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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
清洲同盟編

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第39話 ブラックで香ばしい松平家

 俺たちは宿舎にする寺で話し合いを持った。

 寺にある一室、俺、丹羽長秀にわ ながひで殿、藤吉郎、又左の四人が集まった。


「やれやれ、何やらピリッとしない殿様じゃな」


 開口一番、藤吉郞が厳しめの言葉を発した。

 俺は『どうぞ』と手をかざして、藤吉郞に続きを促す。


「もっとパパッと決めれば良いのじゃ! 我らの殿のようにのう!」


「確かに殿とは、かなり気質が違うな」


 藤吉郎の言う通り、松平元康殿は即断即決気質の殿とは大分違う。

 俺が藤吉郞の言葉に同意すると、藤吉郞は身を乗り出し床を手で叩いた。


「もう、尾張おわりに帰ろうぞ! 三河みかわは放っておいたら良いんじゃ! 止めじゃ! 止め!」


 打てば響くタイプの藤吉郞は、殿にタイプが近い。

 藤吉郞と松平元康殿は肌が合わないのだろう。


 歴史で考えると……。


 殿は、織田信長。

 藤吉郞は、後の豊臣秀吉。

 松平元康殿は、後の徳川家康。


 豊臣秀吉と徳川家康は、あまり仲が良くなかったよな……。

 藤吉郞の意見は、割り引いて聞いておこう。


 俺は丹羽長秀殿に意見を求めた。


「丹羽殿はどのようにお感じになられましたか?」


「そうですなあ……。松平のお殿様はご苦労が多かろうと……。まだ、若いのに大変でしょうな」


「幼い頃から人質生活ですから気の毒なことです。しかし、やっと独立がかなった」


「とは言え、難しい舵取りを迫られますな。我ら織田につくか、今川につくか。私が言うのも何ですが、判断が難しいでしょう」


「まことに」


「松平のお殿様は迷っておられるのでは? それで生返事が多かったのではないかと思いましたぞ」


「なるほど」


 丹羽長秀殿は冷静な意見だ。


 今川家は武田家・北条家と三国同盟を結んでいる。

 支配領域も広く富んでいる。

 しかし、桶狭間の戦で当主の今川義元を討ち取られ、有力武将が何人も死んだ。

 人的な力の低下、マンパワー不足が起きるだろう。

 さらに跡を継ぐ今川氏真(うじざね)の実力は不明。

 東海一の弓取りと呼ばれた父親ほどの求心力は期待できないだろう。


 一方の織田家は桶狭間の戦で勝利して勢いがある。

 商業港の熱田を抱え領内は潤っている。

 しかし、支配領域は尾張一国だ。


 松平家当主の松平元康殿としては、どちらにつくのか悩ましいところだろう。


 俺は又左にも面談の印象を聞いてみることにした。


「又左は何かあったか?」


「俺は護衛だぜ」


「ああ、わかってる。だが、何か気が付いたことがあったら教えてくれよ」


 又左はチラリと丹羽殿を見た。

 この四人の中で一番ランクの高い丹羽殿の前で差し出口にならないかと気にしたようだ。


 丹羽殿は、穏やかな表情で又左にうなずいた。


「前田殿。遠慮なさらず。何か気が付いたことがあったら教えて下され」


「あー、まあ、それなら……。松平の殿様が何を考えているかはわからなかったが、家臣連中は顔に出てたぜ」


 又左は、よく見ている。

 さすが後の加賀百万石、大老になる前田利家だ。

 俺は又左に続きを促した。


「ほう……。家臣連中の反応はどうだった?」


「みんな迷ってたな。結構、真剣に考えてた」


「我ら織田家に賛同してくれるかな?」


「いや……、スパッと決められる感じじゃなかった」


「ふむ……」


 松平家の家臣は真剣に考えている。

 つまり家臣たちに『同盟を受け入れる』気持ちはあるということだろう。


 三人の話が終り、俺に視線が集まった。

 この交渉団の責任者は俺なのだ。

 俺が決めなくてはならない。


 俺は指示を出すべく、三人に思うところを話した。


「このまま漫然と三河に滞在していても交渉が上手く行くとは限らない。なので、攻めに出たい」


 三人を見回すと、ウンウンとうなずいている。


「それがしの読みでは、松平家は銭がないと思う」


 丹羽殿がポンと手を打つ。


「なるほど。今川から独立したのは良いが、年貢はこれからだ」


「ええ。桶狭間の戦から後は、手持ちの銭や食料でやりくりしているはずです。懐事情は相当厳しいと思います」


「あり得る話ですな」


「今年の年貢が入っても、独立となれば何かと物入りでしょう」


「うむうむ、そうですな」


 松平家に銭がないのは、ほぼ確定だと思っている。

 尾張を出発する前に、スマホアプリ『タイマー』で松平家の人材募集記事をチェックしたのだ。

 すると『お給料はしばらく支払えませんが、お金が入り次第支払います』という非常に香ばしいブラックな文章が掲載されていたのだ。


 兵は必要だが銭はない。

 ひょっとしたら、どこかを攻め取って銭と食料を手に入れるつもりかもしれない。


 経済支援で松平家を引き込めるのではないかと、俺は仮説を立てているのだ。


「仮に松平家に銭がないとする。織田家が銭を支援すると申し出れば、織田松平同盟にグッと心が傾くんじゃないか? そこでまず情報を集めよう。俺と丹羽殿は重臣を中心に面談をする。藤吉郞は岡崎城下の商人や市井の者から話を聞いてくれ。又左は腕自慢の者がいれば稽古がてら話をして欲しい。どうだ?」


「良いんでねーか」


「結構結構」


「やるやる」


 俺の提案に三人とも同意してくれた。

 方針は決まった。


「よし! 一休みしたら早速動こう!」


「「「おう!」」」

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