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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
清洲同盟編

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第45話 鉄砲~松平家の視察

 ――永禄三年十二月初旬。


 清洲城に三河の松平家が密かに訪れた。

 織田家との同盟を検討するため、尾張の国力を視察しに来たのだ。


 松平家の訪問団はわずか五人。

 松平家当主の松平元康殿、酒井忠次殿、本多忠勝殿、服部半蔵殿、小姓の小平太殿だ。


 守りとして三河にベテランを残し、若手中心の編成で来たなというのが俺の感想だ。


 酒井忠次殿が当主松平元康殿の相談役で、本多忠勝殿が護衛だろう。


 注目なのは服部半蔵殿だ。

 伊賀忍者の元締めであろう。

 情報収集と護衛の役回り。


 また、小姓の小平太殿は姓が榊原なので、後の榊原康政ではないかとにらんでいる。

 榊原康政は徳川四天王の一人で、戦国ゲームだと各種パラメーターは八十を超えるバランス型の良将だ。


 知らない人が見れば軽量級の布陣だが、歴史を知っている俺から見ると超重量級の布陣である。


 松平家一行は、お忍び訪問なので清洲城に一泊するだけだ。

 さっと見て、さっと帰るのだ。



 松平家一行が清洲城に到着したのは、晴れた日の昼過ぎだった。

 殿は清洲城外まで、松平元康殿を迎えに出た。


「竹千代!」


「吉法師殿!」


 松平元康殿と対面すると、殿は無邪気な笑顔で松平元康殿呼びかけた。

 松平元康殿も笑顔で応えた。


 二人とも幼名で呼び合う。

 パフォーマンスの側面もあるだろうが、二人の雰囲気で心から再会を喜び合っているのが伝わってくる。


 俺は微笑ましく二人を見つめた。


 戦国時代、下剋上。

 戦国大名は、いつ誰に自分の地位を奪われるかわからない。

 気心のしれた家臣はいても、友と呼べる存在はいない。


 だが、織田信長と徳川家康は、幼い頃共に過ごした日々がある。

 今二人は戦国大名という不安定な立場を離れて、幼き日を共にした友として接しているのではないか。

 そんな風に俺は思ったのだ。


「なんじゃ! デカくなったのう! 昔はこんな小さかったぞ!」


「ははは。吉法師殿は貫禄が増しましたな。さすがの威風です!」


「おう! 尾張は統一したし、今川義元を討ったからのう! 我はこれより美濃を呑む! 竹千代! 力を貸せ!」


 いきなりの火の玉ストレート。

 殿は交渉も駆け引きもなく、スパンと『同盟を組もう』と持ちかけた。


 しかし、松平元康殿もさすが後の徳川家康である。

 ニコニコと笑顔のままで、きわどいボールを軽くさばいた。


「松平家を高く買ってもらえて、とても嬉しいです。なれど、まずは清洲を見せていただきたく」


「ふっ……そうよの。歓迎の準備は出来ておる! まずは城じゃ!」


 城門をくぐり清洲城に入ると、喧騒が耳に入る。

 百や二百ではきかない大勢の男たちが、清洲城の広場に集まっていた。


 松平元康殿は、歩きながら驚き目を見張る。


「これは……?」


 殿が歩きながら得意げに講釈した。


「竹千代に送る援軍よ! 兵を徴募したのだ。職にあぶれた者、農家の次男や三男、他国の浪人者もおる」


「何と!? 既に援軍の準備を!?」


「おう。爽太に任せたら、毎日沢山の男がやって来おる。訓練もしておるから安心せよ」


 俺はアプリ『タイマー』で募集をかけたのだ。

 今川義元を討ち取ったことで、織田家と浅見隊の評価はうなぎ登り。

