ロリババア外伝~泥酔してる間に周囲がダンジョンになったせいで地上に出られない・木枯らし篇~
なろうラジオ大賞参加作品第十一弾。
そこは一つの世界だった。
空はどこまでも澄んでて。
どこか寂しさを感じさせる。
そびえる木々はこの場に葉を落とし。
それらは……俺の最後の記憶の中の時期からして木枯らしというべき冷たい風により舞い踊る。
おかげで俺の胸中を支配する寂しさがひどくなった。
「はぁ。いったいここはどこだ」
いや、場所は分かってる。
この場所――ダンジョンと思われる場所を駆け回るモンスターというべき存在と何度か遭遇したから。
経緯こそ分からんが、どうやら俺はダンジョンの中にいるようだ。
それも、フロアによっては外の世界と見まがう広さと景色が存在する……空間がおかしい所もあるダンジョンだ。よってダンジョンのどの辺りにいるか分からん。
もしやこれが俗にいう異世界転移か。
それも俺が、俺の最後の記憶が正しければ泥酔してどこかで眠った時に起きた異世界転移だ。
ていうかいつの間にか服が変わってる。
今の俺はいったい何の職業の服なんだ。
「ん? 誰かいる?」
「は? んなワケあるか」
その時だった。
今となっては懐かしい日本語が聞こえた。
まさか近くに日本人が!?
「お~い! 君達~!」
俺は声の主達に話しかけた。
寂しかったのもあるが、これ以上ここで自給自足するのは勘b――。
次の瞬間。
俺のそばを斬撃が通過した。
耳がちょっと斬れ……って!
「ちょ!? 何いきなり!?」
まさか相手は敵なのか!?
言語からして同じ日本人なのに!?
「まさか日本政府の犬が俺達の事を嗅ぎつけてるとは」
「とっとと口封じして場所変えよ」
俺の前に、戦士っぽい服を着た日本人の男女二人組が現れた。
それも、見るからにガラが悪そうな男女……まさかこのダンジョンで犯罪まがいの事をするつもりか、さっきの台詞からして!
ていうか日本政府!?
もしやここは異世界のダンジョンじゃない!?
日本にダンジョンが現れたパターン!?
そうじゃなきゃ日本政府なんて言葉が出るワケない!
っていやいや!
ピンチだよどうする!?
俺は考えた。
でも二人から逃げる手段が全然思い浮かばない……そんな時だった。
大地が震えたのは。
そして同時に俺は思い出す。
この階層のボスがどれだけでかいかを。
「まさかボス!?」
「こんな時に!」
男女は慌てて逃げ出す。
俺もすぐ逃げようとして……足元にひびが!?
「うわっ!?」
そしてひびはそのまま地割れになり。
俺はそのまま落ちた……より深部へと。
いったいどの階層まで落ちるやら。
でも悲観はしない。
ここが日本だと分かったから。




