反転の海
鳶が舞う蒼穹の果てを
いくつも雲が進む
遠くの入道は
三々五々に崩れて
犬か
猫か
あるいは四足歩行の生き物に変わり
私の記憶に無い姿へ
似つかわしくない音を吐き出す飛行機が
空色がにじむ空を白線で刻んだ
別の方角には鱗
いや鰯か
風は速く
土と
草の匂いと
思考を置いてきぼりにする
考えるのを止めて
視線を泳がせた
反転の海
無粋な太陽が横切る
海鳥でもないのに
頭上を舞う烏は何を狙っている?
夕焼けが想像力を鈍らせたので
ここは砂浜でも自分の家でもなく
ただの草むらなのだと思い出してしまった
闇夜を泳ぐ羽目になる前に
帰ろう




