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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
桶狭間の戦編

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第24話 清洲城内の混乱

 俺は支度のために殿の前を下がり、早足で清洲城の廊下を歩く。

 前方から女性の一団。

 殿のご正室であるお濃の方だ。


 お濃様を先頭に侍女が付き従う。

 侍女はお櫃を持っているので、殿に出陣前の湯漬けを振る舞うのだろう。


 お濃様は凜とした表情でツツツツと廊下を早足でこちらへ来る。

 俺は廊下の端により、お濃様に頭を下げた。


「浅見。武運を祈る」


「恐れ入りまする」


 すれ違いざまお濃様は落ち着いた声で俺を励ましてくれた。

 出陣で清洲城内は大騒ぎになっているにも関わらず、さすがはマムシ斎藤道三の娘だ。

 腹が据わっている。


 清洲城の中を歩いていると、取り乱している者が少なくない。


「えっ!? 何だ!?」


「出陣!?」


「籠城じゃなかったのか!?」


 あちこちで声が聞こえる。

 早く支度しないと殿に置いて行かれてしまうぞ。


 俺は時々大声で呼びかけた。


「打って出るぞ! 各々おのおのがた! ご支度召されい!」


 俺が呼びかけると、取り乱していた者はハッとして動き出す。

 戦える者が一人でも必要だ。

 さっさと鎧を身につけ槍を持ってくれ!


 廊下を急いでいると後ろから声が掛かった。


「浅見!」


 振り向くと殿の妹であるお市様がいらっしゃった。

 俺は立ったまま頭を下げた。


「お市様。急ぎ故、ご無礼を」


「良いのです。打って出るのですか?」


「はっ! 出陣いたします。ご安心下さい。必ず今川軍を撃退いたします」


 俺はお市様を安心させようと、笑顔でドンと自分の胸を叩いた。

 お市様はクスリと笑い、可憐な笑顔を見せてくれた。


「頼りにしています。浅見! 武運を!」


かたじけのうございます」


 姫様に武運を祈られるとは幸先が良い。

 俺は機嫌を良くして、浅見隊が休んでいる足軽長屋に飛び込んだ。


「出陣だ! 支度をせい!」


「御大将! 合点!」


「兄貴! 承知でさあ!」


 小頭の弥平と甚八がすぐに動き出す。


 俺の声を聞いて富さんが飛び込んできた。


「佐助! 浅見様の鎧を!」


「あいよ!」


 富さんの指示で佐助が俺の鎧を抱えてきた。

 富さんと佐助に手伝ってもらい、俺は鎧を身につけていく。


「なあ、俺もついて行くからな!」


「えっ!?」


 俺は思わず佐助を見る。


 無茶だ……。

 佐助は、まだ子供で体も小さい。

 殺し合いの場に連れて行くべきじゃない。


「ダメだ!」


「何でだよ! 今川の連中が攻めて来てるんだろ? 一人でも手は多い方が良いじゃないか!」


「子供はダメだ!」


「槍も刀も振れる! ちゃんと習ったんだ! それに浅見隊が全員行くのに、俺だけ置いてくなよ! 俺も一緒に戦う! 仲間はずれにするなよ!」


 佐助に鎧を着けてもらえながら、俺は心の中で頭を抱えた。

 佐助が勇んでいる。

 断固とした口調で、聞き分けそうにない。


 富さんが湯漬けを運んできた。


「さあ、湯漬けを召し上がって下さい」


「ありがとう。富さん」


「佐助はお連れ下さいな。この子は武士になりたいそうですよ。木下様のように出世するんだと言ってます」


 木下藤吉郎――秀吉の影響だ。

 藤吉郎は農民の子供だが、今は台所奉行だ。

 佐助から見ればまばゆい出世人なのだろう。


「しかし、富さん……」


「男の子は一度言い出したら聞きゃしませんよ」


 そういうものか?

 いや、俺も心当たりがある。

 子供の頃は言い出したら聞かないことがあった。

 仲間はずれにするなか……。


「わかった。佐助は後ろからついてこい。危ないから前に出るなよ」


「へへ! そう来なくちゃ!」


 佐助が同行することが決まり、俺は富さんに手伝われ立ったまま湯漬けをかき込んだ。


 藤吉郎が血相を変えて飛び込んできた。


「爽太! 殿がお出になった!」


「もう!? 早い!」


「小姓が五騎しかついちょらん! 急いでくれ!」


「わかった! 浅見隊! 殿を追うぞ! 急げ!」


 疾風迅雷――さすが織田信長だ!


 俺たちは薄明るくなった道を必死で走り、殿を追いかけた。

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