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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
清洲同盟編

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第46話 援軍の規模~松平家の視察

 鉄砲隊の見学を終えた後、殿は松平家一行を書院に案内した。

 書院は広間よりも小ぶりな部屋で、少数の来客と面談をする場所だ。


 織田家と松平家が書院で向かい合って座る。

 松平家は当主の松平元康殿を始めとした五人。

 織田家は、殿、池田恒興殿、丹羽長秀殿、俺、又左、藤吉郞の六人だ。


 せっかちな殿が前置きもなく切り出した。


「さて、夕餉まで時間があるゆえ、吉田城攻めについて話しておきたい。織田家は兵を千人出す。兵糧も付けるので食い扶持は気にせずともよい」


「千人も!」


 松平元康殿が目を大きく開く。


 桶狭間の戦の織田軍は二千である。

 千人の援軍は大軍で、織田家が松平家支援に力を入れていること、同盟相手の松平家を重視している証拠だ。


「主将は五郎左、副将に恒興、そして浅見隊をつける。浅見隊は爽太が率い又左が与力。藤吉郞は織田軍全体の補佐だ」


 殿は俺たち一人一人を手に持った扇子で指した。

 俺たちは松平家の面々に軽く会釈をする。


 同盟が成立した場合の援軍の紹介が終ると、松平元康殿が殿に問いかけた。


「吉法師殿。よろしいのですか? 千人の援軍に浅見隊まで……。浅見隊といえば、今川義元を討ち取った織田家の精鋭。美濃攻めに使いたいのでは?」


「案ずるな。美濃は柴田と佐久間がやりたがっておる」


 俺への対抗意識なのか分からないが、柴田勝家殿と佐久間信盛殿が美濃攻めに志願した。

 ちょっと前までは、今川家を攻めるべしと主張していたのに……。

 多分、暴れられるところなら、どこでも良いのだろう。


 殿が吉田城攻めについて続ける。


「ただし時期は、この冬だ」


 殿の言葉に松平元康殿が眉を寄せる。


「急すぎませんか? 準備が十分に整わぬやも……」


「うむ。ワシも急だと思う。だが、ウチの太公望がな」


「浅見殿が?」


 殿がニヤッと笑って俺に視線を飛ばした。


 俺は一礼して説明を始めた。


「今川家は当主の今川義元を失い混乱しております。すぐに攻めれば吉田城に援軍は送れないでしょう」


 俺の言葉に松平元康殿が渋い顔をする。


「それは分かるが……。こちらも軍を十全に整えられん」


「それは敵も同じです。条件が同じなら織田家の援軍が得られる松平家が有利になります」


「うむ……」


 戦国時代の兵士は領地の農民だ。

 だから春や秋は農繁期で兵の集まりが悪い。戦はやらないのだ。

 この冬の戦を逃すと、次は来年の夏か冬になり、今川家に立て直しの時間を与えることになる。


 松平元康殿もわかっているのだろう。

 俺の言葉を全面的に否定はしなかった。


 そこで俺は策を提案する。


「兵を集めるご提案ですが、軍役ではなく、兵に銭を支払ってはいかがでしょう?」


「ん? それは?」


 松平元康殿が興味を持った表情で顔を上げた。


 軍役は領民に課せられる税の一種だ。

 税なので給料は出なかったり、給料が出ても少なかったりする。


「松平家は先般の今川義元の上洛戦で、三河の民に軍役を課したのでは? 農閑期といえども軍役が続くのは、民にとって辛い……。しかし、銭が出るとなれば、喜んで参加する民が増えましょう」


「そうですな」


 松平元康殿が酒井忠次殿に視線を送った。

 酒井忠次殿は深くうなずく。

 俺の提案は的を射る提案だったようだ。


「竹千代。銭は織田家が出す。安心せい」


「吉法師殿……」


 殿も腹をくくっている。

 織田松平同盟成立のためには、銭を吐き出すことに躊躇しない。


 松平元康殿の表情を見ると、織田松平同盟に大きく気持ちが傾いているようだった。


 清洲城にあふれかえる兵士希望の男たち。

 鉄砲隊。

 そして吉田城攻めの具体的な打ち合わせ。


 同盟成立へ俺は手応えを感じていた。

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