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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
清洲同盟編

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第43話 本多忠勝登場!

 松平家家臣団の中から大柄な若武者が立ち上がった。


「わかったぞ! 織田家は吉田城を寄越せというのだろう!」


 本多忠勝殿である。

 この前一緒に清酒を飲んだが、非情に酒が好きで強い。

 そして……、困ったお人である。


 俺は本多忠勝殿の誤解を解くべく、落ち着いた口調で諭した。


「本田殿。そのようなことはありません。吉田城を攻め取れたら松平家の物になさって下さい」


「嘘を吐け! 酒井殿は騙せても、この本多は騙せんぞ!」


 俺は思わず酒井忠次殿と顔を見合わせた。

 酒井忠次殿が迷惑そうに眉根を寄せる。


「いや、別に騙されてなどおらんぞ……」


「太公望敗れたり!」


 本多忠勝殿は、ビシッ! と俺を指さす。

 得意満面である。


 迷惑だなあと俺は頭をかく。

 三河は要らない。

 くれると言っても、俺が断る。

 殿には絶対に三河を受け取らせない。


 なぜならこの先三河で一向宗が蜂起し、大混乱に陥るのだ。

 吉田城など絶対に要らない!


 俺はスッと目を細める。


「本多殿……。先日、酒を酌み交わした時に思ったのですが、本多殿は思い込みが強すぎるでのは」


「えっ!? そうかな!?」


 そうだよ!

 この前飲んだ時もしっちゃかめっちゃかになっただろうが!


 俺は本多殿に黙っていて欲しいので、強い口調で迫った。


「そうですよ! いいですか? 織田家は! 吉田城攻めを支援します! 支援です! 支援ですからね!」


「おっ……おう……」


「主功は松平家! 本多様が主功です! 我ら織田家は補助です! 補助!」


「あっ! そうか! 俺が突撃するのか?」


「そう!」


「わかった。安心した」


 何を安心したんだよ!

 俺はため息をつきたかったが自重した。

 自重出来た自分を褒めてあげたい。


 場がシラッとした。

 まったく! 本多忠勝! 戦場以外ではポンコツだな!


 酒井忠次殿が空気を変えるべく発言した。


「ゴホン! あー、浅見殿。銭の支援。ご正室様と竹千代様の安堵。兵の支援。どれも当家にとってはありがたい条件です。それで……織田家の利は那辺にありや?」


「天下の下ごしらえが整います」


「はっ!?」


「なにっ!?」


 酒井忠次殿だけでなく、松平元康殿も声を上げた。

 俺は丁寧に説明する。


「松平様、酒井殿。我が殿は天下静謐を目指しております。そのためには、松平家に東海を抑えて欲しいのです。我ら織田家は美濃を取り、京を目指します!」


「上洛されると言うか……」


 スケールの大きい話に酒井忠次殿が目を見張る。


「はい。そのための同盟です。ですので松平家には強くなっていただきたい。そしてお互い安心して背中を預け合う関係にしたいのです」


 俺は自分の知っている歴史に思いを馳せる。


 歴史では織田家と松平家の同盟は、清洲同盟として成立する。

 しかし、松平家は従属的な立場だった。


 一向一揆で混乱し、徳川家康の正室築山殿と嫡男徳川信康は今川家との内通を疑われ、織田信長から詰問される。


 徳川信康は切腹。

 正室築山殿は処分される。


 強大な織田家ににらまれたことで、徳川家康は妻と息子を殺さざるを得なかった。


 これで織田信長を恨むなというのは無理だろう。

 だから本能寺の変は、徳川家康黒幕説もあるのだ。


 まあ、テレビドラマの徳川家康を見ていると、本能寺の変の後は必死で伊賀越えしているから、とても黒幕とは思えないが……。

 あれはあくまでドラマだからな。


 黒幕として明智光秀をけしかけていたら、悪いタイミングで明智光秀が蜂起してしまったという可能性だってある。


 本能寺の変が起きる可能性を減らす。

 織田家松平家の同盟を健全な同盟にする。


 そのために、俺は三つの条件を提示した。

 今なら……、織田家の力が尾張一国の間なら、この条件を織田信長はのむ。

 美濃を攻め取るには、後背の安全が必須だ。

 松平家に多少譲っても、美濃がとれればお釣りが来る。


 広間がザワザワして、アチコチで議論が始まっている。

 織田の申し出を受けるべきか、受けざるべきか。


 俺はポンと膝を叩いた。


「さて! そろそろ! 我らは帰ります!」


「「「「「えっ!?」」」」」


 広間の面々が俺を見る。

 俺はニコリと笑う。


「我ら織田家の本気はお分かりいただけたと思います。もし、銭の支援などご不安でしたら、どなたか清洲に寄越して下さい。清洲をご案内いたします。織田家の力を肌で感じて下さい」


「……」


 松平元康殿は、再び目をつぶった。


 俺は気にせずに最後の言葉を述べた。


「最後に織田家の太公望として、松平様に一言申し上げます。今川家にも交渉してみて下さい。織田家と今川家……どちらと組むのが良いか天秤にかけるのです」


 酒井忠次殿が腰を浮かせた。


「なっ!? 正気か!? 我らが今川と組んだらどうするのだ!?」


 俺は酒井殿を真っ直ぐに見て言い切る。


「断言しますが、今川家は織田家ほどの好条件を出しませんよ。それでも今川家と松平家の関係を仕切り直すには、今しかありません。聞くだけ聞いてみればよろしい。絶対に織田家と組んだ方が良いです」


 酒井忠次殿は、ぐぐぐっと拳を握り顔をゆがめ、やがて深く息を吐いた。


「ふう……、わかった。清洲へ誰かやろう。織田家との同盟は検討いたそう。殿! よろしいですね?」


「うむ……」


 俺は両手を床に突き頭を下げた。


「織田家とともに天下を! ではご免!」

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