 どんどん入隊希望者がやって来る。

 俺は生き残った浅見隊の八人を小頭にして、新人の訓練を毎日させている。


 殿が言っているそばから、訓練中の兵士が軍曹ソングを歌いながら城外から走ってきた。


「俺たちゃ♪ 織田家の♪ 足軽だ~♪」

「俺たちゃ♪ 織田家の♪ 足軽だ~♪」


「織田家の♪ 足軽♪ 最強~♪」

「織田家の♪ 足軽♪ 最強~♪」


「先頭♪ 切るのは♪ 浅見隊♪」

「先頭♪ 切るのは♪ 浅見隊♪」


「大将♪ 首を♪ いただくぜ♪」

「大将♪ 首を♪ いただくぜ♪」


 松平家一行は、珍しそうに軍曹ソングを歌う兵士の一団を眺めている。


「吉法師殿。あの歌は?」


「ああして共に歌うことで、兵どもの動きを揃えるのだ。さらに仲間であると思うようになり、自分が強いと思うようになる」


「なるほど。体と心の鍛錬というわけですか……」


「うむ。爽太たちが精強な兵に仕上げておる。吉田城を落とし人質奪還は間違いなしじゃ」


「それは心強い」


 殿は兵士たちの訓練の様子を一通り見せた。

 続いて城内の射場に松平家一行を案内する。


 射場では織田家のとっておき――鉄砲を見せるのだ。


 足軽の担いだ鉄砲を見て、松平家一行は首を傾げた。

 殿は松平家一行の様子を見てニヤッと笑う。


「恒興!」


 殿が池田恒興殿に命じる。

 池田恒興殿は一礼すると、五人の足軽に命令を下した。


「構え!」


 足軽たちが地面に膝をつき鉄砲を構える。

 火縄には既に火がついている。

 いつでも撃てる状態だ。


 松平家の一行は、何が起るのかと固唾をのんで見守る。


「放て!」


 池田恒興殿が手にした采配を下ろしながら発射を命じた。

 火薬の燃える匂いと共に『ドン!』と大きな音が射場に響いた。


「なっ!? 何事!?」


「殿! 俺の後ろへ!」


「お下がり下さい!」


 松平家の一行は大慌てだ。


 殿はしてやったりと、小僧がイタズラを成功させたように笑った。


「ははははは! 驚いたであろう? これはのう……鉄砲だ!」


「鉄砲!? これがですか!?」


 松平元康殿は、鉄砲自体は知っていたようだが、見るのは初めてなのだろう。

 驚いて鉄砲を凝視している。


 殿は得意満面で話を続けた。


「凄い音であろう? 鉄砲を放つと馬が驚いて竿立つのよ」


「騎馬はたまりませんな……」


「当たれば甲冑も貫く。一発でお陀仏だな」


 殿の説明を松平家一行は真剣に聞いている。

 特に本多忠勝殿は、目を見開き恐ろしい形相だ。


「素晴らしい武器ですな!」


「うむ。だが、鉄砲には欠点もある。雨の日は使えぬし、矢に比べると、的に当てるのが難しい。それに高い! とにかく銭がかかるのよ」


「いかほど?」


「堺と国友から買ったが、一丁銀二貫よ」


「「「「「はぁぁああああ!」」」」」


 松平家一行が目をむいた。


 銀二貫は、ざっくり二百万から三百万だ。

 目の前に鉄砲が五丁ある。

 一千万から一千五百万くらいだ。


 独立したばかりで懐事情が厳しい松平家では、卒倒するほどの値段だ。


「これでも安くなったんだぞ。最初は一丁二千両だ」


「「「「「なっ!?」」」」」


 松平家一行が目を白黒させる。


 鉄砲が国産化したことで、ポルトガル人から買った価格よりも随分安くなった。

 それでも、まだまだ鉄砲は高値の花だ。


「織田家に鉄砲は十丁ある。竹千代が吉田城を攻め取る時は、十丁全て出そう」


 殿の言葉に松平元康殿の喉がゴクリと鳴った。

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