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戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります  作者: 武蔵野純平
桶狭間の戦編

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第11話 戦国の軍曹ソング

 さあ! 兵士が十人揃った!

 全員精強な足軽に育てて、『浅見隊ここにあり!』を織田家中で示し、殿に認められねば。


 採用した日から訓練を開始した。

 ランニング、ストレッチ、筋トレ各種を軽くやったのだが、採用した兵士たちは意外とスタミナがない。


 慣れない動きだから?

 食事が良くないから栄養不足?


 昔の人は長い距離を歩くイメージがある。

 体力がありそうなものだが、どうやら違うらしい。


 これはシゴキ甲斐がありそうだぞ。

 ちょっとだけ俺は鬼軍曹気分になった。



 ――翌早朝。


 足軽長屋で眠りこけている兵士十人を叩き起こす。


「起床! 起きろ! 朝のランニングだ! サボったらメシ抜きだぞ!」


「ん? あっ? 大将!?」


「うううん……まだ、寝たい……」


「ほらほら! 起きろ! 朝飯抜きだぞ!」


 全員眠りこけていたが、俺は容赦なく起し井戸の水で顔を洗わせる。

 眠そうにしているヤツもいるが、俺に不満を述べることはない。


 理由は二つある。


 一つは身分差。

 俺は武士階級で、兵士たちは平民階級。


 もう一つの理由は、俺の体格。

 俺は身長百七十五センチ。

 戦国時代の人たちは背が低く、百六十センチに届かない。

 俺のような大男に命じられて、逆らう者はそうはいない。


 感心なのは、下男として雇った童がちゃんと起きていたことだ。


「佐助! ちゃんと起きていたな! 偉いぞ! 感心だ!」


「へへへ。雇ってもらったからには、仕事するし、訓練もやるぜ!」


 昨日、俺は童に『佐助』という名を授けたのだ。

 名無しの小僧じゃ、呼ぶのに困る。

 名前の由来は、猿飛佐助。

 人を助けられる強い男になれと佐助に諭した。

 自分の名前だ! と、とても喜んでいた。


 佐助はモチベーションが上がっているようで、朝から元気だ。


 全員顔を洗わせ、水を飲ませる。

 バラバラと無秩序にたむろしている十人に俺は命じる。


「よーし! ラニングへ行くぞ! 続け!」


「らん?」


「らんにぐ?」


「何だ?」


「知らねえよ。大将について行けば良いんだろ!」


 全員俺の後をついて走り出した。


 清洲城の門を出て清洲城の周りを走る。

 周りといっても、現代の復原したお城のようにきれいに道が整っているわけではない。


 清洲城を中心に町の中を走り、川沿いを走り、清洲城の門に戻ってくる。

 俺は毎日走っているので気持ち良く汗を流しているが、浅見隊兵士の面々は息も切れ切れだ。


「ふう……ふう……」


「ふう……何で朝から走るんだ?」


「知るか!」


「大将の命令だ!」


 コイツらの走り方は滅茶苦茶なのだ。

 俺は一定のペースで走ろうとする。

 だが、ダーッと勢いよく走る者やノロノロ走っておいて行かれたらダッシュする者などがいて、一定のペースで走らない。

 恐らくランニングという文化がないのだろう。


 ――桶狭間の戦。


 一年後に起る織田今川の決戦に向けて、自分の部隊を作り上げなければ。

 桶狭間まで移動するのにバテて使い物にならないような兵士では困る。


 俺はへばっている浅見隊の連中にカツを入れようとした。

 だが、俺より先に佐助がカツを入れた。


「なんだよ! 大人の癖にだらしないな!」


 子供の佐助が放った挑発的な言葉に、全員がムッとしたのがわかった。


「この野郎!」


「ガキ!」


「ナメたこと言ってるんじゃねえぞ!」


「まだ疲れちゃいねーよ!」


 おっ! 良い感じだ!

 この怒りパワーは、使わせてもらおう。


「よーし! みんな元気あるな! もう一周行くぞ!」


「「「「「うえええ!」」」」」


 悲鳴が上がるが容赦しない。

 俺と佐助が走り出すと、ヨロヨロと後ろから浅見隊十人がついてきた。


 俺は少しゆっくりペースで先頭を走りながら軍曹ソングを歌った。


「俺たちゃ♪ 織田家の♪ 足軽だ~♪」


「「「「「……!?」」」」」


 ちらっと振り向くと、俺が突然歌い出したので全員ビックリしている。

 気にしないで続ける。


「織田家の♪ 足軽♪ 最強~♪」


「「「「「……」」」」」


 俺は走りながら振り向く。


「なあ、俺の後に続いて歌ってくれよ」


「ええ!?」


「歌うんですかい!?」


「はあ!?」


 浅見隊兵士たちは、ピンと来ないようだ。


「うん? 歌いたくないか? それじゃあ、これはどうだ?」


 俺は歌詞を変えて歌い出した。


「母ちゃん♪ 抱いたら♪ 最高~♪」


 ちょっと下世話なフレーズに一瞬間があって、すぐに後ろから笑い声が聞こえた。


「ギャハハハ!」


「大将! 朝からですかい?」


「おったってござる? ハハハ!」


 ヨシ! ウケたぞ!


「そうそう! それで良いんだよ! 楽しく行こう! さあ、続け! 母ちゃん♪ 抱いたら♪ 最高~♪」


「ククク……、しょうがねえ大将だな……。母ちゃん♪ 抱いたら♪ 最高~♪」


「ぶはは! どんな訓練だよ! ほら! 最高~!」


「へへへ! 母ちゃん♪ 抱いたら♪ 最高~♪ とくら!」


 よしよし!

 歌い出した!


 俺は適当に下世話な言葉を交えて、軍曹ソングを歌い続けた。

 最初はバラバラだったが、徐々に全員の節が揃ってきた。

 そして、不思議なことに節が揃うと、足並みも揃ってきた。


 軍曹ソングのリズムに合わせて走るようになってきたのだ。


「俺たちゃ♪ 織田家の♪ 足軽だ~♪」

「俺たちゃ♪ 織田家の♪ 足軽だ~♪」


「織田家の♪ 足軽♪ 最強~♪」

「織田家の♪ 足軽♪ 最強~♪」


「先頭♪ 切るのは♪ 浅見隊♪」

「先頭♪ 切るのは♪ 浅見隊♪」


「大将♪ 首を♪ いただくぜ♪」

「大将♪ 首を♪ いただくぜ♪」


 ザッザ! ザッザ! と一定のリズムで十人が走る。

 映画で見た新兵訓練みたいになった。


(よし! よし! 上手くいった!)


 俺は手応えを感じながら、気分良く走り続けた。

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