューをどうするか本当に悩ましかった。


 戦国時代の食生活は、俺が生活していた現代日本とは違う。

 四つ足、つまり獣の肉は食べないので、ステーキのような肉料理はNG。


 そしてコース料理もない。

 まだ懐石料理も会席料理も登場していないのだ。

 千利休、茶の湯、もうちょっと後の時代。

 和食のコースを出すには、時代的にまだちょと早い。


 では、この時代のおもてなし料理は何かというと本膳料理である。

 本膳料理はお膳の上に料理をのせて出す形式で、膳が多いほど豪華になる。


 お膳は全て並べて出す。

 コース料理のように順番に出さないのだ。


 俺は丹羽長秀殿に相談して、五の膳つまりお膳を五つ用意した。

 本膳料理では五の膳がマックスで、もっとも豪華。

 松平家に対して最高のおもてなしですよと膳の数で示すのだ。


 メニューはオーソドックス。

 禁忌があるので、獣肉は出さない。


 そんな『シバリ』のある中で、俺は現代料理をプラスしてみた。

 俺はタイマーおじさんだったのだ。

 厨房補助は何度もやった。

 料理は一通り作れる。


 清洲城の料理人とも打ち合わせ、お客様が満足すること間違いなしの料理を用意したのだ!



 清洲城の広間には、既に席が用意されていた。

 一つの席にお膳が四つ。

 御飯物、汁物、香の物、煮物、焼き物を盛り付けた器がお膳の上に並ぶ。


 殿と松平元康殿が上座に座り、織田家の重臣と松平家一行が向かい合って座る。

 席についた瞬間、殿が眉をひそめた。


「爽太!」


「ははっ!」


 俺は殿の前に膝行する。

 殿の隣に座る松平元康殿は無言である。


 殿は不機嫌そうに俺に尋ねた。


「膳が足りぬようだが?」


「五の膳は、後ほどお持ち致します。趣向を凝らした膳ゆえ、殿にも松平様にもお喜びいただけるかと」


「ほう!」


 好奇心を刺激されたのだろう。

 殿の機嫌が直った


 俺は一礼して自分の席にスッと戻る。


「よう来てくれた。歓迎する!」


 殿のシンプルは挨拶で宴が始まった。

 侍女が席を回って酒をすすめる。

 酒はもちろん清酒である。


「おお! この清酒を飲みに来たのだ!」


「うむ! 三河ではお目にかかれぬ酒だからな!」


 松平家一行の中から喜びの声が上がる。

 武闘派の本多忠勝殿とミスター・海老すくい酒井忠次殿だ。

 酒井忠次殿の『海老すくい』が出るか否かが、今夜のベンチマークとなるだろう。


 食事に箸がつきお酒に口がついたところで、俺は廊下に控える侍女たちに合図を出し、広間に五の膳を運ばせた。

 お膳を持った侍女たちが次々に広間に入り、順番に五の膳を客の前に置く。


 五の膳を見て、広間がザワつく。


「むっ! これは何だ!?」


「見たことのない料理だぞ!?」


「何やら香ばしい匂いが……」


 これまでに出した料理は、御飯物、汁物、香の物、煮物、焼き物である。

 おわかりであろうか?

 現代人なら物足りなさを感じるはずである。


 そう、足りない!

 揚げ物が足りない!


 五の膳は飲み場の王道!

 オフコース揚げ物!

 この時代にもマッチする天ぷらである!


 俺は広間の面々に声高らかに語りかけた。


「皆様方! 五の膳は、天ぷら御膳でございます!」


「「「「「天ぷら御膳!?」」」」」


「天ぷらという料理は、食材に小麦をまぶして油で揚げる料理です。ごま油を使うことで香ばしく仕上がっております。どうぞ御賞味下さい!」


 みな初めて見る料理に驚いている。

 松平元康殿は、両手を膝に置き笑顔で首を傾げている。

 殿でさえ口をOの字にして、驚きのあまり動けないでいる。


 天ぷら御膳には、山菜の天ぷら、季節の野菜の天ぷら、松茸の天ぷら、シイタケの天ぷらが載っている。


 俺は天ぷらに塩を振り箸を持った。


「では! それがし一番槍を仕る!」


 季節の野菜の天ぷらを箸で挟み口へ運ぶ。


 サクッ!


 衣を噛むと軽やかな音が広間に響いた。


「「「「「おお~!」」」」」


 広間にどよめきが広がる。

 次いで静寂。


 サクッ!


 サクッ! サクッ!


 サクッ! サクッ! サクッ!


 俺が天ぷらを食す音が響く。


「ふうう。大変美味しゅうございます。山菜の天ぷら、季節の野菜の天ぷら、松茸の天ぷら、シイタケの天ぷらをご用意致しました。続けて魚介の天ぷらが参りますので、お早めにお召し上がり下さい」


「おお! もうたまらん! 二番槍! いただいた!」


 本多忠勝殿が一吠えすると、山菜の天ぷらにかぶりついた。


「ああ~!」


 一口で恍惚。

 武闘派もイチコロである。


 本多忠勝殿が箸をつけると、我も我もと天ぷらを食べだした。


「おお! これは旨いの!」


「いや! こんな旨い物は駿府でも食べたことがない!」


 殿も松平元康殿も喜んでいる。


「失礼いたしまーす!」


 侍女たちが新たな天ぷらを持って入って来た。

 俺は天ぷらを紹介する。


「続きまして、海老の天ぷら! 穴子の天ぷら! イカの天ぷらでございます!」


「おお! 海老だ!」


 ミスター・海老すくい酒井忠次殿が大喜びでエビ天にかぶりつく。

 穴子の天ぷらも旨い。

 冬は脂がのっている。


 広間は賑やかな笑い声に包まれ、酒も進んでいる。

 天ぷらは大好評!

 この場にいるのは、体を動かす武士ばかり。

 揚げ物は相性が良いのだろう。

 さあ! ハイカロリーを喰らい尽くせ!


 そして第三弾! 最後の天ぷらが届いた!


「失礼いたしまーす!」


「最後でございます! ハマグリの天ぷら! 太刀魚の天ぷら! 鯛の天ぷらでございます!」


 豪華な食材が続く。

 松平家の面々も喜んで食べている。


 特に松平元康殿は気に入ってくれたようで、じっくり味わっている。


「竹千代! どうじゃ?」


「大変美味しゅうございます。特にこの鯛の天ぷらが気に入りました!」


 おお! 史実でも徳川家康が好きだった鯛の天ぷらを入れて良かった!


 殿が所望されたので、余った食材でさらに天ぷらが出された。

 みんなが清酒を楽しみ、料理を楽しみ、話が盛り上がったところで酒井忠次殿が立ち上がった。


「今宵は大変旨い物をご馳走になった! お礼に海老すくいを披露いたそう!」


 酒井忠次殿が立ち上がると、珍妙なドジョウすくいのような動きで踊り出した。

 周りは手を叩き拍子を取ってゲラゲラ笑う。


 殿も松平元康殿も、腹を抱えて笑っている。


 ああ! 良い夜だ


 俺は温かい雰囲気の宴席を楽しみ、宴席の成功に喜びを噛みしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■お知らせ■

m3xp8tkadjxaklfuf50kcny8up9_qa2_dw_jq_94mv.jpg

私の作品【蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服】がコミカライズされました!
マンガ一巻発売中です!
全国の書店、Amazon、電子書籍サイトにて、ぜひお買い求め下さい!

蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服1(Amazon)


■クリックで応援!■

★★★小説家になろう 勝手にランキング★★★

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